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学校へと続いている道の、横断歩道のすぐ目の前で、私はいつも考えている。私はこれからどこに行くんだろうと、じっと差し迫って、ぽっかり空いた頭の隅に放り投げるスペースが、学校に向かう道の途中にある。
広い、広い、大きな意識の断片が、もうずっと近いところまでやって来ているから、私はそれをそっと掬うように、その場にステップする大胆な歩幅になる。小さくて、軽やかな、ひっそりと可愛らしいナイーブな被写体。
どこからともなく、私を連れ去る風の一つが、どんどん風速をあげて、近づいてくれたら。この短い足の付け根にそっと忍び寄る、ナナメ45度の電波塔とアンテナを、騒がしく騒がしく、揺らし続けてくれるのに。
速く、遠い日常の界隈が、その猛スピードで私の影を引っぱねようというのなら、容赦なくその胸ぐらを掴んで押し倒せばいい。靴ひもをほどいて、カカトの底に隙間ができたら、私は立ち止まって、身体の芯に走る筋肉の緊張を、この目で確かめてあげるのに。
そう思っているのに、私の日常へと真っ逆さまに続いている地面や道は、ぐんぐん巨大化していって、前方から私を無理やり明日へ明日へと押し込もうとするから、おかしなことになるんだ。もっと広い歩道を、明日へと続く広い道を作ってもいいじゃないか。もっと、もっと歩きやすい平らな道のりを、世界の地図の中心に、ギュッとテープで貼り付けたっていいじゃないか。
私は横断歩道を渡る前に、こういうことを何度も考えて、カタツムリのように動かない。そんな私を尻目に、さあどうぞ!といったような掛け声で、信号はタイミング良く青に変わる。あっという間に、歩行者の優先順位になる。
ただでさえ、行き先もわからないような気持ちと、その複雑な心境が絡み合って混濁しているときに、どこを歩いて進めっていうのだろうか。車が横断歩道の手前でブレーキして、止まる。ここを、この中心を歩いていけと私に言う。
青、青、青。学校に行く途中、毎朝、信号は青で笑う。立ち止まる。背の高い電信柱の中心から、私を鋭く見下ろすように鑑賞して、なだらかにランプを点し、勢いよく経過する時間そのものの、きれいな縁取りになる。
青になったら、その時は、私はこの横断歩道の向こう側に、行かなければならないのか。ここを、こうして歩いて、渡らなければならないのか。
そう思って、そのたびにクルッと振り返り世界を一周見渡すが、この地上はどこまで行っても青い。青ざめているんだ。それは限りなく澄みきったブルーの低空飛行ではなく、血栓が太い欠陥の中にできる音、そのゴトッという言いようもない違和感が、ざらっと私の脳裏を通過しながらかすめていく。
< 道のりは長く、険しい。虹色のメテオライトが、街角の道を突っ切って、きらきら光る。例えるなら、低い弾道で飛ぶ地上すれすれの鋭い斜面が、駆け足で未来へと続いて、音もなくこの場所へと近づいている。歩けば歩くほど、身体がフワッと宙に跳ね上がる。進めば進むほど、空気がより新鮮になる。その下のアスファルトはまだできたばかりで、新しいーーー。>
そのたくさんの音や場所、蛍光色が、この世界のおだやかな、羅針盤。
そう思われた中学時代の華奢な記憶が、一瞬のうちにほどけてしまいそうになるくらい、学校に向かう途中、いつも恍惚と青い信号の青は、15年の歳月を巻き戻さない。高く高く反射して重なっていき、最後には崩れる音を持ち、私の朝と日常の隅に、魔法をかける。時間が一瞬だけ止まる、ストップウォッチを。私はそれを潔くカウンターする。せり上がる背骨の間と間から、でこぼこに沿った関節を蹴り出すかのように。




