まっしぶ☆ハルカ
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拙作ですが、これからもよろしくお願いします!
本作品では平仮名表記「びっち」は現実世界で使われているような強烈な罵倒の言葉ではなく、単純に性に奔放な様子を指す言葉として使用しております。マイナスイメージの言葉ではありますが、現実世界よりもかなり軽い表現として使用しておりますので、ご理解いただければと思います。
一夜明けて土曜日。
学校が休みということもあって俺は9時すぎに起きた。
母は仕事なのでいないが、夏希はいる。
つまりはいい感じの時間帯ということだ。
「おはよ、夏希」
夏希に怒られてから渋々着用しているルームウェアのままでリビングに行くと、ソファでぐでっとしながらアニメを見ている夏希がいた。
見ているアニメはパワーヒロインが変身して悪者と肉弾戦を開くという女児向けのアニメ『魔法少女まっしぶ☆ハルカ』である。
元の世界に居た頃から夏希がよく見ていたアニメで、貫手とかバックドロップを使って敵を倒す姿が爽快らしい。魔法使えよ。
『ワルイーン! ケンタくんを放しなさい!』
『何を言っているワル。この子は私の作るハーレムに欠かせない男の子ワルよ!』
『待ってて! 今助けるからね!』
『ふっふっふ、既にまっしぶハルカの弱点は研究済ぼほぉ!? まだ口上の途ちゅぶぶぶぶぶ!? 目は! 目潰しは止めてぇえええ?!』
拉致されそうになっている男の子を助けるためにまっしぶ☆ハルカが結構グレーゾーンな攻撃を仕掛けてるんだけど……。っていうか目潰しとか急所攻撃とか関節破壊とか女児向けにしてはエグい攻撃が多いな。
『弱点研究? 昨日の弱点なんて攻略済みよ! 私は毎日、進化するッ!』
いや、プロレスのヒールみたいな攻撃しといてそんな良い台詞吐かれてもなぁ。
と思ったのだが夏希はまっしぶ☆ハルカの台詞が気に入ったらしく、ふんす、と鼻息も荒くテレビに釘付けになっていた。
この分だと俺の存在に気づいていないかもしれない。
『さぁ、ケンタくん! 悪は滅んだわ! このおねーさんの母性の塊まで飛び込んでおいで!』
『うわーん、おねーさん! こわかったよぉ!』
ワルイーンをボッコボコにしたまっしぶ☆ハルカがやたら不自然な胸に男の子を埋めたところでエンディングを迎えた。
いや、まぁ良いんだけど。良いんだけどさ。
このアニメ……需要ある?
そんなことを考えながら夏希を見ていると、夏希はおもむろに己の胸をわしわしと揉み始めた。
「……母性の塊かぁ……私もあんな風になれるのかなぁ」
「いや、あれは流石に不自然だと思うよ?」
「でもバインバインになればおにーちゃんももうちょっと……って!?」
当たり前のように会話したかと思えば、夏希はがばっと顔を上げて信じられないものを見る表情で俺を見た。
「……おにーちゃん、いつからそこにいたの?」
「まっしぶ☆ハルカが目潰しからの関節破壊攻撃のコンボを決めた辺りから?」
「結構前じゃん! なんで声掛けてくれなかったの!?」
「いや、おはようって言ったし」
「ちょっと待って、ハルカがコンボ始めた辺りってことは、私の呟きとかも聞こえてた?」
「ああ、おっぱい揉み始めてバインバインとか呟いてたのは聞いてたよ」
夏希は真っ赤になるとソファの上でカメのように身体を丸めた。
「殺して! いっそ殺してー!」
「……まぁそういう気分の時もあるよね。夏希、朝ごはん食べた?」
「食べてない……おにーちゃん、女の人がおっぱいの話してるのとか、引かないの?」
いえ、むしろごちそうさまです。
あー、でも元の世界に当てはめてみると大概な感じになるのか?
男がアレのサイズについて考察してるとか、そういう感じだよなきっと。
うん、引くわ。っていうか異性に聞かれたら自殺モノの黒歴史になるわ。
「良いから。とりあえずトーストでいい?」
「……うん」
若干、落ち込み気味な夏希をテーブルまで引っ張っていき、ポップアップトースターに食パンを放り込んだ。トースターのレバーを引いて、焼けるのを待つ間にコーヒー用のお湯も用意する。
と、インターフォンが鳴った。
「お客さん?」
「誰だろ」
新聞屋とかじゃなければ良いなぁ、と思いつつモニターを覗けば、そこにはちょっとヤンキーが入ってるような、はすっぱな感じの女の子。
クラスメイトの坂口さんだ。
「――坂口さん?」
『おお、宇野くんじゃん。ちょっと聞きたいことがあって来たんだけど、迷惑だったか?』
モニター越し、バツが悪そうな表情をしている坂口さんを見て、何かあったのかと邪推する。
詳しいことは聞いていないが、この間時津さんとも少し揉めたらしいし、ちょっと心配だ。
この世界の女性は男関係だと結構無茶するし、夏希みたいにイジメに遭うのも可哀想だからね。
「いま行くよ」
「おにーちゃん、誰?」
「クラスメイト」
夏希に朝食を任せて玄関に向かえば、そこにはスキニーのデニムに若干パンキッシュなTシャツを着た坂口さんがいた。
「おはよ」
「おう、おはよ……って宇野くん、パジャマ!?」
「ああ、起きたて」
「ね、寝癖が……とりあえず写メ、写メを!」
慌てて尻ポケットからスマホを取り出そうと坂口さんがわたわたしていると、俺と坂口さんの間に割り込むようにして夏希が飛び出してきた。
夏希は俺を背に、坂口さんを睨むように見据える。
「おはようございます、クラスメイトさん」
「んあ? 何だこのジャリは」
「ジャリじゃありません。暦おにーちゃんの妹の夏希です」
「あたいもクラスメイトじゃなくて、坂口・絵理奈っつー名前があるんだよ、ジャリ」
開口一番、バチバチと火花を散らす二人に、また何か良からぬことが始まる気配がした。
「それで、坂田さんは何でおにーちゃんを盗撮しようとしてるんですか? ワルイーンの影響でも受けましたか?」
「坂口だジャリガキ。別に盗撮なんかじゃねぇよ。許可取るつもりでいたさ」
「どうだか。どうせおにーちゃんが天然びっちなのに託つけて、休みの家に押しかけて来たんでしょ。ワルイーンの常套手段ですね!」
「ばっ、違ぇよ! 月曜の弁当当番があたいだから、何が良いか聞きに来たんだよ! そもそもワルイーンってなんだ!?」
「悪の女王ですよ。そんな用事、電話で済むじゃないですか」
「それは、その……そう、近くを通ったから! ついでだ、ついで!」
「そう、ついでですか。ご苦労さまです。……では一度だけ言いますから絶対に聞き逃さないでくださいね。おにーちゃんが好きなのは主食系ならオムライス・チャーハン・寿司類です。ただし貝類はあんまり好きじゃないのでそれは避けてください。麺類は何でも好きですけど制服汚れるんでトマト系のパスタはやめてください。あと昼は軽めが良いって休みの日はよく言ってるのでオイル系もやめた方がいいと思います。でも軽めが良いとか言っときながらメイン系ならとんかつ・エビフライ・ハンバーグが大好きです。特にハンバーグはチーハンがジャスティスだって前に呟いてました。美味しそうにもぐもぐするので一見の価値がありますよ。写メ撮ったらスマホ砕きに行きますけど。野菜類は何でも食べますけどサラダとか生野菜系はドレッシング濃い目じゃないと苦手そうにします。あと食べられるって本人は息巻いてますけどトマトの皮が硬いのは嫌みたいなので出すなら湯むきしてあるやつか皮が柔らかそうな奴にしてください。一番好きなドレッシングはサウザンアイランドで、青じそとか酸味が強い系はあんまりみたいなので選ばないで下さい」
マシンガンの如く俺の好みを暴露すると、夏希はニヤリと笑って見下すような視線を坂口さんに向けた。
「用は終わりましたよね。私とおにーちゃん、これから一緒に朝ご飯なんです。それじゃ」
一緒に、というところを強調した夏希はぐい、と俺の手を引っ張る。
が、流石に失礼すぎるだろそれ、ということで踏みとどまる。
仮にも高級惣菜を用意してくれる相手だぞ?
「坂口さんごめん。夏希、ちょっと気が立ってるみたいで」
「え? あ、いや、大丈夫! 気にしてねぇよ!」
「パジャマでごめんなんだけど、良かったらコーヒーくらい飲んでく?」
「えぁ?!」
俺の提案に、坂口さんは変な声を出して驚くほど顔を真赤に染めた。
それからパクパクと酸欠の金魚のように口を動かし、
「……勝負下着履いてくるんだった」
もごもごと口の中で何事かを呟いていた。
「え? なにか言った?」
「いや、何でもねぇ。せっかく誘ってもらったんだが、ここで家に入れば妹ちゃんの言うとおり押し込みの痴女と対して変わらなくなっちまうから、今回は遠慮しとく」
「そう? 気にしないんだけどなぁ」
「あたいが気にするんだよ。その代わり、月曜はきちんと弁当用意してくるから、食べてくれると嬉しい」
いや、そりゃ当たり前のことでしょ。
用意させて食べないとかどこの鬼畜なんだよ……多分以前の俺だな。
「分かった。じゃ、月曜日学校でね」
「あ、ああ。ありがとう」
さて、今の態度はちょっと問題だ。このあと夏希とOHANASHIした方が良いかもしれない。
豆知識
まっしぶ☆ハルカ
国民的テレビアニメ。どこにでも居る女子高生、ハルカはある日ひょんなことから筋肉の精霊(♂)を助けて魔法少女まっしぶ☆ハルカに変身する能力を得る。男子を拉致してハーレム作成を目指す悪の女王ワルイーンを懲らしめるために今日もお母さんに教わった技を引っさげてまっしぶ☆ハルカは戦う!
ちなみにまっしぶ☆ハルカのお母さんは刑事さん!
どんな容疑者も一発で素直になれる技(物理)をたくさん持っているぞ!
※この作品の魔法とはコスチュームチェンジのことです。残りは全部肉弾戦です。
これ、夏休み明けのテストに出るからしっぽり覚えておくように。
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