三戸このみの策謀
異世界転移タグを追加しました。ご指摘下さってありがとうございました!
相変わらずPV数がすごいことになっていてガクブルなんですけれど、これからも頑張りますのでよろしくお願いします!
高橋さんへのチョンボに対する補填(?)、アイス屋デートも終えて今日は金曜日。
俺は何時も通りに学校へ行き、皆でご飯を食べて帰宅することになった。ちなみに昼食会は当たり前のように開かれた。
4時間目終了後にすさまじい速度で机の移動とくじ引きが始まってしまったのでなにも言えなかったが、多分俺以外のクラス全員で談合でもしてたんだと思う。そのぐらい洗練された動きだった。
あ、ちなみに今日のお昼ごはんは懐石でした。
でも燃料付きで牛ヒレの岩石焼きとか学校でやるのはいたたまれないからやめようね?
まぁうちの学校私立だし校則とかも公立より緩いらしいけど、そういう問題じゃないよね。
「で、なんでこのみ先生がここにいるんですか?」
俺は帰宅直後、玄関に腰を下ろしたこのみ先生と対峙していた。
母も夏希も座っているが、俺抜きで何してたんだこの合法ロリ。
「なんでってー、家庭訪問ですよー?」
にこやかに答えるこのみ先生の首根っこを掴んで、夏希と母に聞こえないように会話する。
「いや、こないだの天然びっちとかそういう話ですか?」
「いやー、それは流石に暦くんが可哀想なのでやめましたー」
「じゃあ何で?」
「今、ご家族にも説明してるとこなんですー」
このみ先生を解放すると、母と夏希が俺に向き直った。その表情は正反対であり、母はふにゃっと柔らかな笑みを浮かべており、夏希は般若一歩手前の怖い顔をしている。
「こーくん。学校で頑張ってるみたいね」
「はい。クラスの女子にも優しくしてくれて、皆から信頼されてるんですよ」
いや、人並な対応取っただけです。
今までが鬼畜だったから落差が酷いだけで。
「誰にでも愛想よく……びっち……」
夏希が恨めしげな視線を俺に向けるが知りません。あとビッチ扱いしないで。おにーちゃん、泣きそう。
「それで、三戸先生はこーくんに生徒会役員になって欲しいみたいなんだけど……」
母の言葉で俺は家庭訪問の理由を理解した。
基本的に自主自立を重んじるウチの学校であり、それは生徒会活動も同様である。
しかし俺は男だ。
この世界では男を働かせるのは何かと問題があるために、まずは保護者を納得させようとしたのであろう。
「もちろん暦くんが嫌じゃなければですよー。大変な仕事は女子に割り振りますしー、頼みたい仕事は2つだけなんですよねー」
「入るか決めてないのに、もう仕事を決めてあるんですか?」
「やってもらいたい仕事があって勧誘してるんですよ」
このみ先生はニコニコとロリスマイルを振りまきながら指をVサインの形に上げた。
そして、まず人差し指を折り曲げて、
「ひとつ目は、6月の体育祭で総合優勝した組に旗を渡す係ですー」
「……旗を渡すだけですか?」
「そーです。それだけで皆体育祭に真面目に取り組みますからね」
どうやら俺を景品のようにしてやる気を出させたいらしい。ちなみにこの世界の体育祭、男子の種目は存在しない。
来賓席の隣にある男子席(簡易テント・スポットクーラー付き)でお茶しながら頑張る女子を眺めるだけらしい。
まぁ男子も各学年に1~3人しかいないから競技なんて出来ないだろうし無理ないけど。
「ちなみにもうひとつは?」
「中学校を巡ってー、わが校のセールスポイントをアピールすることですよー」
俗にいう、中学校訪問という奴である。
進路指導の一環として中学校側でも受け入れてくれるものらしいが、このみ先生はどうやら俺を餌にして受験生を集めたいようだ。
いや、これはこのみ先生じゃなくて学校の思惑か。
正直、やるのは構わない。
学校内では腫れ物扱いで居心地微妙だし、俺に出来ることがあるなら、やってみるのも面白そうだから。
そして何より、夏希のいる中学校――俺の母校に訪問できるチャンスだからね。
「んー、夏希と母さんはどう思う?」
「私は反対!」
「お母さんはこーくんがやるっていうなら応援するわよ」
あらら。
表情と同じく意見も正反対とは。
「母さんありがとう。ちなみに夏希は何で反対なの?」
「うー……言いたくない」
「言ってくれないと納得出来ないよ」
俺がきちんと夏希の目を見てそう告げると、夏希は先生と母さんの間で視線を彷徨わせた挙句、ぼそりと言葉を放った。
「おにーちゃんが…………から」
「え?」
「おにーちゃんが天然びっちだってバレたら、おにーちゃんを狙う輩が増えるから!」
……夏希。
だから俺は天然びっちじゃないって……。
思わず脱力してしまった俺をどう解釈したのか、このみ先生が慌てて夏希をなだめに掛かる。
「暦くんの妹さん、」
「夏希です!」
「夏希さん、落ち着いて下さい。暦くんが中学校訪問に行く時には、理事会からSPが派遣されますからー」
「でも!」
「入ってくださるなら登下校も車で行いますよー」
「いや、それはちょっと大げさなような……」
「えっ」
「えっ」
「えっ」
俺が車での送迎を否定すると、何故か女性陣3名から驚きの言葉があがった。
「こーくん男の子なんだし送迎くらいしようよ!」
「おにーちゃん無防備すぎ! 天然びっち!」
「暦くん、先生の車が嫌なんですかー!?」
「えっ」
「えっ」
「えっ」
このみ先生の言葉に声を上げたのは、もちろん宇野家の三人組だ。
「何で先生の車!? おにーちゃんをどうしようって言うんですか!?」
「先生、さすがに個人的な送迎は……やっぱり女性と二人きりだと危ないですし」
うん、二人が俺の言いたいこと大体言ってくれたけど、教師が生徒を送迎するのって大体問題あるよね?
しばらく前、元の世界でもニュースになってた気がする。
「いや、普通に先生が送迎したいだけってオチはないですよね?」
「なななななななな何を言ってるんですー!? せんせーはせんせーだからせんせーらしくお迎えをですねー、」
動揺しすぎだろうよ。
まぁ良いや。
「とりあえず生徒会の件は保留で。それから送迎に関してはもっと保留でお願いします」
「…………分かりました」
若干気落ちしたこのみ先生を見送ってから、家族会議となりました。
リビングで三人揃ってテーブルで頭を突き合わせる。
ちなみに俺は冷蔵庫からアイスクリームを取り出して持ってきている。お腹減ったからね。
持ってきたのはバニラアイスの中に板チョコが入った、最中タイプの奴だ。話しながらでもお手軽に食べられるしね。
「あー! おにーちゃんのこと話すのに、何アイス持ってきてるの!?」
「んー、食べたかったから。夏希は要らない?」
「食べるけど!」
「おかーさんもちょっと食べたい」
三人で最中を割って、分け合いながら話すこととなった。
「送迎、真面目に考えて見ない?」
そう切り出した母に、夏希が怒涛の追撃。
「おにーちゃん無防備だし、絶対送迎必要! 周りの女の人に襲われた時、傷つくのはおにーちゃんなんだよ!?」
「……夏希は俺と登校したくないの?」
「うぐっ?! で、でも!」
「どうしてもって言うならクラスの女子とか複数の人に頼んで下校してもらうようにするし」
「そう、それなら……」
「待っておかーさん! 複数の女の人なんて、勘違いさせちゃったらどうするの!?」
「まぁそこはクラスメイトだし、きちんと話せば分かってくれるんじゃない?」
「あ、朝はどうするの?!」
ふふふ。夏希がそう来るのは想定済みよ。
ここは男の魅力(?)を最大限活用しよう。
「そこはほら、夏希がいるし?」
「わ、私!?」
「そうそう。一緒に登校してくれたらおにーちゃん安心なんだけどなぁ」
俺の言葉に、茹でダコのようになってしまった夏希は、俺のことを若干睨みながらもそのまま文句を言うことなく最中をかじり続けた。
チョロ可愛いなぁ。
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生徒会に関して、吉武も拝読させて頂いているあべこべ作品と流れが似てしまっているので、少しだけネタバレを書こうと思います。ネタバレが気にならない方だけ活動報告にどうぞ!