昼食会
まさかの日刊一位に夢だと思って二度寝しました。
皆様のおかげです!
これからも頑張りますのでよろしくお願いします!
俺が求めているもの。
それは妹中心のハーレムだ。
もちろん俺とて男なので、美人は多ければ多いほうが良い。
この世界では男が女を選ぶのが普通だからか、淘汰されたのかブスはいない。
というか正直美人ばっかりである。
元の世界のアイドルを48人集めても十分戦える――どころか勝てるかも知れないレベルの美人が勢揃いしており。
さらにはその美人達がどんな無茶な要求でも必死に答えようとしてくれる。
最高である。
とはいえ、元の世界では女性とはドロドロしたものであり、それはこの世界でもあまり変わらない。
くわしくは聞いていないが一昨日も時津さん相手に放課後呼び出しとかあったらしいし、夏希だって俺と登校しただけでイジメに遭った。ハーレムを形成した時に夏希がドロドロないじめに遭うのは我慢できないので、ハーレム要員は慎重に選ばないといけない。
まぁ本当は夏希以外は火遊び程度で良いんだけど。
ゲスだって?
遺伝だよ遺伝。俺の親父も金を積ませて母さんのこと孕ませた挙句その後はほぼ音信不通らしいし。
そんなことを考えながら朝、学校に登校すると、クラスの雰囲気が変だった。
目にクマを作った人が多いのに約全員がすっきりとした、満ち足りた表情をしているのだ。
「おはよー。どうしたの?」
とりあえず聞いてみると、ちょっとはすっぱな感じの女の子――坂口さんだったかな?――がヤンキーな雰囲気には見合わないお淑やかな表情で答えてくれた。
「なんでもないですよ。暦さん、おはようございます」
なんだろう。
賢者モードか何かだろうか。
何が原因か分からなかったので周囲にも聞いてみたが、全員が全員、賢者モードらしく同じような受け答えしかしてくれなかった。
ので、唯一賢者っぽくない高橋さんに声を掛けることにした。
「ええと、高橋さん。皆どうしたの?」
「……話し合いの結果が芳しいものだったんだろうよ……」
「じゃあ高橋さんは何でヘコんでるの?」
「昨日、暦くんが休んだから……私が弁当持って来れる番だったのに……」
ああ。
昨日は夏希が暴走したから休んだんだけど、確かに約束してたな。
「ごめんごめん。妹が体調崩しちゃったからさ。お詫びに何か奢るよ。って言ってもあんまり高いものは無理だけど」
俺が言った瞬間。
高橋さんは目にも止まらぬ速度で身を起こし、かっと見開いた目で俺を凝視していた。
「おごり? やはり私は驕り高ぶっていたのか……?」
「いや、日常会話でそっちのおごりを使う場面なんてないでしょうよ。何かの料金を俺が持つよって言ってるんだよ」
「……私はついに幻聴まで聞こえるようになったんだな……」
「いや、何その反応!? 奢られたくないの!?」
「奢られたいさ! 奢られたいけど流石に女が奢られるのは対面悪いからむしろ奢らせて!」
何でも男に金を出させるのは女の沽券に関わるらしい。
ということで、今日の放課後に一緒にアイスを食べに行くことになった。
ラーメンとかでも良かったんだけど流石にワンコインを超えるものは申し訳なくなる小心者です。ただでさえ昼ごはんおごってもらってるし今回はチョンボしたのに奢ってもらうんだからね。
それでも高橋さんのテンションはマッハだったので、相当嬉しいことらしい。
そして賢者モードだったはずの周囲の女子から舌打ちとか殺気混じりの視線が高橋さんに向けられていたけど知らない。
知らないったら知らない。
***
と、知らんぷりを決め込もうとした時期もありました。
ええ、そうです。
察しの良い方は気づいたと思うけど、普通にスルー出来なかった。
だってえげつないイジメに繋がりそうだったんだもの!
その解決方法として提案したのが、
「たまには皆と一緒にご飯食べたいな」
そう、昼食のお誘いである。
ちなみに今日のお弁当は学級委員である山本・雫さんが用意してくれたもので、フレンチの冷菜を中心とした、小洒落たものだった。
これ絶対良いお店に無理言って作ってもらった感じだよね……。惣菜とか弁当ってレベルじゃねーぞ。
「暦様の隣は私が!」
「いや私が!」
「むしろ私が!」
「というより私が!」
「このタイミングで私が!」
「じゃあ私が!」
こんな感じで大混乱になるのが分かってたから嫌だったんだよね……。っていうかいまの流れだと「どうぞどうぞ」ってなるべきじゃないの?
必死すぎてそんな余裕ないか。
まぁ俺のせいで高橋さんが虐められたら絶対寝覚め悪いし仕方ないか。
「皆で仲良く食べたいなー」
俺がそう言い放つと、掴み合い一歩手前の言い争いをしていたのが嘘みたいにくじ引きになりました。
チョロ……素直だな。
車座になるために女子達がせっせと机を運びだしていくのを見て俺も教卓を動かそうとしたのだが、
「ああああ!? 暦くんは男の子なんだからいいんだよ!?」
とか言われてあっさり取り上げられてしまった。イージーモードとか飛び越して逆に怖いわ。
そして始まる昼食会。
右隣はくじ引きの発案者である山本さんで若干のヘイトを貯めている気配がするが、問題は左隣である。
「さー、暦くん、食べましょー」
何故かくじびき直前にやって来て無理やり参加することにした担任、三戸このみ先生が座っているのであった。
このみ先生が俺の隣を引いた瞬間に大ブーイングが起きた他、
「年増が」
「ふざけんな合法ロリが」
「遠慮しろよ教師」
「学内に不和をもたらすなカスが」
「加齢臭が暦くんに移るだろうが」
などなど酷い暴言が飛び出した。
そういうのやめろよ、と俺がはっきり言わなければもっと苛烈になっていたと思うが、一番恐ろしいのは、
「皆さんと違って私は余裕がないんです! 人工授精じゃなくて自然妊娠で母親になりたいんですよ!」
とマジな顔でキレていたこのみ先生である。
いや、エロいことするとかじゃなくて普通に隣に座るだけですよ?
この歳でパパとかマジでないですからね?
あ、ちなみに後で聞いた話だけれど、一つ上の学年にいる男の先輩は既に3児の父らしい。そして書類上は結婚もしており、義務は果たしたと言わんばかりに引きこもりになっているとか。
もうやだこの世界……。
そんなことを言いながらトマトとモッツァレラのカプレーゼを咀嚼していると、不意に山本さんから声がかかった。
「そういえば私の妹が暦くんの妹と同学年なんだけど」
「おお、夏希の。いつもお世話になってます」
「いえいえ。……それで、その、」
「何?」
「言いづらいんだけど……」
「怒らないから良いよ」
「……暦くんの妹が、暦くんは天然びっちだって言ってたって、妹が」
一緒に出てきたアイスのアールグレイ噴いた。
どう勘違いしたのか山本さんが切腹しそうな勢いで謝っているが、
「あー、うん。妹が俺のことを天然びっちって呼んでるのは事実だよ。びっちじゃないけど」
言った瞬間、周囲がざわりとどよめいた。
和気あいあいと――超注目されながら――食事を摂っていた雰囲気が一変。まるで俺自身が料理にでもなったかのような、猛獣のような視線が俺を襲った。
「びっちだって」
「脇が甘いのかな」
「家では裸族だったりして」
「一人でシたりするのかな」
「後で山本さんに追加調査お願いしないと」
「私の妹も学年違うけど中学校にいるから、そっちからも聞いてみるよ」
ああ、これアカン奴や。
「俺、ビッチじゃ無いからね?」
念押しをすると、猛獣のような視線のまま、そうだね、と約全員から返答が来た。
もうやだこの世界。
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