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ムシャムシャ 裏話 ※三人称

目覚めたら日刊4位!

驚きで股間がスプラッシュするところでした……!

応援ありがとうございます!

「時津ぅ、ちょっと面貸せや」


 時津・亜希子はクラスでもやんちゃをしている少女達に取り囲まれていた。

 その表情は親しみやすいものは言えず、むしろ剣呑な気配すら漂っていた。


「……分かったわ」


 亜希子は内容について心当たりがあったために了承すると席を立つ。

 そうして連れて来られた体育館裏で、ドン、と肩を押された。

 告白の時によくやられる壁ドンの変化球……などではない。

 突き飛ばされたのだ。


「おめぇ、調子こいてんじゃねぇよ」

「宇野くんが優しくしてくれてっからって勘違いすんじゃねーぞ?」

「何一緒に飯なんて食ってんだよてめぇはよ」


 ヤンキー少女三人に取り囲まれ、罵声に近い言葉を浴びせかけられた亜希子だが、一切の同様なく、むしろ余裕すら感じさせる表情で三人を睥睨した。

 その態度に、


「……何余裕こいてんだ」


 三人の中でもリーダー格であった坂口・絵理奈は若干顔をしかめながら尋ねる。

 リンチにされる寸前、と言っても過言ではない状況。

 絶滅危惧種とまで言われる男に対して媚を売り、あまつさえ二人で食事まで取ったのだ。それこそ後ろから刺されても仕方のない状況にもかかわらず、余裕がありすぎたのである。


「あなた達は、私が暦くんとご飯を一緒に食べたことが不満。違う?」

「ああ?! なんだテメェ自慢か!?」

「やめろ」


 激昂するヤンキー少女を絵理奈が制すると同時、時津は不敵とも言える笑みを浮かべた。


「暦くんが食べた惣菜……残ってるわよ」

「「「は?」」」

「暦くん、いろんな味が食べたいって、少しずつ箸をつけたから」


 その言葉に、三人は同時に喉を鳴らした。

 少しずつ箸をつけた。

 それはつまり、宇野・暦の食べかけとなった食材が存在していることを意味しているからだ。


「……今回はそれで手を打とうか」


 絵理奈がポツリと呟けば、ほか二人が爛々と輝いた瞳で頷いた。


「暦さんの食べかけ……唾液がついた食べ物……」

「宇野くんの唇に触れて…うっ……ふぅ」


 それぞれが内股になりつつ教室に戻ると、そこには宇野・暦を除いたほぼ全てのクラスメイトがいた。

 放課後にも関わらず全員が着席しているという異様な光景に4人が固まっていると、教卓が喋った。

 違う。

 教卓の影に隠れてしまっている担任の三戸・このみが喋ったのだ。


「席についてください」


 舌足らずながらも有無を言わせぬ口調に亜希子達が従って着席したことを確認すると、こほん、と小さく咳払いをして口を開いた。


「それでは、クラス内の不和を取り除くための学級会を開きます――委員長」

「はい」


 このみの呼びかけに応じて学級委員である山本・雫が立ち上がる。

 彼女はそのまま教室背後にあるロッカーを経由して教卓に移動する。

 その手に持たれているのは。


「私の惣菜重箱!?」

「あたいの唾液が!?」

「宇野くんの唇が!?」

「暦さんの食べかけが!?」


 学級委員である山本・雫は重箱の中身を素早く確認すると、黒板に内容を書き出す。

 内訳は食材や量などではなくある一点に集約されていた。

 すなわち、


「齧った後がある、だと!?」

「箸をつけた痕跡ありですって!?」

「齧ったものの横に配置されてた惣菜!?」


 その食材が宇野・暦と物理的に接触していたか否かである。


「それでは、決を取ります。話し合いで決まらない場合は私が没収することもありますので極力平和的に解決してください」

「ちょっ、雫! 横暴よ!」

「そうだ! 委員長だけ複数個もらえる可能性が出てくるなんてずるいわ!」


 周囲からあがったブーイングに対して、雫は無表情に言葉を返す。


「その代わり、私自身は齧った後があるものに関して立候補する権限を放棄します」

「……明確に敵が一人減るのか」


 思わず納得してしまい、そこからは平和的ながらも阿鼻叫喚の地獄絵図が始まった。


「そのコロッケ、私に譲ってくれない? 3万までなら出すわよ?」

「冗談。暦様の齧ったコロッケが3万程度の価値だと思ってるやつには渡せないわ」


「その胡麻和えはあたいが先に目をつけたんだぞ!?」

「坂口さんは暴力に訴えるつもりですか? 惣菜獲得権を失って良いならご自由に」


「亜希子! アンタは暦さんと一緒にご飯食べてたんだし遠慮しなさいよ!」

「無理よ! 暦くんの歯型付きなんて捗るものを諦められるはずないでしょ!?」


「三戸先生……流石に教師権限でグラタン持ってくのはズルくないですか!?」

「なんのことかわかんないですー。せんせーはクラスの平和のためにこの企画を立ち上げたのですー。このくらいは役得なのですー」


「エビフライのしっぽ! そのしっぽは確実に宇野くんが食べたものだから絶対譲らない!」

「ちっ、なら私はそのしっぽに接していたであろうパセリを――」


 話し合いは完全下校時刻まで続いたという。


 余談だが、翌日の学校にはクラスの過半数が目の下にクマを作りながらも、かなりすっきりした様子で登校してきたという。おかずをオカズに捗っていたのは言うまでもない。

口をつけた惣菜で捗るとかニッチにも程がある……!


お読み頂きありがとうございます!

感想、批評、ブクマ等お待ちしております!

作者のモチベーションになりますので気に入っていただけたら是非!

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