表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あべこべ世界へようこそ!  作者: 吉武 止少@8/29「捨てられ社畜」モンスター文庫より発売!


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/41

続々・放送部 ※他者視点あり

難産過ぎる……クソみたいなオマージュが溢れてますが原作を揶揄する意図はありませんのでどうか生温かい目で見守ってください。


あー、海編いきたい。いきたいけど部活編も書きたい。男女逆転なのに安易な水着回とか設けて良いものかすっごく迷うし部活編を先に全部書いてから海行くかなぁ。あ、26話「ええと、夏、みたいですよ?」は水着の話だけど水着回じゃありません。

ありませんったらありません。ええ、違うといえば違うのです。

「『あ、ごめんなさい、私、そんなつもりじゃ……』」

「『もずく酢……』」


 これが、二人の、出会いだった。


「『すごい……ドキドキする』」

「『ぶりの照り焼きッ……!』」


 惹かれあう二人……!


「『……いいの? もう、とまらないわよ』」

「『ちくわ大明神』」


 残酷な運命に抗う二人の運命は――


***


「これ何すか? 意味が分かると怖い話とかそういうタイプの物語ですか? それとも新手の純文学? モダンアート?」

「しつれいな。れっきとしたきゃくほん」


 長机を挟んで座っているみみ先輩が不満そうにぷぅっとほっぺたを膨らませながら足をプラプラさせる。

 小っちゃすぎてパイプ椅子だと足つかないとかマジでロリすぎるだろ……。というか放送部(ウチ)って顧問込みで考えると40%がロリなんだよなぁ。

 残りは魔乳とガチムチだしイロモノ集団感がヤバイよね。

 まぁこの世界だと男子(おれ)もイロモノ枠な気がするけど。


「んー、でもぉ、この脚本だと確かに分かりづらいわねぇ……」


 ガチムチこと敬子先輩がペラペラめくりながら台本を確認し、ダメだしを入れる。ちなみに薫子先輩は生徒会で欠席だ。顧問? 泣きながら廊下の雑巾がけしてたよ。校長監督の元で。


「ん。わかっては、いる」


 いや、だいたい主人公♂のセリフがほぼ全て食べ物なのは分かりづらいとかそういうレベルじゃない気がする。おにぎりの具しか言わないどこぞの呪言師かよ。まぁちくわ大明神(さいごの)は食べ物かどうかも怪しいけども。新手の呪霊かも知れんな。


「あの、とりあえず主人公♂のセリフを普通にしません?」

「ダメ、絶対」

「そうね、それは許可できないわぁ」


 まさかの敬子先輩からもNG。


「主人公♂の配役は暦くんがやるんだから、普通に喋ったら会場がすごいことになるわよぉ」

「きぜつ、しっしん、しんていし」


 ああうん、そうですね。俺の存在に慣れてきたクラスメイトでさえ会話中に時々鼻血噴くもんね。

 どうしたものか、と考えていると、


「かいてみる?」


 みみ先輩が上目遣いに提案してきた。

 そういえば夏希もこんな時期があったなぁ。可愛かった。


『おにーちゃん。えほん』


 お気に入りの人形と絵本を抱きしめて上目遣いにおねだりする幼い夏希を思い浮かべてトリップしてしまった俺は、気付けば脚本を担当することになっていたのであった。


***


 リビングのソファでお気に入りのドラマの再放送を見ていると、おにーちゃんが横に座ってきた。

 シャワー浴びてきた直後だからだろうけど、自分が男性だって忘れてるんじゃないかってくらいゆるゆるの服から、しっとりした肌が見える。

 最初のうちはきちんと注意してたんだけど、あまりにも治らないから最近諦めた。

 痴漢的な、見せて興奮とかそういうのじゃないから外ではしない……と思う。

 まぁ部屋の中、っていうか私の側でだけなら、ね?

 ごちそうさまです! お代わりも所望します!

 夕飯はこれからだけども別腹!

 夏休み間際なのもあって梅雨明け前なのにすごい暑さで、とりあえず帰ってすぐシャワー、ということだったんだけども、髪もきちんとは乾かさずに出てきたらしい。

 うーん……ぬれぬれのおにーちゃんってすごい色気。だけどせっかくきれいな髪してるのに痛むからきちんと乾かした方がいいと思うんだよなぁ。

 まぁきれい好きな男性らしく、夜は夜できちんと湯船に浸かるし、その後にはきちんと乾かすから良いんだけども。

 おにーちゃんはソファの斜め横に扇風機をどっかりと置くと、首を固定して強ボタンを押す。


「あー……気持ちいい」


 どきっとするような艶っぽい声に思わず固まっていると、おにーちゃんはおもむろにテレビのリモコンに手を伸ばし、


「あー!」

「ん? 見てた?」

「見てたよ! 良いところだったのに!」

「いやでも再放送だし良いじゃん」

「良くないよ! 犯人が分かる直前だったのに!」

「いやだからもう知ってるだろ犯人。これ前にも観てたじゃん」


 ジト目のおにーちゃんに、ぷいと膨れてみせる。


「知りませんー。楽しみに見てたんですー」

「じゃあ教えてやるけど犯人はタカシだし犯行動機は太陽がまぶしかったからだよ」

「っていうか後7分! 7分だからネタバレとか語ってないで見せてよ!」

「残念。俺はこれからドキュメンタリー見るんだよ」

「ドキュメンタリーってコレ違うじゃん! アマゾンの奥地で未確認生物探すやつじゃん!」

「いや、だから分類はドキュメンタリーだろ?」

「『と、その時!』とか『お分かりいただけただろうか?』とか無意味に煽っておいて、それっぽい証拠も出てくるのに結局見つからずに終わるだけじゃん!」

「良いんだよ! そこまでの過程を楽しむもんなんだよ!」


 わちゃわちゃとリモコンの取り合いをしている間にドラマは終わってしまった。しょんぼりしてるとおにーちゃんがアイスを片手に頭をなでなでしてくれたのでとりあえずは良しとする。タカシが自供するところ観たかったし、おにーちゃんに構ってもらいたいから怒ったふりを続けるけど。

 納豆味のアイスを食べながら、おにーちゃんリクエストのインチキドキュメンタリーを観る。ちなみにアイスの煽り文句は『ごろっと丸ごと! 中粒大豆100%』で、噛むと歯が欠ける恐れがあります、って書いてあった。解けるとねばっとするけどかき混ぜてないから粘り気がイマイチだった。あとご飯欲しくなる。


『こんな足跡、見たことない!』


 あ、現地の人のインタビュー的にやっぱり何かUMA的なのを見つけた風になってる。おにーちゃんが身を乗り出してみてるのがちょっと悔しかったので、意地悪なことを言ってみる。


「どーせ本体は見つからないんでしょ。脚本があるのよ脚本が」

「……脚本、かぁ」


 おにーちゃんがポツリと呟いた。


「どうしたの?」

「いや、部活でドラマ撮るんだけどさ。脚本づくりを頼まれちゃって」


 聞いてみると、8分間のドラマを作ることになっているらしい。うーん、すっごく短い気がするけど、1時間モノを作るってなるとアマチュアの学生じゃすごく大変だろうし、このくらいの時間がちょうど良いのかも知れない。


「ちなみに夏希の好きなジャンルは?」


 おにーちゃんの真摯なまなざしに、怒ったふりも忘れて必死に返答を絞り出した。


***


「ちなみに夏希の好きなジャンルは?」

「……サイコサスペンス」

「8分だと犯人視点で殺しただけでおしまいだね」


 というかそれはサイコサスペンスじゃなくてただのサイコだよね。普通に怖ぇよ。


「純愛モノ」

「サイコサスペンスの直後に言われると狂気を感じる」


 嫉妬、束縛、ストーカーと順調にレベルアップしていきそうな純愛は嫌だ。きっとヤンデレエンドだろう。ナイスボートか? ナイスボートなのか?


「異世界転生モノ」

「8分だと神様にチートスキル貰ってる間に終わるかな」

「悪役令嬢モノ」

「8分だと断罪されて他国に移動してる最中に終わるかな」

「えーと、『もう遅い』とか」

「それ、夏希がたまに読んでるネット小説の人気ジャンルだよね?」


 俺も読むから知ってる。あ、でも元の世界とは微妙に話が変わったりしてるのかなぁ。


「人気ってことは王道ってことでしょ?」

「うーん。王道と言えば王道だけど、ありきたりと言えばありきたりになっちゃうんだよね」

「確かに。どっかで読んだことあるような設定になりがちだよね」

「他とは違う何かを入れられれば……」


 俺の言葉に夏希がコテンと首をかしげる。可愛い。


「サイコサスペンスに純愛をプラス」

「ラーメンのチョイ足しみたいなノリでヤンデレ作ろうとすんなよ」

「じゃあ、人気コンテンツからチョイ足ししよっか」

「それはパクリでは」

「オマージュ! オマージュです!」


 夏希が言い切ったので、とりあえず是とする。というか夏希に対して否はない。それが俺のポリシー。


「サイコサスペンスに鬼狩りをプラス」

「――ッ。危ない、思わず突っ込むところだった。俺は長男だったから突っ込まずに済んけれど、次男だったら突っ込んでいた」

「純愛に呪霊をプラス」

「自分が書く内容は決まってないけど、パクって後悔はしたくない」


 うーん、打てば響く。素晴らしきかな兄妹愛よ。いや、遺伝性のヲタクとか言うなよ。どっちもメジャータイトルだし。つっても元の世界から何が変わってるか分かんないから今度漫画喫茶に行って読んでこようかな……その前に集めてるクラスメイトがいないか聞いて――ダメだ。誰が一番早く本屋に買いに行けるかレースが始まる未来しか見えねぇ。

 あ、でも委員長くらいには聞いてみても良いか。夏希の同級生に妹がいたはずだし、読者層二倍ってことは買ってる確率も二倍でしょ。


***


「暦くんが、呪術シーフードと鬼減の刀を読みたいって?! おかーさん、お小遣い前借り! 前借りでお願いします! あと車出して! 本屋行くから早く!」

「ええ……どうしたのよ急に」

「あーもー! 今の返答で11秒ロスった! その動きも2フレーム遅い! 早くして! 事は1分1秒1フレームを争うの!」

「何? RTAでも始めたの?」

「いーいーかーらーはーやーくー!」


***


 翌日、委員長がたまたま(・・・・)集めていた呪術シーフードと鬼減の刀を全巻貸してくれた。まるで全巻新品みたいな綺麗さだった。委員長って几帳面なんだな。コレクター気質とかなのかなぁ……汚さないように気を付けて読もう。

 なお、呪術シーフードも鬼減の刀もあんまりストーリーは元の世界と大差なかったのでそのまま追うことにした。

「続・放送部」「停電」「続々・放送部(本話)」を割とパパっと上げたのですが、上司がうんこからクソに変わった関係で体調崩すくらい忙しいので次回はしばらく空けることになりそうです。お待たせして申し訳ありませんが、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ