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あべこべ世界へようこそ!  作者: 吉武 止少@8/29「捨てられ社畜」モンスター文庫より発売!


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停電

海は海で書くけれども部活も部活で書きたい。誰と行くべきだろうか。

 放送部の部室は暗い。

 というのも、音響の関係で窓がなく、ドアも二重になっているからだ。

 電気をつければ問題ないのだけれど、現在は、


「……真っ暗ですね」

「まるで、このみせんせいのしょうらいのよう」

「何でですか!? ただ、蛍光灯が切れただけじゃないですかっ!」

「……それが、このみせんせいのさいごのことばだった」

「不吉なモノローグやめなさい! えーと、暦くん。とりあえず蛍光灯取りに行きましょうか」

「そうねぇ……悪いけどお願いできるかしらん?」

「良いですよっと。あれ?」

「……こよみくん、うごいちゃダメ。いま、たぶんコードひっかけた」

「そうみたいねぇん……断線すると困るのもあるし、代わりにアタシが行こうかしらぁ」

「それもダメ。いま、こよみくんがどこにいるかわからない。アクシデントでも、タッチはセクハラになる」

「! み、みみさんの言うとおりです! ここは顧問として私が――」

「このみ先生、鼻息荒くないですか?」

「そそそそんなことはないですよーう?」

「……なんで疑問形なのかしらん?」


 何はともあれ、身動きが取れない。


「……きっと、待ってれば薫子さんが来てくれますよ」

「あのおっぱいをまつか」

「前から思ってたんですけど、みみ先輩って結構毒舌ですよね」

「そう」

「みみが毒舌なのはぁ、信頼してる人に対してだけよん」

「じゃ、じゃあ私のことも顧問として信用してくれてるんですね!」

「のーこめんと」

「ふふん。みみさんったら素直じゃないですねー。まぁ仕方ないです。先生は頼れる大人ですからね!」


 うーん。同じロリボディの持ち主として親近感が湧いているだけじゃないだろうか。

 いや、それが悪いこととは言わないんだけれど。


「それにしても、暇ねぇ……何かお題でも出してお話しましょうかぁ?」

「あ、じゃあ先生がお題を出します」

「くうきよんでね」

「ぐっ……ちゃんとキャッチーな話題を出しますよ」


 このみ先生は少し口ごもった後に、


「好きなタイプとかどうですか!」

「……男子がいる前でそれは、ちょっとセクハラちっくよねぇ……」

「じゃあ何か良い話題あるんですかー?」

「しんにゅうぶいんにきいた、せんぱいのイメージ」

「良いですねー! 顧問のことどう思ってるかも聞いてみましょう!」


 うお。

 何かメチャクチャ答えにくいのが来た……。

 っていうか普通に俺がメインになるような質問してこないで欲しい……いや、まぁ新入部員いじるのも部活の定番といえば定番なのか。


「まずは顧問である私ですよっ! さぁ暦くん! 今まで言えなかった思いの丈をここでぶちまけるのです! ドピュッと!」

「合法ロ――」

「ああん?」

「……なんでもないです」


 真っ暗闇なのに、何故か般若が幻視出来た。

 なんでこんなに自信満々なのかと思ったら、都合の悪い回答はさせない腹積もりだったか。

 言論の自由はどこ行った!?


「……えーと、若いなと思いました」

「そうでしょうそうでしょう! お肌も十代並みにピチピチですからね!」


 いや、十代どころか一桁レベルだと思うんですけども。


「ああん?」


 ひいい?!

 心読まれたっ!?


「いや、あの、なんて言うんですかね。(胸が)慎ましくておしとやかですよね」

「そうですか! やっぱり大和撫子なオーラは隠せないんですねっ!」

「確かに(七五三的な)和服とか似合いそうですよね」

「うんうん。暦くんは先生のことをきちんと見てますねー。やっぱり身近にいる女性として意識しちゃってるんですかー?」

「(どうしてそんなにロリなのかは)気になるところではありますね」

「……どうしよう、暦くんが素直すぎて先生ドキドキしちゃいますよー。担任を口説くなんていけない子ですねー」

「俺も(いつ怒らせて般若を顕現させないか)ドキドキしてますよ」


 なんだろう。言論の自由が奪われている気がする……。


「こよみくん。ほんねでいいんだよ?」

「そうよぉ。どうせこのみ先生の和服なんてただの七五三なんだし」

「かふっ」


 変な声が聞こえてこのみ先生が静かになった。


「じゃあ、つぎはぶちょうのわたし。どうおもったか」


 このみ先生を撃沈させちゃった手前、部長にだけ嘘吐くのも微妙だしなぁ……まぁ、おとなしく本当のこと言うか。


「えーと、在校生の妹が迷い込んだかと思いました」

「くふっ」


 変な声が聞こえて、それきりみみ先輩の声がしなくなる。


「えーと、みみ先輩?」

「みみのことは放っておいて大丈夫よん。それより、最後はア・タ・シ」

「世紀末覇者」

「こふっ」


 敬子先輩も静かになった。

 うん。

 男性を安易にいじろうとするからダメージ受けるんだよ。俺、悪くない。

 悪くないったら悪くない。

 暗闇の中で誰に宛てたものかも分からない自己弁護をしていると、みみ先輩が復活したらしい。


「……う、うるおい。こころにうるおいを」

「そうねぇ……アタシのダメージ回復のためにも、暦くんのタイプとか聞きたいわぁ」

「そうです! そういうタメになる話をしましょう!」


 結局そこに戻ってくるのか。つーか何のタメになるんだよ。

 いや、まぁ順当といえば順当なんだろうけども。

 しかしどう言ったものか。

 素直に夏希って言ってもいいけど、妹が本命だから側室のチャンスがあるって思われるのも微妙だよな。特にこのみ先生とか無理くりねじ込んで来そうだし。

 うん。

 夏希って言わないでボカして伝えよう。


「どちらかと言えば年下ですね」

「かふっ」

「くふっ」

「こふっ」


 あ、三人にトドメ刺しちゃったかも。

 暗闇の中、すすり泣きのようなものが聞こえてくる。

 すすり泣きの三重奏とか軽くホラーである。

 うーん。

 何かフォローした方が良いんだろうか。

 いや、でも実際これ以上何を言ってもこの人達にダメージを与えるだけになる気がする……。


「好みとか止めて、フツーに質問タイムとかにしません?」

「そ、そうです。そうしましょう!」

「ん。そのほうがせいしんえいせいにいい」

「それじゃあ、一人一問、何か良い質問を考えましょ」


 敬子先輩の言葉に二人が唸り、それからこのみ先生が声を上げる。


「デートで行ってみたい場所とかどうですか?」


 おお。

 このみ先生なのにまともっぽい質問をしてる……!


「海とか水族館とか良いですよね。あと動物園とか」

「「「おおっ」」」


 三人が歓声を上げる。


「水着はどんなのが良いですか!? 悩殺ブーメラン!? それとも魅惑のブーメラン!? まさかの清楚系ブーメラン!?」


 それあんたの好みじゃろがい。

 っていうかこのみ先生はブーメランしか推してないし。なんだ清楚系ブーメランて。清楚系AV女優的なノリか。

 そもそもブーメランパンツって元の世界だとボディビルとかでしか使われないキワモノな気がするんだけど……ああいや、色んな趣味があるからそうでもないのか?

 最近、この人たちと会話してると可笑しいのが自分なのか世界なのかわからなくなるんだよなぁ。

 遠い目で暗闇を見つめていると、不意に幼女の笑い声が聞こえた。

 ホラーか。

 違う、みみ先輩の笑い声だ。


「あまい。チクロかサッカリンのごとくあまい」

「何ですかみみさん。勿体ぶって」


 ち、ち、ちとみみ先輩が小さな舌打ちをする。真っ暗だけどドヤ顔が目に浮かぶ。


「みずぎはいがいとぼうぎょりょくたかい。みられるってわかってるから」


 ああ確かに。夏希のチェックが入るのは間違いない。プールの時も三回くらいダメ出しくらったし。下手すると濡れるの禁止で砂遊びしかさせてもらえないまである。


「ここはすいぞくかんがせいかい」

「その心は?」

「いるかしょー。さいぜんれつでざぶんすればぬれぬれのすけすけではらしょー」


 敬子先輩とこのみ先生が唾を飲み込む音が暗闇に響く。


「いるかにはしゃいでぬれすけにきづかないこよみくん、はらしょー」

「ハラショーッ!!!」


 興奮しだしたロリ二人を置いといて、敬子先輩に声を掛ける。


「そういえば脚本なんですけど、コメディでも良いですか?」

「良いわよん。でもエッチなのはダメよぉ」

「とりあえず思い付いたものを書き散らしてみていいですか」

「良いと思うわぁ。ボツになるかも知れないけど、気にせず書いてごらんなさい」


 この部活唯一の常識人からGOサインが出たのでとりあえず良いってことにしておこう。

 俺はハラショーハラショーうるさいロリ二人から逃避するように、脚本を頭の中で練るのだった。

 ちなみに二人が騒ぎ過ぎて注意しに来た校長先生がドア開けてくれたので、暗闇からはさらっと解放されました。校長先生マジ有能。

みみ先輩のセリフが読み辛過ぎてカタカナ妥協しました。そのせいでカタカナとひらがなのルールが曖昧だけど気にしないでください。

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