続・放送部
お久しぶりです。リハビリ中です。
前回更新は記憶のかなたにありそうなので登場人物をば紹介させていただきます。
このみ先生=ロリ外道教師
みみ先輩=ロリ外道先輩
薫子先輩=お嬢系魔乳先輩
敬子先輩=良心。ただし外見はガチムチマッチョ。
「あめんぼあかいなあいうえお」
「「「アメンボ赤いなアイウエオ」」」
「うきもにこえびもおよいでる」
「「「浮き藻に小海老も泳いでる」」」
テストも終わって消化試合に近い授業を受けた後、俺は部活動に精を出していた。
メンバーはこのみ先生と同類の放送部部長、丸山・みみ先輩に、世紀末覇者みたいな見た目の藤沼・敬子先輩。そして爆乳KY生徒会長の越後屋・薫子先輩だ。
一年に一人、幽霊部員がいるのだが触れて良いものかも微妙なところなので放置している。誰なんだろう。
「かきのきくりのきかきくけこ」
「「「柿の木栗の木カキクケコ」」」
ちなみに今やっているのは発声練習。個人で出場するアナウンスや朗読の基礎になる練習だ。
とはいえ俺は個人部門に出場するつもりはない。このみ先生を始めとしてみみ先輩も敬子先輩も出場させる気満々だったんだけれども、どう考えても『男子一位』になるのが目に見えていたからだ。
その代わりに出るのが団体で作る『テレビドラマ』と『ラジオドラマ』というドラマ部門だ。
当初の台本では俺が演じる男子水泳部員が奮闘する青春ものだったはずなのだが、撮影を始めたところ先輩方が映像データを『AV』という不名誉な略称で呼び始めたために強制で却下した。
というか辞めようか本気で悩み始めたところで敬子先輩が気付いてくれてみみ先輩と外道な顧問を説得してくれた。後者は主に物理的に。
そんなわけで代案になる脚本を先輩方が作っている途中で、撮影とかはできないので自主的に発声練習に混ざっているわけだ。
「暦くんいますー?」
と、そんな風にだいぶ蒸し暑くなった部室で活動をしていると、不意に扉が開いた。
ポルターガイスト……ではなくこのみ先生だ。
発声練習から抜けてこのみ先生に近づくと、なにやら良からぬ笑みを湛えた合法ロリから一枚のプリントを差し出される。
「……なんですかコレ」
「なんか高文連から来たのよコレ」
言われて見てみれば、それは確かに放送部を始めとした文化系団体の大会を主催する高文連からの文章で、
「特別審査員?」
「そーなんですよー。大方、部員として参加されちゃうと各賞を総なめにしちゃうからなんでしょーねー」
ああうん。この世界の人って男性逆差別がホントすごいもんね。
「えーと、でもコレだと俺って放送部の作るものに一切関われませんよね?」
「そんなことないですよー。下のほうを読んでくださいー。エキシビション的な立ち位置で全国決勝の後に放送するって書いてあるじゃないですかー」
それってクオリティ低いと晒し者になるだけなんじゃ……。
「それにエキシビションは別枠だから、もう一本、審査対象になるドラマを提出できるみたいなんですよー。まぁ暦くんは参加できませんけど、映像編集として頑張ってもらいたいですねー」
「わかりました。……で、この特別審査賞ってなんですか?」
「なんか自校の作品以外でいいものを一つ選んで、発表してあげればいいみたいですよー」
「いや、そこじゃなくてですね」
俺が気にしているのはプリント下部に書かれた文字。
『特別審査賞は正賞としてトロフィーが授与されます。副賞については特別審査員が定めたものとする』
つまり、俺が自由に設定して良いってことなのかな?
自由度高すぎて困るっていうか、そんなもんを一生徒に任せんなよ。
いやまぁ男だから何をしてもご褒美ってことで良いんだろうけどさ。
「とりあえずお断りします」
「お断りできないんですよー」
間髪入れずに返されて言葉に詰まる。
いや、たしかに主催者としては俺をそのまま出すわけには行かないだろうししょうが無いといえばしょうが無いんだろうか。
と、俺の肩をぽんと叩く小さな衝撃。
振り向くと、みみ先輩が無表情ながらもグットサムで決めポーズを取っていた。
「もーまんたい。わたしにまかせる」
あー、うん。
任せたいような任せたくないような……悪知恵的には頼りになるんだけどほんとに悪知恵すぎて俺にも被害が来そうなんだよなぁ……。
歯にものが挟まったような表情でみみ先輩を見ていると、横にいた敬子先輩もこくりと頷きをひとつ。
「暴走しそうになったらアタシが止めたげるから、とりあえず任せて見たら良いわん」
「そーですよー。先生の立場的にもその方がずっといいと思いますー」
「うーん……じゃあそうしますか。あ、でも何かあったらほんとに辞めますからね?」
そんなわけで、大会へ向けてドラマ制作が始まったのである。
「ちなみに副賞、どんなものを考えてます?」
後日、俺がみみ先輩に聞くと、みみ先輩は存在しない胸を張って可愛らしい手帳を差し出してきた。
そこには少しだけ甘さを感じる丸文字で、
『ドキッ♡ こよみきゅんにプレゼントされたらうれしいものリスト♡』
と妙にイラっとする題名が記されており、その下にはト書きで案が連なっていた。思わず絶句していると、同じく覗き込んでいた薫子先輩がリスト最上段を指さす。
「この、ストローっていうのは何ですの?」
「おひるごはん、おべんとう」
「ほう、それで」
「ブリックパックのおちゃがつく」
「ほう、それで」
「のみおわったのあげる」
「あげれません! 人はそれをゴミと言うんですッ!」
「エコ。よさんゼロ」
だからってゴミをプレゼントにするなよ! なんか微妙に喜びそうな気がするのがなおさら怖い!
そのほか、割りばしとかペットボトルとかゴミ類が名を連ねているので片っ端から却下していく。
「えーと、空気? これは何です?」
「ビニールぶくろ、ようい」
みみ先輩はよくぞ聞いてくれましたといわんばかりにどっかから取り出したビニール袋をばさっとやって広げる。
「はい、しんこきゅう」
「ええっと」
ビニール袋の口をすぼめた状態で自分の口に当てて呼吸をする。ガサガサと音を立てながらビニール袋が軽く膨らんだりしぼんだりする。もう読めたんだけども、
「まさかコレをプレゼントするとか言いませんよね?」
「……そのばでふくろづめ。プレミア」
「絶対しませんよ!」
ビニール袋をぺいっと捨てると、このみ先生がキャッチ。止める間もなくそれをスゥー、ハァーと吸い始める。
「………………へへへっ」
このみ先生はにへらっとした笑みを浮かべながら全力で深呼吸をしている。
「これが暦くんの吸っていた空気ッ! 美味しいッ! 視界がキラキラしてきたッ!」
それ酸素不足だろ。つーか絵面がシンナーじゃんっ!
この後、薫子先輩が呼んできてくれた校長先生にメチャクチャ叱られてた。なんでクビになんないんだろあの人。




