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あべこべ世界へようこそ!  作者: 吉武 止少@8/29「捨てられ社畜」モンスター文庫より発売!


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夏だ! 海だ! ○○ーランドだ!

諸事情により感想受付等々は停止させていただきます。

メッセ等もご容赦くださいますようお願い申し上げます。

 夏といえば海だ。

 俺はそんな独断と偏見に満ちた意見を元に行動を開始した。

 前の世界でも家族揃っての海水浴は宇野家の恒例行事だったのだ。

 つまりそれは妹の夏希が水着とかいう極薄の布一枚で俺と戯れるという神のごときイベント。

 前の世界だとオンリーツンだった夏希がちょっとはしゃいでボートとか浮き輪とかで一緒に遊びたがるという数少ない機会だったのだ!


「というわけで海水浴に行きたいんですけど」


 などと光さんに相談したのが昨日の夕方。

 光さんは俺が尊敬できる数少ない女性である。いや、女性差別とかそういうのじゃなくて、単純に性欲とかに打ち勝てる理性を持っている、職業人としてすごい人って意味だけども。

 ともかく光さんに相談したところ、


「海水浴、ですか……」


 と、無表情ながらも険しい視線を向けられてしまった。

 この世界では男が海水浴にいく、なんてのはカモがネギとだし汁背負ってガスコンロと土鍋を持ってきてくれた上に〆の雑炊用に米まで炊いといたよ! みたいな感じなので護衛のプロたる光さんが懸念を示すのも理解できる。


「やっぱり無理ですk」

「いえ、なんとかしてみせましょう」


 光さんは俺の言葉を言い切らせないうちに「なんとかする」と断言してくれた。クライアントの要望に限界まで答えようとするその姿勢。やっぱりプロってかっこいいなぁ。

 そんなことを考えながら踵を返した光さんの後ろ姿を眺めていると、


「……? 水?」


 さきほどまで光さんが立っていたところに水が垂れた跡が見えた。

 ……やっぱり護衛対象が自ら危険に飛び込むことに葛藤があったのだろう。

 それがこの()となって垂れてしまったのだ。

 かけらも動揺を見せずに頷いてみせた光さんのプロ精神に改めて尊敬の念を送った。


***


 水着! ご主人様の水着!

 あやうくブシャアするところだった!

 正直ちょっとだけ垂れた気がするけど問題ない! 問題ないのよ!

 これは何が何でも叶えてあげないと!

 ああでも叶えられずにお仕置きされるのも捨てがたい……!


***


「ぷらいべーとぴーち……?」

「それは個人的な桃、です。私が言っているのはビーチ、つまり砂浜です」


 俺のエスプリの聞いたジョークをばっさりと切って捨てた光さんは、サッとカタログのようなものを出してくれた。

 そこに書かれていたのは『プライベートビーチ』の文字と、最大収容人数、そして警備や救護の人数などがズラズラと羅列された紙であった。


「男性が女性を恐れてやりたいことができない、などということがないように、自治体のほうで行っているサービスがあるようなので利用することにしました。私としては最大収容人数二〇〇〇人、警備が五〇〇人に救護が七五〇人のプランが安心かと思うんですが」


 なにそれどこの王族?


「いりません! この一番小さいので十分です! そもそも二〇〇〇人も呼ぶ人いないですし!」

「お望みとあらば地元の人や芸人を呼んでなにか披露させますが……」

「結構です!」


 何はともあれ、海に行くのは割と楽そうであった。

 っていうか披露させるって何だよ。マジで王族かよ。


「では房総のこの辺りが良いですね」

「千葉県ですか。良いですね」

「ええ、今の時期は……そうですね。何か食べたいものはございますか? 好物などを教えていただければ用意致しますが」

「好物……カキ、は冬が旬だし……魚介ならイカとかタコも好きですね」


 うーん……あ、海だからって海産物に限らないのか。


「あと海産物じゃないですけど、ナッツとかカリカリで美味しいですよね。あと長芋も好きですよ。短冊に切ったのにポン酢垂らして食べるの」


 俺の言葉に光さんはあんぐりと口を開けて固まった。


「えーと、光さん?」

「……」

「光さん。光さんっ」

「あ、いえ、その、すみませんでした」


 光さんは慌てて頭を下げ、ですが、と言葉をつなげた。


「私から聞いておいてなんですが、好み等々は軽々しく口外しないようにお願いします」

「……何か問題が?」

「……ええ。株価に」


 マジか。下手な発言したらそれだけで風説の流布になるじゃねぇか。


***


 カキ。イカ。タコ。

 そしてナッツのカリカリなカリで私の×××を責め立てる……じゃなかった!

 カキは亜鉛!

 イカやタコはタウリン!

 ナッツはアルギニンが豊富だし長芋はムチンでムッチンムチン!

 全部精力増強食材!

 つまりご主人さまは今晩オッケーってこと!

 ああいえ、違う、違うわ。これは「護衛武官ひとみ」の第1378話『俺の○○○○を超えてイけ』と全く同じ状況じゃないの!

 ひとみはここで安易にベットインからご主人さまのミサイルをダイレクトキャッチしようとして罠にはめられるのよ。

 ふう、危うく全装備(ようふく)全脱ぎ(パージ)して、戦闘態勢にな(おそいかか)っちゃうところだっだわ。


「……何はともあれ、暦さんがリラックスできるよう万全のご準備をさせていただきます」


 私はクールにお辞儀を決めた。

 ええそうよ。目指すはハッピーエンド。

 「護衛武官ひとみ」の第22964話のような、完全無欠のハッピーエンドよ!

文字数少ないけどリハビリで。

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