部活動崩壊の危機 ※三人称
さ、昨日に引き続き投稿……あれ? タイムリープしてる?
おかしいなぁ。吉武は昨日30部を投稿したんだけどなぁ(棒)
あ、感想返しは一切控えさせていただきます。個別の連絡も同様。
それでも負担になるようなら閉じることも視野にいれて活動させていただきますので、申し訳ありませんがご理解お願いします。
その日、三戸・このみは忙しかった。
理由は単純。
「にゅ、入部したいんです!」
「入部届を受け取って下さい!」
「前の部活は円満退部しました! 何卒! なにとぞ!」
この学校でも数少ない男性である、宇野・暦。
彼が放送部に入部したことが何処かから漏れたからだ。
入部してからまだ2日だと言うのに、行動が早いものはすでに入部届まで用意しており、職員室の前で長蛇の列を作っていた。
「入部は受理できませんー。詳しくは明日告知するので帰って下さい」
それら有象無象を振り払うと、このみはスマートフォンを取り出した。
立ち上げるのはグループRINE「妄想部」である。
放送部のメンバー全員が入っているグループであった。
このみは紅葉のような小さな手でそこに文字を躍らせる。
「暦くんの入部がバレました。どうしましょう」
返信がマッハで3つ、返ってきた。
「とりあえず、ぜんいんきゃっかで」
「会長権限で入部を制限いたしましょうか?」
「アタシが物理的にすり潰してあげましょうかん?」
三者三様ではあるが、きちんと考えてくれているらしい内容だ。
最後のはどうかと思うが。
それに続いて生徒会長が言葉を重ねる。
「とりあえず部活動加入者が暦くんを求めて退部することが予測されますので、明日の朝『部活動退部から一年は他部活への入部不可』と告知を出します」
「ないすおっぱい」
「いい案ねぇ。でも、部活動入ってない人はどうするのん?」
「それはわたしががんばる」
「頑張るってどうするんですかー?」
このみの質問に、このみと同じくらい幼い容姿の部長からすぐさま返信が返ってくる。
「にゅうぶしけんをもうける。カメラのつかいかたとか、マイクのしゅるいとか」
「試験をやるならぁ、朗読・アナウンスの実技も良いわねぇ」
「私の後輩を名乗るんでしたら、エレガントでファンタスティックな振る舞いが出来るかどうかも加味して下さいまし」
「だまれおっぱい」
無意味な罵倒が入ったりもしたが、とりあえずそういうことに決まった。
そうと決まれば、とこのみはスマートフォンを操作して、短縮に入れてある番号を呼び出す。
彼氏だ。
違う。
彼氏になってくれたらと一縷の希望を託している、教え子の中で唯一の男性だ。
過去、このみに言い寄ってきた男性は例外なく性犯罪で塀の中にいるのだ。彼が最後の希望と言えた。
「部活動のことでちょっと相談です」
このみはそう切り出すと、入部希望者が殺到してパンクするであろう明日の予想を簡単に告げた。
「そんなに入部希望者、集まりますかね?」
「暦くんは考えが甘いです。ヘタすれば、帰宅部のほぼ全員が入部しますよ?」
電話越しに暦が引いていることを確認したこのみは、ふふんと鼻で笑って言葉を続けた。
「そんなことにならないよう、こちらでも手を打っておきます。頼れる顧問ですかー?」
「ええと、まぁ、はい」
お前がいなきゃ部活には入らなかったよ、と言えない暦をよそに、このみは上機嫌で言葉を続けた。
「そんなわけで、3つほど守って欲しいことがあるんです」
このみが出した条件は簡単なものだった。
1.部活動関係の相談には乗らない。
2.部活動関係の話題はノーコメント。
この2つは暦も簡単に了承したが、最後の一つで眉を潜めることとなる。
「……これ、効果あります?」
「大有りですよー! そんなわけで、明日、暦くんは朝、直接、放送室に来てくださいね!」
***
その日、学校に激震が走った。
一年でも有名な男性、宇野・暦が部活動に加入したという噂があがったのであった。
既に放送部に入ったという情報は広まっており、職員室前では、
「先生! 私、本当にヤりたいことが見つかったんです! どうか退部させて下さい!」
「入部届け! 入部届け下さい!」
「三戸先生はどこです!? 入部届を受け取って貰わないと行けないんです!」
各部活動の顧問と、その部活を辞めたい生徒が押し問答を繰り広げたり、あるいは放送部顧問である三戸・このみに入部届を出そうと必死になっている者の姿も見えた。
挙句の果てに、
「入部届ー。入部届はいらんかねー? 今なら一枚500円だよー」
需要の拡大にいち早く気づいたとある生徒によって、足元を見た商売まで横行していた。
ちなみに入部届はすでに100枚近く売れていた。
とある生徒は語る。
「これで今月の情報料も安泰ね!」
どうやら何らかの事情で金銭的に逼迫していたらしい。
閑話休題。
そんな生徒達でごった返す学校に、ブツッ、とノイズが混じった。
「――?」
数名がその異変に気づいて顔を上げるが、多くの生徒は退部届やら入部届を受け取ってもらうのに必死で、気付きもしない。
しかし、次の瞬間に空気が一変する。
『おはようございます』
声が。
男の声がしたのだ。
凪のように静まり返る学校。
そこに響くのは、少し低めの、しかし艶のある、女子ではあり得ない通った声。
『これから、朝の放送を始めたいと思います。担当は、新入部員の宇野・暦と』
『顧問の三戸・このみです!』
顧問であるだけで男性と二人でいるのか、と多くの女生徒が嫉妬の炎を燃え上がらせるが、相変わらず空気は静謐とも言える静かさを保っている。
合法ロリだから我慢しているのだ。
違う。
待っているのだ。
宇野・暦の次の言葉を。
『さて、今日から始まった朝の放送ですが、初回豪華版として、今回は新入部員である宇野・暦くんに対するQ&Aとしたいと思います』
全員が聞き耳を立てる中、謎のコーナーが始まる。
『第一問。部活に打ち込んでいる女性をどう思いますか?』
『えっと、何かに一生懸命になっている女性ってステキだと思います』
棒読みに近い台詞ながらも、手に握った退部届を懐にしまう生徒が出た。
『第二問。男に釣られて入部する女性をどう思いますか?』
『ちょっとどうかと思いますね。落ち着いて真面目に活動したいですし』
入部届を握っていた女生徒がうつむいた。
『では最後に視聴者サービスですッ! 朝早くから頑張って登校している生徒たちに一言!』
『え? これ、本当に読むんですか?』
『良いから! 良いから早く読んであげてください!』
『――おはよう。早起きなんだね。今日も一日、頑張ろうね。えーと、宇野・暦は朝から部活動を一生懸命頑張る貴女を応援しています』
『以上! 新入部員の宇野・暦くんからでしたー。部活動をきちっと頑張る貴女にはもしかしたら暦くんからご褒美があるかもしれませんね!? しーゆーねくすとたいむ!』
ブツッ、と放送が切れる音がした瞬間、学校が震えた。
直下型の大震災である。
違う。
学校中の生徒が、雄叫びのような声を上げたのだ。
「早起きって! 早起きって! 学校来て良かった!」
「頑張ろうって言ってくれた! もう死ぬまで頑張れる!」
「もうダメ、トイレに――」
「部活頑張る子が好みなんだって! もう泊まり込みで自主練しよう!」
「おはようだって! 耳が幸せッ!」
「朝から男の人の声が聞けるなんて、捗りすぎる!」
「こうしちゃ居られないわ! 授業返上で練習するわよっ!」
「応援してもらっちゃった! もう24時間耐久で捗るしかないわ!」
こうして、学校の部活動存続を脅かす大事件は解決したのである。
なお、ホームルームが始まるまでどのフロアでもトイレが激混みだったのは偶然だと思いたい。
ちなみに今回はいつもどおり(?)季節感ゼロの話です。っていうか本来これだいぶ前に投稿されてるはずの話なんだよね……なんで投稿されてなかったんだろ。




