表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あべこべ世界へようこそ!  作者: 吉武 止少@8/29「捨てられ社畜」モンスター文庫より発売!


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/41

ヴェルサイユ

なかなか更新できずすみません。理由については活動報告にて。


山本:学級委員。設定がガバなので委員長だったり学級委員だったり。

作者:脳みそがガバなのでいろいろごめんなさい。優しくしてください。

「……外出したい……」


 俺のつぶやきにピクリと反応したのは妹の夏希と、何故か「妹ちゃんに勉強教えに来たよ!」とリビングにて勉強会を開いている山本さんだ。


「えーと、どこかに遊びに行くとか?」

「はい! 私、海が良いっ!」


 元気に手を挙げる夏希は可愛いけれどおにーちゃん的に海はマズい。

 何がマズいって、


「いやー、遊びに行くとかブラブラするとかしたいんだけども、どこに行っても珍獣扱いだからなぁ……」


 痴女に遭うこと2回。(逮捕)

 執拗なナンパに遭うこと17回。(逮捕)

 私物の盗難に遭うこと3回。(逮捕)

 無許可で写メられること48回。(厳重注意)

 そして俺の後ろをゾロゾロついてくるのはもう数えるのもバカバカしくなるような回数なんだよね……(厳重注意)

 犯罪者とか犯罪者予備軍を量産しているようで正直ちょっと申し訳ない。

 いやまぁ俺の後ろについて回って、


「クンカクンカッ……! これが男性から吐き出された吐息の匂いっっっ!」


 とか、


「んほぉぉぉぉ!!! 脳に! 脳に染み渡るッ!」


 とか言ってる人達だったから遅かれ早かれ何かやらかしてた気はするけど。

 あ、ちなみに写メの人達はほとんどが撮った瞬間に護衛武官の光さんに物理的なお仕置きをされたあと写メを消されてた。

 一人だけ光さんの捕縛を逃れて俺にタックル(というか無理やり抱きつこうとしたらしい)をカマしてきた痴女未遂に対しては、


「貴女の死因はたった1つ。たった1つのシンプルな答えだ。……貴女は私を怒らせた」


 とかどっかの超能力番長みたいなこと言いながらエグいコンボ決めてました。

 なんかもう痴女未遂が気を失ってるのにコンボを叩き込んで連続技に繋げてたし、最後なんかビームらしき光が見えた気がしたわ。

 1分以上空中でボコられ続けるとかどこの格ゲーだよ。

 というわけで何はともあれ、外出するのに「男」というのは非常に面倒なのだ。


「うーん……確かに、その、おにーちゃん、かっこ良かったりするし……馬並みだし……」


 夏希が頬を赤らめてゴニョゴニョと何かを呟く。

 と、次の瞬間、パァッと顔を明るくした山本さんが夏希を手招きする。


「……!」

「……!? …………!」

「……! ……!」


 顔を赤くしたり激しく身悶えさせながら何事かを相談した二人はいい笑顔で俺の方を向く。


「「いい考えがあるの!」」


 あー、うん。

 だいたい分かった。

 何も分かってないけど少なくともろくなことじゃないのは分かった。


***


「はううううっ!」

「尊い! 尊いよぉ!」

「さすがおにーちゃん! 眩しすぎて見えない!」


 そんなわけで場所は夏希の部屋。

 夏希御用達の化粧台の前で、俺は今、心を無にしている。

 眼の前にある鏡にはビューラーでくるんとカールさせた挙げ句、長さ2倍(当社比)に伸長されたまつげの俺がいる。

 まぶたの端にはよく見ると気づかない程度に色が乗せられているが、これがまた目を大きく見せる効果が高いらしく、プリクラの詐欺画像みたいな目の大きさになっているように感じる。

 肌にはBBだかCCだか知らんけど謎のクリームを塗られて、さらにちょこちょこイジられている。

 FFだったら知ってるんだけどAAもBBもCCも知らん。

 あ、ちなみにFFはファルシのルシをコクーンからパージするとかいう意味不明な横文字ばっかりの奴じゃなくて、神父にCD埋め込まれたミジンコのほうね。

 そういやこっちの世界に来てから続編読んでないけどどうなったんだろう……クワガタでムシキングってあれは別の部か。


「えーと……」


 筆的なサムシングが俺の顔を撫でるこそばゆい感覚が無くなったので二人に視線を向けるが、夏希は真っ赤な顔で俺から視線をそらしてるし、山本さんに至っては静かに涙を流しながら祈りを捧げている。


「なんで女装?」

「おにーちゃんが外出したいって言うから!」

「いやー、流石に無理があるんじゃない?」

「ないよ! 漫画とかアニメでも女装は王道! むしろ覇道!」


 夏希が真っ赤な顔で言い切ると、それに賛同するように山本さんが、


「そうよ暦くん。あの有名な『ヴェルサイユのゆり』だって本質は女装モノなのよ!?」


 ゆり……ばらの対義語はゆりなのか……?

 そこはかとなく納得行かないんだけども、まぁこの世界って何となく基準がテキトーっていうか手抜き感あるしな。

 嬲るが嫐るになってたりとか。


「ちなみにヴェルサイユのゆりってどんな作品なの?」

「中世ヨーロッパが部隊なんだけど、女装して軍人になったオスカーとその従僕をしている安藤の物語よ」


 ……ん?


「えーと、ごめん。もう一回良い?」

「尊い、とうと――」

「いや、戻りすぎでしょ。っていうか祈るの辞めて」


 再び信者と化した山本さんを止めていると、夏希が本棚から漫画を取り出して俺に見せてくれた。


「この左側の人が主人公のオスカー。男の子なのに、母親に女を期待されてたからって女装して軍人として活躍するの」


 金髪巻き毛の美男子? 美少女? が剣を片手にポーズを決めている。

 うん、それは良い。しかしその隣りにいるのは、


「学生服着た明らか日本人顔のこの人は?」

「安藤」


 いや、だから誰だよ安藤。


「安藤はヲタク気質の女の子なんだけど、唐突に異世界転移してオスカーの屋敷で居候になるのよ」


 まさかの異世界転移ですかー。

 俺がパラパラとページを捲り始めると、


「おにーちゃんに似合いそうな服、用意してくるね!」


 山本さんを引き連れて部屋を出ていってしまった。

 どうやら母の部屋を物色するつもりらしい。……怒られても知らんぞー。


 この後、下着まで女物にしようとか言い出した夏希と、悪乗りしてTフロントの下着をアマゾンで検索していた山本さんを正座させて超叱ったのはまた別の話。

 Tフロントってなんだよ。どういうことだよ。

 そして山本さんが帰ってから化粧してカマっぽい見た目のまま説教してたことに気づいて本気でへこんだのはもっと別の話。

ホワイトデーネタだと思った?

残念! バレンタインだのホワイトデーだの軟弱なイベントは興味ないね!

意訳)吉武の生活にはそんなイベントは関わりがなく、今さっきホワイトデーなのを知りました。


か、悲しくなんてないんだからねっ!!!


百合、薔薇の表現について暦は知りません。なので違和感を感じています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ