続・テスト ※一部三人称
あけましておめでとうございます!
何と!
みなさまのお陰でモーニングスター大賞二次選考に……あれ? この話題って年末にすべき話題じゃね?
っていうかフツーにモーニングスター大賞落ちました。
まぁ俺よりも面白いのが落ちてたから順当と言えば順当なんだけども、落選が執筆スピードに関わってるんだよ?(言い訳)
あと仕事忙しくなってきたし(言い訳)、流行に乗ってインフルエンザA型にも掛かったんだよ?(言い訳)
筆は相変わらず進みませんが今年も何卒よろしくお願いします。
あ、あとここんとこヘコむ出来事続きなので優しくして下さい。
読者様の半分は優しさで出来てるって信じてます。
「それじゃ、お茶淹れてくるね」
時津はその一言とともに席を立った。
ここは宇野・暦のクラスメイトである時津・亜希子の自宅――その自室である。
集まっているのは家主でもある時津・亜希子に、高橋・要、山本・雫、細谷・みなみ、宇野・暦というメンバーである。
名目としては週末に控えている期末テストの勉強会。
主催――というか全員の目的である暦はその目的を信じて疑わずにいるが、他の四名からすれば違う目的がある。
捕食である。性的な意味での。
……違う。
暦と仲良くなり、あわよくばお近づきになったりお付き合いしたいと考えているのだ。
場合によってはお付き合いではなく雄突き愛ならばなおのことよし、と思っている節もあるのだが、流石にそこまで考えてはいない。
なにはともあれ、まずは暦と仲良くなること。
それが四人の一致した思いである。
とはいえアピールの方法はかなり違いがある。
例えば家主たる時津・亜希子は部屋の清潔さや細やかな気遣いで「デキる女」アピールをしている。
それに対して山本・雫は勉強を教えることで「デキる女」アピール。
高橋・要はこの勉強会を主催することで「デキる女」をアピールしていた。
そして。
「さあて、それじゃあ始めますか」
細谷・みなみはまた変わった方法でアピールを試みている。
「えっと、細谷さん? なんで立ち上がってるの?」
暦の質問に、細谷はニヤァ、と黒い笑みを浮かべる。
「せっかく暦くんも女の子の家に来たんですから、家探しとか興味ありますよね?」
「えっ」
「えっ」
「えっ」
三人が驚きの声をあげる中、細谷はすすす、と手慣れた様子で部屋のクローゼットを漁る。
そこにあるのは、部屋にいる女子ならば誰もが知っているものであり、また、動揺するものである。
「ちょっ」
「おまっ」
つまりはエロ本であった。
暦が「うわぁ」とドン引きした顔で見るのはやたら筋肉質な男性がブーメランパンツのみを着用して体をくねらせたポーズで写っている表紙である。
もちろん乳首も星印で隠されているが、山本と高橋からしてもかなり強烈な内容であった。
『魅せる漢の黒乳首25連発』
『まさかのタケノコサイズ!? ギリギリモザイクもっこり!』
などという煽りに思わず反応しそうになる女子二名だが、意中の男性が近くにいることに気づき、思わず固まった。
「おやぁ、顔を赤らめたりするかと思ったんですけど、暦くんは意外と耳年増なんですかね?」
反応できないのを良いことに細谷がエロ本のページに手をかけ――
***
スコォン、といい音が響いた。
部屋に戻ってきた時津さんが細谷さんを思い切り叩いたのだ。
うん、グッジョブ。
何が悲しくてガチムチマッチョの全裸なんか見たいと思うんだよ。
っていうか、
「おやぁ、顔を赤らめたりするかと思ったんですけど、暦くんは意外と耳年増なんですかね?」
って、この世界の男は男の裸を見て興奮する特殊性癖でもあるのか?
いや、単純に恥ずかしいとかそんな感じか。
そんなことを考えていると、時津さんが真っ赤な顔をしたまま細谷さんをマウントしてタコ殴りにしていたのでとりあえず止める。
いや、別に止めなくても良い気がしたけど、殴り方がガチな感じすぎる。
「きょ、暦くん、あの、その、違うの! 本当に違うにょ!」
時津さんは半泣きになりながら目を泳がせている。
「とりあえず落ち着いて。何が違うの?」
「だから、その、あの、そのエロ本は私のじゃないの! そもそも私そういうのに興味ないし、あ、でも暦くんに興味ないってわけじゃなくて、えーと、だから、その、」
時津さんは泣きそうになりながらも、
「その本は、みなみが私に預けてた奴なの! 私は頼まれて仕方なく預かってただけで、私は関係ないの!」
みなみ……細谷さんか。
「あーうん。『ドSなご主人様に尽くす108の方法』とか『妄想写真で捗る! セルフ痛めつけ!』とか特集が細谷さんっぽいし信じるよ」
「良かった……暦くんに誤解されてたらみなみを殺すところだったよ」
物騒な対応だなぁ……まぁ細谷さんがいないほうが世界は平和になりそうだからあんまり突っ込まないけど。
っていうかどっちにしろすでにボロ雑巾みたいな有様だけども。
「さ、亜希子も落ち着いたことだし、勉強しましょ」
委員長の言葉に、皆が座卓を囲んで筆記用具やらノートやらを取り出し始める。
……。
…………。
……………………………………………………。
いや、細谷さん無視で良いんですか?
「暦くん、集中しましょ」
「そうだよ暦くん。あの生ゴミは後で処理するから気にしないで!」
「あ、暦くん。私、ここがわからないんだが、教えてもらえないかい?」
見事な連携で細谷さんから話がずれた。
まぁ良いか、と質問をしてきた高橋さんの参考書を覗くと、そこにはシャーペンで『もし嫌になったら2人で抜け出そっか』と可愛い丸文字が書かれていた。
狩人だ。
きっと直接対決から罠までを自由自在に使いこなす狩人なんだ。キリンだろうが老龍だろうが簡単に狩れる狩人なんだ。
ここでもし俺が応じたりなんかするとテレレンテレレンテレレンテレレンテテテレテンとか言いながら回されて上手に焼けちゃうんだろう。
高橋さんのメッセージには気づかないふりをして参考書の問題に目を通す。
「ああ、ここの答えは解なしだよね。答えるときは『題意より』って付けとくといい感じに誤魔化せるよ」
「そ、そうか。解なしか……解、ないのか……」
微妙に落ち込んでるけど知らない。
自己責任自己責任。
自分の勉強に戻ろうと視線を切ると、委員長と時津さんが頭を突き合わせていた。
「質問すると優しく教えてくれるみたいね……!」
「ボーナスタイムってことかしら……!?」
「まずは質問内容を精選しないと」
「そうね。……いや待って。質問によっては手とり足取り教えてくれる可能性も……!」
「おしべとめしべがごっつんこハローって感じの質問を……!」
2人が何かをわかりあったのか視線を合わせて頷いていた。
「さて、そろそろ帰ろうかなー」
「委員長、質問とか迷惑だし暦くんを集中させてあげようよ」
「そうね。ここからは15デシベル以下の音量で会話しましょう?」
よし。無事に切り抜けた。
それからしばらくの間は、シャーペンをカチカチする音と文字を書く音だけが響いていた。
いや、高橋さんのすすり泣く声がきこえたような気もしたけど気のせいってことにしとこう。
いつぞや学校でも1人だけ凹んでたし、打たれ弱いのかな?
このみ先生とかだったらこんなのジャブですらないレベルなんだけども。
まぁこのみ先生と比べること自体かわいそうか……。
ともかく勉強していると、不意に背後に気配を感じた。
見れば、細谷さんが復活していた。
細谷さんは腰を左右に振るような微妙に気持ちの悪い動きをしながら俺に近づいてきて、くるっとターンしながらビシっと指を俺に近づける。
「はい、じゃあ質問! ウニの受精についてなんだけど――」
質問が終わる前に時津さんが細谷さんの人差し指を折り曲げた。
逆側に。
「さ、暦くん集中しましょ」
こうして危ない橋を渡りつつも勉強会は無事に終了した。
一名ほど物理的に無事じゃないのがいるけど自業自得だし知らない。
「指がっ! テスト前なのにペンを握る指がぁッ!」
まぁ警察にタレこめば豚箱直行コースだろうしそのくらいは我慢してくれ。
っていうかー、有り体に言うと、いい加減にしろよ? 的な?
というわけで酷い前書きで始まりましたが、今年もどうぞよろしくお願いします。
低速不定期更新でも見放さないでいて下さって感謝です。




