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あべこべ世界へようこそ!  作者: 吉武 止少@8/29「捨てられ社畜」モンスター文庫より発売!


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テスト

ついに年末になりました。

が、本編内では夏に突入してます。季節感丸っと無視してますが、気にせず読んでいただけると幸いです。

 7月に入って、気温が一気に上がったこともあって連日絶好のアイス日和である。

 「アイスは一日一個まで」という宇野家・鉄の掟がなければダース単位で食べたくなるくらいには暑い。

 まぁ夏希と半分こすることで一日につき2種類は味を楽しめるんだけれども。


「夏希ー。今年の期間限定アイス、イカなっとう味とガーリックチャーハン味があるけどどっちが良いー?」


 学校帰り。

 俺はダイニングキッチンへと直行。冷凍庫を漁りながら声を上げる。

 普段ならビシっと指定をして撫でくりまわしたくなるくらいはしゃぐはずの夏希はしかし、


「んー……んー?」


 煮え切らない返事で心ここにあらず、といった感じだった。

 思わずリビングを覗き込むと、ぺたんと床に座って座卓に向かう夏希がいた。

 生成りのキャミソールに中学校指定のハーフパンツというザ・無防備な格好に思わずつばを飲むが、まぁ何かするわけでもないので後ろから覗き込むように夏希の手元を見る。

 偶然にも緩んだキャミソールからシャイなサイズの胸元が見えてしまうのは事故だから仕方ない。


「と、勉強? 宿題か?」


 夏希は理科の教科書を読みながら、ワークを進めているようだった。

 眉を微妙に寄せて思案顔のまま俺へと視線を移すと、夏希ははぁ~と大きく息を吐きながら座卓に崩れる。


「違うよー。もうすぐ期末テストだもん。普通にテスト勉強」


 ……てすと?


「おにーちゃんは良いよね。テスト受けなくても良いんだから」

「え? 俺、テスト受けなくて良いの?」

「え? 受ける意味ないじゃん。進学は思いのままだし、何より元々自由登校なんだし」


 そうか。

 そういや一応学校には行ってるけど、男性は自由登校なんだっけ。

 でもテストも受けないとかちょっとフリーダム過ぎるような……。


「俺も勉強しようかな」

「え? なんで?」

「いや、テスト受けようかと思って」


 理由は単純。

 せっかく自由意志で学校に行っているのだ。授業を受けたからには理解度を確認したいのだ。

 結果とか気にしなくていいってのも気楽に受けられる理由の一つになっている。

 テストと言われて、元の世界でギャル系で巨乳の可愛い子がテストの度に「脳みそ空っぽだよね」「胸に取られて頭に養分回ってない」とか悪口言われてたのが頭を掠めたけれども。

 まぁこの世界、男性に激甘だしテスト結果如きで悪口を言われたりはしないと思うけれども、元々の俺の言動がアポカリプスなのでもしかしたら悪口を言われることはあるかも知れないな。

 うん、やっぱりちょっとはテスト頑張らないとな。

 ……ちょっと待てよ。

 女の子が「胸に取られて頭に養分回ってない」って言われるなら、男は?

 ……。

 …………。

 もしかして、股間にぶら下がってるジョニーに取られて頭に養分回ってないとか言われるのか?

 なんか俺の価値が本格的に下半身にしかないような評価だな……。

 うん、ちょっとどころか普通にテスト頑張らないとな。


「テスト受けるのは良いけど、そもそもおにーちゃんっていつがテストなの?」

「んー、まぁそろそろだと思うからちょっと調べてみる」


 スマホを取り出して、とりあえずRINEを起動する。

 うーん。

 やっぱりここは委員長の山本さんだろうか。


『突然ゴメン! もうすぐテストだと思うんだけど、うっかり範囲とか日時忘れちゃった。良かったら教えてほしいんだけど』


 速攻で電話が掛かってきた。


「あー、もしもし?」

『もしもし暦くん!?』

「そうだよ。どうしたの?」

『テストの範囲とか日時とか、折角だから手取り足取り教えようと思うんだけど、いつ家に行けば良い!?』

「……」

『実技!? 実技なのね!? 良いわ、保健体育を中心に――』

「あれー。電波悪いなー」


 切った。

 テストの範囲にも日時にも手とか足を取るような要素はどこにもねぇよ。

 聞いた手前ちょっと悪いことした気がするけど面倒臭くなりそうだし、何よりこの世界の女子のハイパー肉食モードに触れると俺のSAN値がガリガリ削られるのでこれは仕方のない処置である。

 まぁ電波悪いってことにしたし、明日学校で謝れば問題ないだろう。

 さて、じゃあ誰に聞こう、ということでRINEのリストを上から眺めると、一番近くに高橋・要の名前があった。

 ボーイッシュな髪型が特徴のクラスメイトだ。

 正直、ハイパー肉食モードにならない女子には心当たりがないので総当りでいくしかないだろう、と意を決して文章を送信する。


「突然なんだけど、今良い?」

『いいいいいいいいいいいよ!!!』


 いや、全然良くなさそうなんだけど。

 でもマッハで返信来たから暇なのか?


『大丈夫? 忙しいなら別に無理しなくて良いよ?』

「だいじょぶ! 暦くんからのRINEに手が震えて美味く撃てないだけだから!』


 誤字すげぇな。

 まぁ誤字くらいならハイパー肉食モードに比べれば全然許容範囲だ。


「テストの範囲と日時を教えて欲しいんだけど、だいじょうぶ?」

『もろちんだよ!』


 ナチュラルにセクハラされた。


『ごめん打ち間違えた! もちろんだよ!』


 謝罪とともに、テスト範囲のプリントを写メったものが添付されてきた。

 って、あれ?


「テスト、今週末なの!?」

『そうだよ! 知らなかたの?!』

「マジか……全く知らなかった……教えてくれてありがとう」


 ため息とともに返信して、頭を抱える。

 授業自体は真面目に受けてたからまったく分からないってことはないだろうけど、テスト勉強無しで良い得点が取れるほど地頭は良くない。

 どうしたものか、と思案していると高橋さんから再びRINEが送られてきた。


『暦くん、もしかしておちんこでる?』


 セクハラどころじゃねぇ。

 もっと激しい何かだ。


『ごめん打ち間違えた。おちこんでる?』


 なんだろう。

 随分ピンポイントな打ち間違えである。 

 とはいえ、高橋さんはどっかのドドドドドMと違ってまともな人なのでわざとではないだろう。


「ちょっとね。完全に忘れてたから」

『もし良かったら、皆で集まって勉強とかする?』


 勉強会、か。

 悪くはないかもしれない。

 皆で集まって、というからには二人きりになるようなことはないだろうし、重要そうなポイントを聞いたり難しい問題の解き方を確認させてもらえるだけでも随分違うと思う。


「人数が集まりそうなら俺も参加しようかな」

『わかった! すぐ皆に聞きて見るね!!! また連絡する!』


 うーん、やっぱり誤字が目立つな。

 まぁ良いや。

 とりあえず付け焼き刃でも良いからテスト勉強頑張ろう。

 そう決意すると、カリカリと理科を頑張ってる夏希に視線を向け、イカなっとう味のアイスを差し入れることにした。


***


『暦くんと勉強会をします。日にちは明日~テスト前日までの放課後で、暦くんの都合がいい日。場所は参加者の誰かの自宅を予定してますが、参加者は今のところ私以外決まっていません。参加に関する話し合いをするので、希望者は明日、午前5時半に教室集合でお願いします』


『朝早いなぁ』


『とはいえ暦くんが来る前に決着を付けないと酷い泥仕合になるのは目に見えてるしね』


『問題は合法ロリが割り込んでこないかどうかだ』


『教員は一部の生徒に肩入れするのは禁止だから。さすがにテスト関係では割り込んでこない……と思うんだけど』


『不安だよね。まぁ流石に午前五時半とかだったらソフト部くらいしか活動してないだろうし、このみ先生もいないんじゃない?』


『わかった。とりあえず五時半集合で決定で良いかな』


『異議なし』


『問題なーし』


『絶対参加します』


『ところで質問なんだけど……話し合いに参加しない人は、勉強会にも参加できない感じ?』


『そうなるね』


『当然でしょ』


『ククク。無事に校門までたどり着けると思うなよ?』


『!?』


『話し合いに参加させなければ敵が減るのか!』


『ちょっとトラバサミ買ってくる』


『ちょっと対人センサー付き地雷買ってくる』


『ちょっと学校に泊まり込んでくる』


『その手があったか!』


***


 翌日。

 教室のドアを開くと同時に暦は首を傾げた。


「おは、……あれ? 欠席者多くない?」

「ああ。なんかちょっと朝から有志がレクをしてて怪我したらしくて、14人が今、保健室にいる。あと深夜の学校に不法侵入しようとしたとかで、9人ほど生徒指導室に呼ばれてる」

「ふーん?」


 クラスの半分以上がいないという異常事態にも関わらず教室にいるクラスメイトが全員、いい笑顔であることに疑問を覚えつつも、暦は席に着く。


「……テスト前なのに遊んでるなんて、皆余裕なんだなぁ」


 自分が遠因であることなど、知る由もない。

ガーリックチャーハン味とイカなっとう味のアイス(当たり付き)


予定では夏休み突入前後に部活動編クライマックスの予定です。まぁ日常系コメディを目指しているので授業参観編と同じく途中に単発系のネタが入りますが。


ちなみに高橋・要も山本・雫も個別でRINEしてますので、「お・か・せ」には引っかかってません。(というかバレてません)

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