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あべこべ世界へようこそ!  作者: 吉武 止少@8/29「捨てられ社畜」モンスター文庫より発売!


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愛鳥週間

作者は鳥が好きです。猛禽とか超可愛い。

でもうずらとか丸っとした感じのも大好きです。

「おじゃましまーす」


 そんな言葉とともに上がるのは、私のクラスにいる唯一の男の子、宇野・暦くんのお宅だ。

 といっても、今日は暦くんに会いに来たわけじゃない。

 しばらく前に妹の授業参観で友達になった、暦くんの妹と遊ぶために来たのだ。

 もちろん、暦くんに会えるのであればそれは幸せだけど、今日の目的は夏希ちゃんと遊ぶことなのだ!

 だからお土産の手作りドーナッツが私達だけじゃ食べきれない量があるのは私が料理が好きな家庭的な女の子なだけだし、今日の服装を選ぶために半日以上掛けたのも私がおしゃれなだけだし、一応勝負下着なのは、えーと……まぁそういうことだ。

 ちなみに今日は私だけではなく、妹の詩織も一緒である。

 まぁ夏希ちゃんは元々詩織の友達だし、二人きりだとちょっと緊張するからね。


「あ、雫さん! しーちゃん! あがって下さい!」


 スリッパを用意してくれた夏希ちゃんは、ひまわりみたいな笑顔で出迎えてくれた。

 うーん、さすがに暦くんの妹だけあってすっごい可愛い。

 なんだろう。

 遺伝子的なものが私達山本姉妹とはレベルが違うんだろうね。

 そんなことを考えていると、とりあえず、とリビングに通された。

 そこにいるのは、


「こここここ暦くん!? お、おはよう!」


 ソファに埋まるように座ってスマートフォンをいじる暦くんだった。


「んー? んー、おはよう」


 あれ? 元気ない?

 元気がないっていうか、覇気がない、の方がしっくり来るかもしれない。


「暦くん、何かあったの?」

「あ、おにーちゃんのことは気にしないでください。愛鳥週間なんです」

「「愛鳥週間?」」


 妹の詩織と思わず言葉が合ってしまった。


「愛鳥週間って、ゴールデン・ウィーク辺りにポスター書かされるアレ?」

「なんでこの時期に?」

「ああ、違うんです。ちょっとおにーちゃん! 今日は私がリビング使うって言っといたじゃん!」

「んあ? ごめん」


 あ、暦くんが行っちゃう!

 思わず呼び止めそうになるけれど、夏希ちゃんの手前ぐっと堪える。

 ここで行動に起こすと淑女協定の『お・か・せ』を破ることになる。

 節度を持った言動を取るべきなのだから。


「なっちゃん。愛鳥週間って何?」


 対面式のキッチンで飲み物を準備してくれているらしい夏希ちゃんに詩織が訊ねる。


「おにーちゃん、昔からああなんです。定期的に鳥に触れたくなるというか、鳥を()でたくなるというか」

「え、何それ?!」


 初耳!

 これは淑女協定に流すべき情報ですよ!


「なんか意外だね。暦さんってすっごい大人っぽいイメージなのに」

「そんなことないよ。しーちゃんは授業参観しか見てないでしょ? 家だとだらっとしてるしガード甘いしもうすごいんだから」


 紅茶を淹れてくれた夏希ちゃんはそれを配ると、私の手土産であるドーナッツを皿に取り分ける。


「高校でも結構とんでもないことやっちゃってません?」

「あ、えーと……」


 うん。

 確かにすごいって言えばすごいけど、別にだらけてるわけではないかなぁ……。


「良い意味でスレてないっていうか、ガードが甘いのはすっごいわかるかな。女は猛獣だってわかってないような気もする。けど、だらっとはしてないかな。誰にでも優しいし、かっこいいと思う」


 私の意見に夏希ちゃんは嬉しそうな、それでいて若干怒ったような複雑な表情になる。

 夏希ちゃんも暦くんのこと大好きだもんね。


「それよりなっちゃん。愛鳥週間についてくわしく教えて!」

「あー、うん。っていっても、『コキンメフクロウ超かわいい』って言いながらフクロウカフェまでの行き方調べたり、タカとかワシとかの画像眺めてニヤニヤしてるだけですよ?」


 何それ超可愛い。

 超可愛い!


「でも暦さんってかっこいいし、鳥を可愛がってるのとか絵になりそう」

「そうかなぁ? まぁ似合わないことはないと思うけどさ」


 夏希ちゃんはそう言うと紅茶を一口。そしてプレーンタイプのもちもちしたリングドーナッツを取り出してパクリ。

 詩織もそれに倣ってココナッツパウダーがたっぷり掛かったドーナッツを選んだので、私も適当に選ぶ。

 生クリーム入りの、穴のないドーナッツになった。


「でもおにーちゃん、ちっちゃい頃は愛鳥週間になると雀を追いかけて迷子になったり、カラスを触ろうとして回収待ちのゴミ袋に突っ込んだりしてたよ? 雫さんも流石に引きますよね?」

「そうねぇ。生ゴミはどうかと思うわ。まぁ可愛いとも思うけどね」


 よっしゃあ有力情報ゲットォ!!!

 これは淑女協定が捗る!


***


 ~その夜。とあるグループラインにおける会話ログ~


『新情報入荷』


『MAJIDE?』


『本気とか書いてマジと読む』


『服脱いだ』


『パンツ脱いだ』


『解脱した』


『解脱!? まぁ良いか……はよ! 委員長はよ!』


『情報1。暦くんは鳥が好き』


『……ふぅ』


『捗ったわー』


『鳥を可愛がる美少年……ロマンスが溢れ出しそう……むしろ有り余りそう!』


『早くない? 情報2を早く』


『捗りつつも続報を待ち望むスタイル』


『情報2。時折、とてつもなく鳥を愛でたくなる期間があるらしい』


『ちょっと山行ってくる』


『ちょっと草原行ってくる』


『ちょっと海行ってくる』


『捕獲!? 捕獲に行くの?!』


『ちょっと焼き鳥屋行ってくる』


『それはお腹減っただけじゃん! っていうか暦くんがショック受けるかもしれないから明日からしばらく鶏肉は禁止ね!』


『同意』


『ごもっとも』


『当たり前』


『玉子も目に見える形では止めた方が良いかな』


『良い気配り!』


『でも、鶏肉を食べるってことは、私達の身体を作るタンパク質になるってことでしょ? 朝ご飯とか夕ご飯に頑張って食べ続けようかなぁ……』


『?』


『??』


『???』


『大前提・暦くんは鳥が好き

 小前提・私の身体はタンパクで出来てる

 結論・暦くんは私の身体が好き』


『調子のんな』


『ふざけ』


『ぶっころ』


『いや、そうじゃなくて。そういう妄想をするだけでご飯が3杯はおかわり出来るんじゃないかと思いまして』


『天才』


『優勝』


『とりあえず朝夜は鳥オンリーにしようかしら』


『ネットで鶏肉20Kg発注した』


『情報3。暦くんは今、その期間に入っています』


『!?』


『!!』


『!!!!!!!!!』


『クラスで動物園とかフクロウカフェに行く計画立てない?』


『いきます。イキます』


『アイスの雪辱は忘れていません。次は必ず勝ち取ります』


『フクロウカフェはアイスの二の舞いになるから動物園が良いと思う』


『エリアごとに班分けしようか。ホロホロチョウのいるエリアは是非とも行きたい!』


『なんでホロホロチョウ?』


『鳥言葉が”夫婦の愛”だから』


『ちなみに、

 シュバシコウ=子宝

 ツバメ=幸福の予感

 アカショウビン=熱愛

 とか色々あります』


『調べたらマジだった!』


『ちなみにクイナの”秘めた思い”とかもオススメ! とりあえずホロホロチョウにかぶらないようにお願いします!』


『鳥言葉って! 鳥言葉って何!?』


『誕生鳥とかも在るからね! 花みたいなもんだよ』


『っていうかそんだけ鳥言葉に詳しいとかどんな趣味だよ』


『?』


『?』


『あれ? 急に反応がなくなった?』


『鳥言葉マスターの反応が……消えた?』


『暦くんと趣味が合うとか思って捗ってるに一票』


『当選』


『他に理由が存在し得ない』


『今、塾の子とかで参加できてない子がいるから詳しい話は十時半から改めてしよっか』


『賛成。寝てる人はどこの班でも文句言わないこと』


『イエスマム! 作戦開始はヒトマルサンマル! ヒトマルサンマルであります!』


『漲ってきた』


『とりあえず十時半まで火照りを沈めてくる』


『じゃあまた10時半に!』


『『『『『『『『『『『『『『『『『『『『了解』』』』』』』』』』』』』』』』』』』』

暦が出席する前提の話し合い。断られたら女子だけで行きます。仲良しなんです。


もうちょっとだけ続くんじゃ。(※予告は断りなく変更する場合がry)

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