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お前の常識非常識ィ!

ウルトライージーモード(確信)

 スマホでいろいろ調べた結果分かったことがある。

 俺はショックにうなだれながらも頭の中で情報を整理していく。

 まず最初に元の世界と大きく違うのは男の出生率である。

 染色体仕事しろ、と言いたくなるが、男が生まれる可能性は約30分の1。それも、性欲が酷く減衰した、草食系ど真ん中な男が多いらしい。

 種の保存のためというか、男性保護の観点から、公共サービスから法律に至るまで基本的に男性はものすごく優遇されている。まず、男性に死刑は存在しない。

 その代わりに姦刑という週に1回、性行為を行わないと行けない刑罰があるらしいが元の世界の感覚から言えばかなりのご褒美である。ちなみに勃たないと困るので相手は美人が多いそうだ。

 ……といっても姦刑はこの世界、草食系ど真ん中な男にとっての極刑に等しいらしいが。

 次に法律に関してである。 

 基本的に男性優遇が基本であり、男が「セクハラされた」と申告すればすぐにでも女性は社会的に死ぬらしい。元の世界でも痴漢は社会的に死んでいたが、この世界では申告された瞬間に拘置所に放り込まれ、刑罰が確定するまではそのまま勾留され続けるというだけでも苛烈さがわかる。

 というか事実かどうか確実にわかる証拠(動画とかね)がない限りは必ず有罪になるらしい。

 そしてこれが俺にとって一番重要な法律になるのだが、結婚に関してだ。

 この世界では重婚が当たり前であり、男は妻一人に付き月々10万円の給付金を受け取れるほか、籍を入れてなくても関係を持った女性が妊娠・出産する度に祝い金名目で5万円もらえるらしい。ちなみに俺や夏希もその祝い金目当てで父が母と関係を持って生まれたらしい。もちろん籍は入れていない。

 養育義務は男にはないので母が一人で切り盛りしているが、俺という男児がいるために政府からかなりの補助金が出ているらしい。

 なんだその制度。

 そしてここからが本題なのだが、男性のワガママはだいたい全て許容される。

 例えば、俺が妹と結婚したいと言い出せば、妹の同意さえあれば簡単に通るらしい。

 もっとも、流石に兄妹と結婚する場合はそれ以外に5人以上の妻を娶る必要があるようだが。


「……これは本格的に計画すべきかも知れない」


 なにせ女からすれば「男を見た=幸運」であり「男と話した=幸せの絶頂」らしいのだ。

 妹を正妻として立てることになろうとも結婚したい女性なんてごまんといることだろう。

 そういった女性を探してハーレムを形成するというのも悪くないかも知れない。いや、夏希が嫌がらないことが前提だけどね。

 夏希が嫌がるようなら俺は生涯独身で良いや……。

 閑話休題。

 この世界の女は男との出会いや触れ合いに飢えている。

 それこそ罵倒や侮蔑であっても触れ合えれば幸運と思えるほどに。

 俺のスマホに入っている通信用アプリのRINEでも、


「飯。弁当。明日用意しとけ。手作りはキモいからどっかのデパ地下で買ってこい」

「調理実習の食材買っとけ」


 などという鬼畜のような文言が飛び交っており、それに対する返信が、


「頼ってくれてありがとう! できるだけ美味しそうなもの買っていくね! またいつでも連絡して!」

「もちろん買っとくよ! 調理も全部やるから暦くんは心配しないで!」


 などという媚に媚びた返信が返ってきていたのだ。

 っていうかどんだけ鬼畜だったんだよ俺。

 ちなみに暦は俺の名前だが、返信の返信として、


「名前呼ぶなキモイ死ね」

「ごめん。次から気をつけるから嫌いにならないで!」


 という気が違っているとしか思えない会話が繰り広げられていた。

 まぁ男性に対してイージーモードにも程がある世界だし、蝶よ華よと育てられればそうなるのも普通なのかなぁ。

 なんかものすごくいたたまれないから今日から学校では気をつけよう。

 ちなみに俺は高校1年生だ。

 ここまでイージーモードなら別に中卒でも小卒でも問題ない気がするが、「女性との交流の機会を増やす」という名目で男は大学まで進学することが義務付けられている。

 といっても入試は名前を書ければパスできるし一日足りとも出席せずとも卒業まで確定とのことだったが。

 さて、夏希が捗ったこともあってそろそろ学校にいく時間だ。

 俺は乗り物酔いが酷いのでバス通学できず、結構な距離をチャリで通学しているのだが、


「こーちゃん、車だそうか?」


 朝は弱いらしい母――といっても見た感じ20前半にしか見えない美人だ。多分夏希の美人は母の遺伝である――から心配そうな視線を向けられた。


「大丈夫だよ、母さん」


 車通学とか重役かよ俺は、と内心でツッコミを入れたが、母さんはびくりと肩を震わせた。

 そして信じられないものをみたような顔をして、


「もう一回言ってくれる?」

「もう一回? ――大丈夫だよ、母さん」


 俺の言葉に滂沱、という表現が相応しい涙を流し始めた。

 その姿に俺のみならずすっきりした表情でトーストを頬張っていた夏希もぎょっとするが、母さんはそんなことは気にならないらしく近所迷惑なレベルで声を張り上げた。


「こーちゃんがお母さんって! 母さんって呼んでくれた!!!」

「? それって普通じゃないの?」


 だって母さんは母さんだし、と続けようとしたところで夏希も、


「おにーちゃん、中学生になった辺りからお母さんのことおい、とかお前とかしか呼ばなかったのに……今日はほんっとーに変だよ?」

「変じゃないわ! お母さんすっごい嬉しい! もう仕事も今までの10倍はがんばれちゃう!」

「過労死するから程々にね」

「こーちゃんが心配してくれた! これなら20倍はイケる!」


 イケねぇよ。

 何を言っても無駄そうだったので諦めて学校に向かうことにした。


「夏希、途中まで後ろ乗ってくか?」

「おおおおおおにーちゃん!? なに言ってるか分かってるの!?」


 夏希よ、お前もか。


「嫌なら別に良いけど」

「嫌なんて言ってない! 乗ります! 乗せてください!!!」


 やたら必死な夏希も可愛いので後ろに乗せて通学することにした。

 二人乗りは基本的にダメらしいけど、男だと見逃されるとか本当にこの世界の法律はどうかしてる。

 まぁ二人乗りしてる俺がいう台詞じゃないけど。

 ちなみに通学中はスーツ姿のお姉さん達やら女子学生やらにとてつもない好奇の視線を浴びせられたことは言うまでもない。

 夏希にはそれと同じくらいのレベルで殺気を含んだ嫉妬の視線が突き刺さっていたが、


「おにーちゃんの香り……甘いよ、甘いよう」


 幸せで顔が溶けていたので特に実害はなかったことだけは記しておく。

姦刑=羨ま死刑?

しかしこの性欲具合だと腎虚になるような……


修正

 妹を正妻として立てることになろうとも結婚したい女性なんて五万といることだろう。

→妹を正妻として立てることになろうとも結婚したい女性なんてごまんといることだろう。

ご指摘ありがとうございました!


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