放送部
人
(゜Д゜)<ぷるぷる。ぼくエロい作者じゃないよう……
「ぶいんをしょうかいします」
そう言って部室――職員室の脇にある放送室――に呼ばれたのはとある放課後のこと。
急だな、とは思ったものの、元々体験入部で活動に参加する予定だったので文句はない。
ああ、文句はない。
ある一点を覗けば。
「部員の越後屋・薫子ですわぁ! 以後お見知りおきを!」
なんで空気読めない魔乳生徒会長がここに居るんだよ……。
「かおるこ。KYだから、むししていいよ」
「ちょっと、みみ! 私のことをまるで空気が読めないみたいに、」
「みたい、じゃなくてよめない。ルビふっててもよめないレベル」
丸山先輩がばっさりと切り捨てると、薫子先輩は魔乳をぶるんぶるん揺らしながらショックを受けていた。
きっと魔乳がショックアブソーバーの役割を果たすんだろう。
だから空気読めなくても問題ないんだ。
「つぎ」
容赦なくそう告げた丸山先輩の視線の先には、2メートル近い巨体に筋肉をみっちりと搭載していそうな世紀末覇者がいた。それもただの世紀末覇者ではない。
メイク濃い目の世紀末覇者だ。
「二年の藤沼・敬子よん。見て分かる通り、女性だからよろしくねん」
いや、見てわかんねぇよ。
黒王号に乗って登下校しそうな顔してるくせに何言ってんだよ。
「けいこ。なぜかおとこにまちがわれることがおおい。でんしゃでもまれたりするらしい」
「そうなのん。失礼しちゃうわよねん。仕方ないから喋り方とかメイクをフェミニンにして対応してるわん」
つまりあれか。女になりたい男、ではなくて。
女になりたい男みたいな女、ってことか?
わかりにくいわ!
っていうか電車で揉まれるって……たぶんアレだよね。
男性的なサムシングしか持っていないエクスカリバーのことだよな。
「あっ、でもぉ、きっと彼氏が出来ればアタシも女らしく見えるわよねぇん?」
期待に満ちた目で俺を見つめる世紀末覇者。
俺は伝承者でもなければ義弟でもない。死闘は俺の居ないところでやってくれ。
そして一片の悔いも残さず成仏してくれ。
「いちねんはひとりけっせき。いじょう」
「以上じゃないですよーう。顧問! 顧問忘れてますよーう!」
「……こもんのみのりせんせい。いじょう」
「おざなりですねー! 暦くんの担任で、暦くんの顧問でもあるこのみですよー! 頼れる大人の女性として、何でも相談してくださいね!」
「……最近、担任が性的な視線を向けてくるんですけど」
「生徒会長として私が相談に乗りますわよ?」
「ストップ! ストップですよ暦くん! さすがに懲戒免職になるから止めましょう!」
合法ロリが慌てたところでほう、と息をつく。
顧問は合法ロリ1号、三戸・このみ先生。
部長は合法ロリ2号、丸山・みみ先輩。
そして部員に世紀末覇者こと藤沼・敬子先輩と、魔乳KYこと越後屋・薫子先輩。
……ずいぶん濃い部活に入ってしまったようである。
一年生も一人いるらしいけれど、この分だと期待は出来そうもない。
類は友を呼ぶって言うしな。
……アレ?
俺も同類?
いや、まさかな。
「それで、放送部って何をするところなんですか?」
「んっふっふっふ。良い質問ねボウヤ」
闘気的な意味でオーラを醸しだした藤沼先輩がびっと3本の指を立てる。
秘孔を突くつもりではなさそうなのでおとなしく聞いておく。
「一つはお昼の放送。リクエストを募集して、お昼ごはんの邪魔にならないように、でも聞こえるような音量で音楽を流すことよぉ」
「とうばんがきまってるけど、だいたいぜんいんくる」
「私、生徒会が忙しくてお昼くらいしかまともに活動できませんの」
全員参加が基本ってことか。
うーん、昼ごはんはクラスで食べないとイジメ問題が再燃してしまうような……っていうか高級惣菜を用意させるのに「俺、部室で昼飯食べるから」とかどんだけ鬼畜だよ。
無理だ。
「ぜったいじゃないから、きにしなくていい」
「そうよ。好きにしていいわん。そして二つ目が、コンクールへの参加ね。アナウンス・朗読とかの個人部門から、事前にVTRを作ってのドキュメント、脚本から作るドラマといろいろあるわよぉ」
「こよみくんは、だんゆうをやってほしい」
「そうねぇ。暦ちゃんみたいなカワイイ子が主演男優をやってくれれば、全国だってメじゃないわよぉ」
全国とかあるんだ。っていうか男優って響きだけ聞くといやらしいよな。
元の世界だと、普通は「俳優」って言ってたもんな。
まぁ男女比逆転してるからこっちでは俳優が女性を表す言葉として存在しててもおかしくないけど。
「みっつめ。ぎょうじごとのほうそう」
「文化祭の進行や、体育祭のアナウンスなんかをやってるわん」
「縁の下の力持ちですわね。私は生徒会の方で出ずっぱりですけれども」
なるほど、確かにそういう行事では必ず生徒が駆り出されていたけども、放送部員がやっていたわけか。
「あ・と・は、暦ちゃんにお願いしたいことがあるのよねぇ」
「? 何ですか?」
「ほうそうぶのぶひかくとく。ぐたいていには――りじかいむけにイメージビデオのさくせい」
……ホワット?
「イメージビデオ。ほうそうぶとしてかつどうしているこよみくんをえいぞうにして、りじかいにうりつけ――しんさしてもらう」
ちょっと待て。今、売りつけるって言おうとしただろ。
っていうかもうほとんど言ってただろ。
「大丈夫よん。際どい映像とかはこっちでモザイクかけとくからん」
「いや、そもそも際どい映像なんてとらないでくださいよ!?」
「だいじょうぶ。こよみくんにもきちんときょかをとる」
「私が女性の華やかさ担当で、暦くんが艶やかさ担当ですわ! 完璧ですわね!」
……入部ゴリ押しされた件もあるし不安しかねぇ……!
かくなる上は大人の力だ!
さっき頼れとか言ってたし!
「こ、このみ先生……!」
「そんな捗……私立の教員なんてOLなんですよ。上司の命令は絶対なんです……ごめんなさい暦くん、ハァハァ」
いや、鼻血出しながら言っても説得力ねぇよ。
っていうか捗るって言おうとしただろ。
「とりあえず、だいほん」
「最悪カンペ出すから覚えなくてもいいけど、読んできてくれると嬉しいわぁ」
まぁ、なんだ。
薄い部活よりは濃い部活の方が、楽しめるだろうな。
うん。
そう思うことにしよう。
……畜生。
***
「ご主人様、帰りましょうか」
「えっと、光さん、ご主人様っていうのはちょっと……」
台本を渡されて解散となったので、俺は護衛武官の前島・光さんを伴って下校となっていた。
私立だけあって敷地内に護衛武官を待たせるためのスペースがあり、光さんはそこで待っていてくれたようである。
「……ご主人様がダメならば、如何ようにお呼びしましょう?」
「暦とか宇野とかで良いですよ」
「たかだか一介の護衛武官が護衛対象の名前を軽々しく呼ぶなど、あってはならないのです。ましてや名前は個人情報――誘拐犯に聞かれれば不利益を被ることもございますので、申し訳ありませんがお名前を呼ばせていただくわけにはいきません」
おおう。
そういう可能性もあるのか。
相変わらず凄まじいまでのプロ精神である。かっこいいなぁ。
***
ご主人様呼びだけは外せないッ!
「ほら、命令だぞ?」
「ああ、お許し下さいご主人様……ッ!」
ってプレイがしたいんだもの!
あ、でも年下だし、
「暦くん、私が守ってあげるっ」
「光さん……!」
ってなシチュエーションも萌える。
あ、もしかして早まった!?
いやいや、ご主人様呼びはジャスティスな筈。早まってなどいないわっ!
***
「わかりました。それじゃあご主人様でも良いです」
「……分かって頂けて何よりです。それでは参りましょう」
そういって歩き出すのは通学路ではなく、学校の裏手にある来賓用の駐車場である。母さんが学校に許可を取ったらしく、登下校は光さんが運転する自動車で行われることになっていた。
「あ、そうだ。今日の夕飯って何ですか?」
「夏希様と相談させて頂きまして、チーズinハンバーグがメインに、蒸し野菜の温サラダを添え物にしております」
「そっか」
それだけ言うと、光さんは黙って運転に集中する。
ビジネスライクっていうか、空気に徹するというか、本当にプロフェッショナルって感じですごいわ。
***
あ、危なかった……!
チーズinハンバーグって答えたときのご主人様の笑顔!
思わずちょっとブシャアしてしまった。
でも大丈夫!
堂々としてればバレないもの!
それに万が一バレたとしても、
「くくく、こんなに濡らすなんて、護衛武官失格だな。お仕置きしてやろう」
とか言われちゃったりなんかして、護衛武官ひとみの第11話みたいにお仕置きをもらえる可能性もあるからまったく問題無いわ!
うーん……スランプでしょうか。たくさん応援してもらってるのに納得行かない出来で申し訳ない。
ちょっとシリアスな話を挟みたいんだけど、きちんと上品かつエレガントなエピソードも入れたいジレンマ。
亀更新で申し訳ないんですが、お付き合いいただければと思います。
お読み頂きありがとうございます!
この作品は、上品&エレガント4割、皆様からのご支援5割、形容しがたいサムシング1割で構成されております。
感想・批評・ブクマ等お待ちしておりますので気に入っていただけたら是非!