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学校教育において重要な位置づけにも関わらず時間外労働で給与の出ないアレ

お待たせしました。見捨てないでください。(切実)

「部活動?」

「はい、部活動です」


 明けて月曜日の学校。俺はこのみ先生に呼び止められていた。

 理由は一つ。

 部活動への勧誘だった。


「急ですね?」


 俺の言葉にこのみ先生は苦笑いを浮かべる。


「私が顧問やってる部活なんですけど、ちょっと人が足りないんですよー」

「いや、部活はちょっと……」

「生徒会の話もきっちり断られちゃいましたし、もしかして暦くんは私のことが大嫌いですか? やっぱり乳臭いジャリガキとか思ってるんですか?」


 このみ先生の瞳からハイライトが消えた。どうやら何かのトラウマスイッチが入ったらしい。

 昔、男性にジャリガキ扱いとかされたのかなぁ……。

 この世界の男性は女性に対して風当たりが強いのがデフォルトみたいなので、充分に有り得そうである。


「……えーと、このみ先生?」

「どうせ私なんてかぼちゃぱんつしか似合いませんよ。どうせ私なんてリコーダーとカスタネットしか似合いませんよ。どうせ私なんて幼児向けブランドしか似合いませんよ。どうせ私なんて……」


 ひいいいい!?

 なんかブツブツ言い出した!?

 これはまずい。不気味過ぎる。


「えーと、このみ先生。とりあえず生徒会の話を袖にしちゃった件もありますし、見学だけでもさせてもらおうかと思うんですけど……」


 クソ。生徒会の件を断ってるから断りづらいわ。


「本当ですか!? 良かったですー。それじゃあ、部室に行きましょうか」


 このみ先生はそれまでのレ○プ目が嘘みたいに元気になり、鼻歌交じりに俺を部室へと導いてくれた。

 あれ? もしかして演技だった?

 ……まさかね。


***


「部長の丸山・みみさんについて、お願いしたいことがあります」


 部室棟の一角。そう切り出したこのみ先生は真剣な表情で俺を見据えていた。


「彼女は身体的にある特徴を持っています。が、決してそのことを馬鹿にしたり、からかったりせずに一人の女性として接してあげて欲しいんです」

「身体的特徴……」


 なんだろう。顔とかに大きな傷があるのか?

 あ、それとももっと単純に、この世界では珍しいブサイク系とかかな?

 それとも超絶マッチョとかそういう系か?

 いずれにせよ、本人がトラウマとして抱えているものだとしたら、あえてそれに触れる理由はない。

 そう判断して頷くと、このみ先生はほう、と大きく息を吐いた。


「良かったですー。先生としてもみみさんのことは気になっていたので、暦くんがきちんと接してくれるなら一安心ですー」


 その言葉に、俺は違和感を覚えた。

 何せこのみ先生は女生徒どころか俺の目の前で『自然妊娠したい』などと宣言する強者(つわもの)である。それが男性関係でこんなに気を使うってことは、何か大きな問題があるのだろうか?

 マッチョとかブサイクとかこの教師ならなんとも思わない気がする。

 大概外道だし。


「ええと、ちなみに、なんでこのみ先生はそんなに部長さんのことを気にしてるんですか?」

「……私も、彼女の気持ちが痛いほどわかるからです」


 暗い表情でつぶやいたこのみ先生は、つ、と一筋の涙を流した。


「男性という男性全員から合法ロリとして扱われ、『寄るなジャリガキ』とか『乳臭い消えろ』とか言われる毎日! それどころか見た目はOKとかいう男性も生理が来てると知るやいなや大年増扱いして、まともに女性扱いしてくれないんです! 暦くんはこの辛さがわかりますか? ……いえ、わからないでしょう!」


 えっと、つまり?


「そう、彼女は私と同じような見た目をしています……!」


 ちんちくりん枠か……。

 真面目に話を聞いて損したよ!

 確かにこのみ先生は合法ロリだしロリコンくらいしか見向きもしないだろうけど、そのトラウマもどうなんだろう。

 いや、これに関してはこの世界の男性が悪いところも多いだろうしあんまり言えないけどさ。


「はぁ……そんなことだと思いましたよ」

「そ、そんなことって何ですかー! 大変なんですよ! 子供服しか似合わない悲しさがわかりますか!? 下着屋でブラジャーを選ぶ必要がない悲しさがわかりますか!? 店員さんに『お母さんと来てね』とか言われてやんわり勝負下着を買わせてもらえない悲しさがわかりますか!? 夜出歩くと警官に年齢確認される悲しさがわかりますか!? 居酒屋に行くと年齢確認すらなく入店拒否される悲しさがわかりますか!?」


 必死の形相で無罪を主張する合法ロリだが、知らん。

 いや、トラウマっていうかコンプレックスがあるのは十分理解したけど、正直どうでも良いです。

 なおも必死に言い縋るこのみ先生に、どうしたものかと視線を向けると、背後でからりとスライドドアが開く音がした。

 振り返れば、そこにいたのはランドセルとお子様ランチが似合いそうなロリっ子が一人。

 あ、このみ先生の同級生……じゃなくて。

 多分、この人が部長の丸山・みみ先輩だ。

 丸先輩はうなじが見えるくらいまで切ったベリーショートの髪が印象的なお子さ……背の低めな女性だった。ダボダボなジャージがさらに身体をちっちゃく見せている。

 見た目年齢はこのみ先生と同じくらいなんだけれど、くりっとした大きな目はどこか冷めたような感じがして、少しだけ大人びて見える。

 まぁそれでも小学校高学年、といった感じではあるけれど。友達がサッカーしてるのに一人だけ難しめの小説を読んでたりしそうな雰囲気の子だ。

 在校生からジャージを借りた妹が迷い込んだ、と言われれば信じてしまいそうだ。


「あ、みみさん! 聞いてくださいよー」

「……」

「実はこちらの暦くんが私を合法ロリ扱いして――」


 なんか合法ロリが冤罪をでっち上げてるんだけど、丸先輩はたわ言の一切を無視して俺のブレザーの裾を掴んだ。

 そして子供特有の舌足らずな言葉遣いで、


「まいごになっちゃった。おにいちゃん、いっしょにおねえちゃんさがして」

「!?」


 あれ!?

 え!?

 丸山先輩じゃなくて普通に迷い込んだ子供!?


「えっと、君、名前は? どこから来たの?」

「ん。だっこ」


 だっこ、だっこか。

 仕方ない……夏希もちっちゃい頃はよくだっこをおねだりしてきたなぁ。


「暦くんストーップ! だまされないで下さい! その子は君よりも年上ですよ!?」

「!? ……えーと、もしかして、丸山・みみ先輩ですか?」

「……このみせんせい、よけいなことを。うまくいけばイケメンにだっこしてもらえたのに」


 舌足らずな口調ながらも不満気な丸山先輩。

 いや、どんな幼児プレイだよ!

 確かに騙されそうになったけども!


「みみさん……まさか弱点をうまく長所にするとは……侮れませんね!」


 このみ先生は戦慄した表情で丸山先輩を見つめた後、ハッと気づいたように辺りを見回し、


「あたし、このみ。まいごになっちゃったの」


 俺のブレザーの裾を掴んできた。


「騙されるか合法ロリ」

「……今教師に向かって合法ロリって言いました?」


 いや、何トラウマスイッチを刺激(オン)されてんだよ。ロリ扱いされるようなことしたの自分だろうに。

 俺が半眼でこのみ先生を見ていると、反対側、丸山先輩にブレザーを引かれた。


「にゅうぶきぼう?」

「え、あ、はい」

「にゅうぶきょか」


 あ、しまった。

 思わずはいって言っちゃったけど入部希望じゃなくて見学希望じゃん!


「ごめんなさい、見学希望の間違いで――」

「……うそ、ついたの?」

「いや、嘘じゃなくて、」

「…………うそ、ついたの?」


 上目遣いに涙を溜めて俺を見つめる丸山先輩。

 こ、断りづらい……!

 いや、歳上なんだと理性が理解していても、何故かちっちゃい子をイジメている気分になる……!


「……ちなみに、ここは何の部活なんですか?」

「ほうそうぶ」

「放送部?」

「そう」


 舌足らずな喋り方。

 涙を湛えた瞳。

 そして俺の腰くらいまでしかない身長。

 ……これで俺より年上なんだよなぁ……。


「まずはおためしで。どう?」

「……ええと、それなら」


 押し切られてしまった。

 こうして俺は合法ロリのあざとい勧誘に負けて放送部に入部することになったのであった。

 ところで放送部って何する部活なんだろう……。

そんなわけでタイトルは部活動のことでした。教員って大変だよね。

そして新キャラです。少しまた人数が増えますが、あと3人? くらいで落ち着く予定です。ガンガン増やすつもりはないんですが、何故か増えていくキャラクター……あ、でも前から出てきてたキャラも再出しますよー。


お読み頂きありがとうございます!

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