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あべこべ世界へようこそ!

男女比偏向系の作品が少なかったので自家発電しました。

ナチュラルボーンハーレムって良いですよね。

 朝、目が覚めると違和感があった。

 いや、別に朝立ちがどうこうとか夢精がどうこうとかそういう話じゃない。

 コーヒーを淹れてテレビの電源を入れると、こんなニュースが聞こえてきたのだ。


「今朝、20代男性の下着を盗んだ罪で34歳、自称会社員の女性を逮捕しました。調べによると――」

「男性少子化対策の一環として一夫多妻制の人数変更を――」

「男性専用車両に立ち入り、痴漢を働いたとして痴女が――」


 基本的に女性が被害に遭いそうな犯罪で、女性が逮捕されたニュースがバンバン流れていたのだ。

 珍しいこともあるものだ、とトーストをかじりながらコーヒーをすすると妹の夏希が起きてきた。


「おにーちゃん、おはっ……ええッ!? なんでそんな格好してるの!?」


 焦ったような夏希の声に己の姿を眺めてみる。

 タンクトップにボクサーパンツ。昨日暑かったし仕方ないよね。


「暑かったからね。ま、気にするなよ……って夏希こそなんだその格好!?」


 中学二年生という微妙な年頃だし気になるのかな、と思いつつ夏希に向き直り、俺は思わず叫んでしまった。

 なぜならば下は水色のショーツのみ。上に至ってはゆるっとしたタンクトップのみであったのだ。胸元からは桜色のアレがガッツリ見えてしまっている。


「私の格好よりおにーちゃんの格好だよ! おにーちゃん男でしょ!? もうちょっと慎みを持ってよ!」

「いや、慎みっていうか」


 普段からこんなもんだろ。


「良い!? 妹の私が言うのもなんだけどおにーちゃんはかっこいい! ただでさえ男の人なんて希少価値高くてひと目を引くんだからそんな無防備な格好してたら襲われちゃうよ!?」


 どうにも考えに齟齬がありそうなのでいろいろ聞いてみたところ、どうやら俺は普通じゃない世界にトリップしてしまったようだった。

 普通じゃない世界といっても剣と魔法の世界でもなければログアウト不可能なVRMMOでもない。

 男女の価値観が逆転してしまった世界だ。

 それも男女比が女に傾いていて、どうにも男というだけでいろいろ大変な世界らしい。

 まぁ元の世界に照らし合わせてみれば20人から30人に1人しか女がいない状況と同等なのだ。性犯罪が横行するのもわからないでもない。

 特に女は男よりも潜在的な性欲が高いっていうし、仕方ないことなのかも知れない。

 そんなことよりも、大きな問題がある。

 夏希だ。

 普段ならツンケンしていて「話しかけないで」みたいな態度だったのに、俺の姿がショックだったのかものすごく積極的にかまってくるようになった。

 加えて黒のストレートヘアをクリップで結わえてうなじが見えている姿。

 元々スッと通った鼻梁に、くりっとした、ちょっと気の強そうな瞳が印象的な美人だったけれど、そんな夏希があられもない姿で俺の前にいるのだ。

 実の妹と言えども……いや、実の妹だからこそ興奮する。

 そう。

 何を隠そう、俺は妹萌えだ。

 よく実妹がいるやつは「妹萌えなんて幻想」「二次元だけ」「現実みろよ」などというが、俺から言わせれば愛が足りないだけである。

 ツンケンした態度だってツンデレのツンだと思えば美味しくいただける。例えそこに一欠片のデレがなくとも!

 それが真の妹萌えというものである。


「夏希。お前、彼氏とかいるか?」


 価値観が逆転してたり夏希がデレ成分100%になっていたので聞いてみたところ、夏希は顔をゆでダコみたく真っ赤にして俺を睨んだ。


「いるわけないじゃん! っていうか私のそばにいる男の人なんておにーちゃんだけだし!」

「そっかそっか。それなら良いんだ」


 自然、機嫌がよくなってしまう俺に夏希はさらに顔を赤くしてうつむいた。


「そもそも私はおにーちゃんがいれば他の男なんて……って別に兄妹だしそういう意味じゃないけどおにーちゃんかっこいいし……」


 もごもごと口の中で何か言ってる夏希の頭をなでてやると、はわわ、と信じられないものをみるような目で俺を見つめた。


「おにーちゃん、今日、なんか変だよ? どうしたの?」

「変って、いつも通りだろ?」


 しいていうなら構いすぎて夏希に怒られるのがデフォルトだけど、どっちかっていうと変なのはこの世界と夏希の態度だよなぁ。


「おにーちゃん、女の人に触るのとか大っ嫌いじゃん」


 何を言ってるんだ?

 本命は夏希だけど俺は基本的に女の子大好きだぞ?

 夏希とか夏希とか夏希とか超なでくり回したいし。

 って思ったけど、性欲増しましでオープンエロスな女に囲まれて育てば女嫌いになるのも仕方ないことなのかな?

 無理やり襲われて責任取れ、とか言われたら恐怖だしね。


「夏希に触るのは嫌じゃないよ」


 そういって夏希の手を取って膝の上に乗せると、冷蔵庫で一夏放置したアイスみたいにカチコチになってしまった。

 両手を膝の上でぎゅっと握ったままうつむいた夏希はいつも通り超可愛い。

 いや、いつもだったらすぐ逃げて俺に鉄拳制裁するし、されるがままの夏希は新鮮でいつも以上に可愛いな。


「おにーちゃん……」


 ふにゃっとした声で呟いた夏希は俺の膝の上で器用にターンすると、俺に向き直る。

 ぷるんとした唇を少し尖らせた姿は、何か不満があるときの夏希の癖だ。


「良い? いくら私が妹でも、私だって女なんだよ?」


 知ってます。


「ましてやそんな姿されてちゃ、私だってムラムラするんだからね?」


 ムラムラって……女の子がそんなこと言っちゃいけません!

 って男女逆転してれば男があけっぴろげなのはそこまで珍しいことじゃないから良いのか別に。


「かまってくれるのは嬉しいけど、この調子だとおにーちゃんが外でレイプされそうで心配だよ……」


 どんだけ男に飢えた世界なんだよ。

 いやまぁ元の世界に置き換えれば分からないでもないけど。


「夏希限定だから大丈夫だよ」


 そういうと、夏希の鼻からツっと鼻血がたれてきた。


「ああもう! とにかく気をつけなひゃい!」


 夏希は捨て台詞のようにそう怒鳴ると、タタっと自分の部屋へと走り去ってしまった。

 うーん。

 どうにもこの世界の常識がわからない。

 夏希に聞くのも限界があるし、ネットで少し調べるか。

 トーストの残りをコーヒーで流し込んで自分の部屋へと向かうと、夏希の部屋の前で妙な声が聞こえてきた。


「くっ、ぅん……! おにー、あ、あっ! おにーちゃ、んっんぅ!」


 どうやら俺はこの世界における女の性欲の強さを舐めていたようである。

 部屋に戻って録音アプリを起動させながら、そんなことを思った。

お読み頂きありがとうございました!

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