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ここは牢獄。
ここから出られた者はいない。
出ようとするものもいない。
システムに穴はない。ルールに綻びはない。
どんなに努力しても、血反吐を吐いても、懇願しても、泣きついても、どうすることもできない。
それができるのはご都合主義の神様だけだ。
といっても、もしかしたら俺が外界から隔絶されてから世界が変わったかもしれないし、大穴が出来てルールも綻んだかもしれない。
何しろ1年だ。1年も誰とも接触してないのだ。一年あれば、近所のタバコ屋がコンビニに変わって、ハンミョウは幼虫から成虫に成長し、大型の電気屋が2回の開店&閉店セールができる。それだけで周囲の環境も変わるし、下手をすれば生活や決まり事も変わる。
だから、こんなくそったれなルールはとっくに覆っていていると希望を持ちたい。
しかし、
どこからもしらせはない。
つうちはない。
けはいはない。
だれもいない。
誰もいないというのは大袈裟かもしれない。
日々世界を誰かが動かしている。
TVでは笑いどころのわからない暴力的なコントを垂れ流している。
人気俳優のためだけに作られるアニメの実写化が発表されるし、
それに対して原作ファンは喚き散らす。
政治家は無責任な発言をし、
マスコミは血眼になって隙をさがす。
有名人は麻薬をやって芸能界から追放されて
なんだかんだで復帰、また逮捕。
俺の関係ないところで世界は回っている。
女神は微笑まないし、天使も来ない。
死神すら近寄って来ない。
来訪者は無くこれから来る予定もない。
望んでいない訳ではない。
むしろ渇望している。
しかし、こちらから動くことは許されない
監主はずっと俺を縛っている。
生まれた時から俺は監主のそばにある。
ルールは地球誕生から変わっていない。
幾億の囚人が夢見てきたが叶った事実はなく変えられない規則だ。
変わったとして知らせに来る奴はいない。
もういない。
叶うならば もう一度 彼女に。