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飛んで火に入るドラゴン迷宮管理人  作者: みきもり拾二
◆第一章 ドラゴン迷宮管理人の愉悦
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【07】大ダメージ!!


「あたしの見せ所なんだから!」


 ビクトルの声に、すぐさま僧侶娘がバリスタへと駆け寄った。


 ドラゴンが咆哮とともに身をひねり、天井高くへと舞い上がる。

 翼のはためきが荒ぶる強風を巻き起こし、部屋中を掻き回さんばかりの勢いで風が駆け回る。


 ビクトルと戦士娘は、強風に押し飛ばされるようにして『破風の三角錐』の下に逃げ込むので精一杯だ。

 『破風の三角錐』の下にいても、強い横風に晒されるほどの驚異的な暴風。


「これが『昇竜嵐』! この時ばかりは、さすがの俺も何もできない!」

「それでもあたしのバリスタ、打ち込んじゃうんだからぁ!!」


 『麻痺バリスタ矢』を装填した僧侶娘が、バリスタの『コア』にマルカデミーガントレットをかざしている。

 キリキリと音を立ててバリスタが動き、ドラゴンへと照準を定めていく。

 さすがはサンクチュアリ。その中は、無風状態のようだ。


「まだ打つなよ! 狙いをしっかり定めろ!」

「わかってるってば!」

「グギャアオオオウゥゥゥ!!」


 宙に舞い上がったドラゴンが一声大きく吠えると、その口に大きな炎の渦が巻き起こる。

 炎の渦はみるみるうちに膨れ上がり、ドラゴンの喉元がグイグイと太くなっていく!


「翼が水平に止まった時、風が止む! その時がチャンスだ!」

「カモぉぉ〜〜ン! あたしのスーパーヒーロー属性は準備万端よ!」


 完全に照準に捕らえた様子の僧侶娘が、余裕綽々で今か今かとその時を待ちわびる。


 ドラゴンの喉元が大きく膨れ上がって、今まさにブレスを吐き出さんとしたその時、ドラゴンの翼が水平にピタリと止まった!


「今だ、撃てえ!!」

「ゴー!!」


 僧侶娘のマルカデミーガントレットがキランと輝くと、「バン!」と音を立ててバリスタの矢が解き放たれた!

 「シュン!」と空を切り裂き、『麻痺バリスタ矢』が一直線にドラゴンへ飛んで行く!


 ズグシャッ!!


「グヘヒヒャア!!!」


 鈍い音とともに、『麻痺バリスタ矢』がドラゴンの白い腹に突き刺さる!

 瞬間、ドラゴンの目が驚愕に見開かれ、ガクガクとその身体が痙攣し始めた。


「キヒイイ……」


 情けない声を引きながら、ドラゴンの身体がグラリと揺れて力なく落下していく。

 長い首がユラユラと揺れて、その喉元に溜め込んだ炎を、天井や壁に向かってゴオゴオと派手にまき散らした。


「やったぁ♪ 見事なもんでしょ!」

「毒玉を投げつける! そのあと大魔法、チャージスキルを叩き込んでやれ!! 竜心臓を集中的に攻撃するんだ!」


 手を叩いて飛び上がる僧侶娘に構わず、ビクトルは『ミートワーム女王の毒袋』を担ぎ上げると、ドラゴンへと走り寄った。


「あらよっと!」


 「ズダァァァン!」と土埃をあげて床に叩きつけられるドラゴンの竜心臓目掛けて、ブウンと大きく一回転させて投げつける。


「ヒギイイ!!」


 ミートワームの粘液糸が竜心臓にへばり付き、毒袋の中にたまった粘液が竜心臓を覆い尽くした。

 人間なら一撃でショック死するレベルだろう。


 魔法使い娘が両手スタッフを振り上げながら『爆炎シールド』から走り出る。

 その向こうで、戦士娘がグルングルンと長剣を振り回し始めていた。


「サンダーボルト、フルバレットブースト!!!」

「チャージアタック、フルバレットブースト!!!」


 二人のマルカデミーガントレットがキランキランと煌めいて、それぞれの武器にエネルギーが漲っていく。


 その間にも、僧侶娘が『通常バリスタ矢』をドラゴンの胸元めがけて打ち込んでいく。


「全弾叩き込んであげるんだから! 覚悟なさい!」


 床に倒れ伏すドラゴンは、『麻痺バリスタ矢』の効能で、ビクリビクリと身動ぎするので精一杯だ。


「はあっ!!」


 ドラゴンの胸元が見える位置に回り込んだ魔法使い娘が、大きく膨らんだ雷玉をドラゴンめがけて解き放つ!


 ズドオオオオオオオン!!


 天井高くまで雷柱が立ち上り、ドラゴンの身体を跳ね上げた。


「殲・滅!!」


 落ちてきたところを、『竜心臓』めがけて戦士娘が突進した。


 ズダァァァァァァン!!


「ギイイイエェェェェェェェェ!」


 再び床に叩きつけられたドラゴンが、喉元を締めあげられたような声を上げる。

 苦しみに悶えるドラゴンに、三人娘が容赦なく集中攻撃を加え続けていく。


 とその時、「ザンッ!」と床を踏みしめる音ともに、ドラゴンが宙に舞い上がった。


 翼をはためかせ、その目を憎悪と怒りに光らせている。

 胸元からお腹にかけて、大きく鱗が剥がれ落ち、ドス黒い筋肉が晒されている。

 マグマの如く真っ赤に燃える血管が浮き上がり、黄金色だったその瞳は、今や赤紫色に燃えていた。


「よし、最終の第三段階だ! 耳を塞げ! 『極限竜咆哮』が来るぞ!」



 <第三段階> 死に物狂いで大攻撃を繰り出してくる。


 ここまで来ると、さしものドラゴンといえど、必死の形相だ。

 鱗はあちこち剥がれ落ち、黒に近い焦げ茶色の岩石のような皮膚が露わになる。


 マグマのように燃えたぎる血を滴らせ、がむしゃらに攻撃を繰り出してくる。

 通常攻撃はさらにスピードアップして、隙という隙は全く無い。


 雄叫びは『極限竜咆哮』となって、脳髄を揺さぶり、まともに喰らえば行動不能に陥ってしまう。


 そして、『竜爆炎』という大爆発攻撃を放ってくる。

 大ブレスと同じく、雄叫びを上げながら首をグンと低くして、後ろ脚を踏ん張るモーションをした時がそれだ。

 モーションは同じでも、ドラゴンの周りに炎が揺らめくので、『竜爆炎』とわかる。

 ドラゴンの最強にして最大の攻撃だが、これが唯一の反撃チャンスでもある。

 『竜爆炎』を放ち終わり、雄叫びを放っている時にできる隙を、きっちりと活かしたい。


 注意すべきは、反撃チャンスだからと言って、二度も三度も繰り出されてはまずいということだ。

 爆炎に『破風の三角錐』が壊れることもある。

 そうなれば、『爆炎シールド』も消失してしまう。


 一度のチャンスを有効活用して、フルバレットブーストを連続して叩きこむしか無い。

 もし、足止め系スキルがあれば、これもフルバレットブーストで繰り出しておきたいところだ。


 口から黒煙を吐き始めた時、それはドラゴンが瀕死であることを示している。



 ビクトルが叫び終わらない内に、ドラゴンは鋭い牙を剥いて、部屋いっぱいにうなり声を上げた。


「ァンギャヘエエエエアアアアァァァァァッ!!!」


 まるで、この世のすべてを呪うかのように、体全体から発せられる大咆哮。

 部屋の石壁すらも、ビリビリ震わせるほどの大音響。


 大きな円を描くように長い首を大きくくねらせて、千里先まで轟き渡らせんばかりの勢いだ。


「うひい。毎度のことながら、耳を塞いでても脳みそまで揺らされそうだぜ」


 耳を守らなければ、平衡感覚を失って、激しい目眩と吐き気に襲われることになる。

 古くから、ドラゴンが恐れられる由縁だ。


 ひとしきり、大咆哮をあげたあと、ドラゴンは翼をはためかせて宙でグルリと回転した。

 四つの竜巻が巻き起こり、卍の軌道を描いて放たれる。

 そして「ボン、ボン、ボン!」と三連炎弾を吐き出してきた。


「あと少しやり合えば、『竜爆炎』が来るはずだ! がんばれ!」

「ええ、任せてよ!」


 戦士娘がドラゴンの真正面へと駆け寄って、ヘイトルアーを発動する。

 ドラゴンは戦士娘を睨めつけると、すぐさま滑空突進からのジャンプ飛びつき鉤爪攻撃を繰り出してきた。


「速い!」

「ゴガアッ! グガアッ!」


 「ズドン、ズドン!」と鋭い鉤爪を叩きつけ、右へ右へと逃げまわる戦士娘を追い詰めていく。

 最初の時とは比べ物にならないほど、その攻撃スピードが増していた。






さすがに最終段階! やばくないです?

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