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飛んで火に入るドラゴン迷宮管理人  作者: みきもり拾二
◆最終章 ドラゴン迷宮管理人のリタイア
62/68

【62】新時代の盾

「人型飛行決戦兵器にして新時代の盾、『アークフェザー』!! ふあーっはっはっはっ! マルマルめ、こんな秘密を隠していたなんて!!」


 ロンフォードの高笑いが耳に届く。


 まったくだ……。

 今度ばかりはロンフォードに同意せざるを得なかった。

 いったい……この人たちは何なんだ……どこまでも、誰もがすごい能力の持ち主ばかりだ……。

 激しい炎と閃光に包まれた視界の中で、ビクトルは愕然とせざるを得なかった。


「ルヒャオウウゥゥッ!!」


 ズギュウウンンッッ!!


 物凄い衝撃波とともに、マルカーキスレッドドラゴンがアークフェザーに体当たりを食らわせていた!

 大きなナイトシールドの周囲に広がる半透明のシールドが何度も波打って、その衝撃を完璧に封じ込んでいる!


 ビクトルの目の前に広がる、爛々と光るマルカーキスドラゴンの目!

 その胸元で、ワキワキと蠢めく先端の鋭利に尖った12本の節足。


 やにわに、その12本の節足がアークフェザーの方に切っ先を向けると、その盾を打ち付け始めた!


 ズガンッ! ズガンッ! ズガンッ!


 打たれるたびに、アークフェザーの踏ん張る足が、ジリっジリっと後退する。


「ぷ、プルデンシア!? 何か反撃できないのか!?」

「アークフェザーは兵器ではありません! 盾にしか過ぎないのです!」


 ターコイズブルーに瞳を光らせ、プルデンシアが力強く答える。

 だとしたらこの状況は……!!!


「せやああああああああああっ!!!」


 真上から聞こえてくる雄叫び!


「ルアオウッ!」


 「ダンッ!」とナイトシールドを蹴りつけて、マルカーキスレッドドラゴンがバックジャンプで舞い上がる!

 その直後に、禍々しいヘイトブレイカーを振り抜いてアスタが舞い降りた!


「くそっ!! また逃げられた!」


 すぐさまヘイトブレイカーを正面に構えて立つアスタ。

 大きな息を吐き出して、珠のような汗を額に浮かべている。


 スキル効果時間が切れるのも、もうあと間もなくのはずだ……!


「大丈夫なのか、アスタ!?」

「俺はやります! 何度でもやります!! やらなきゃダメなんです!!!」


 ギンと力強く吠え、ブルンと横に薙ぐと、雄叫びとともに駆け出した!

 マルカーキスレッドドラゴンも、炎弾を繰り出して迎え撃つ!


 円状の壁に沿って走るアスタを追従するように、マルカーキスレッドドラゴンが首をグイーっと傾けていく。

 その姿に、ビクトルはピンと来た!


「……麻痺バリスタだ!」

「はい!」


 アスタに気を取られているこの隙しか無い!!

 プルデンシアがターコイズブルーの瞳を煌めかせる!


 アークフェザー脇からマルカーキスレッドドラゴンに狙いを定める。

 マルカーキスレッドドラゴンは気づく様子もない。

 その喉元に赤紫の炎をグイグイと溜めこんでいる。

 そして、大きく首を仰け反らせ、クルリとこちらに背中が向いた!!


「撃てっ!!!」


 バシュンッ!!!!


 ビクトルの指示と同時、麻痺バリスタが解き放たれる!!


 ズドンッ!!!


 狙い過たず、麻痺バリスタがマルカーキスレッドドラゴンの背中に突き刺さる!!

 瞬間、マルカーキスレッドドラゴンがその巨体をビクリと震わせた!


「やった!」

「やりました!!」

「ジャイアントグラップリングスネア、フルバレットブースト!!!」


 ハインツの声とともに、マルカーキスレッドドラゴンの身体が光る巨大な手に掴み上げられる!


「せいっ!」

「そりゃっ!」


 この機を逃さず、ダッカドとデクスターが爆炎シールドから走り出て、冷気スライムコアを投げつける。

 2つのスライムコアが「キヒイイイィィ!」と奇声とともに弾けると、マルカーキスレッドドラゴンが、動かぬ身体をビクリと苦悶に震わせた!


「今だ、アスタさん!」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」


 巨大なヘイトブレイカーを携えたアスタが、天井めがけて壁を駆け上がる!

 そして、「ダンッ!」と勢い良く壁を蹴り上げた!!


「ルアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」


 甲高い咆哮がして、「ズゴオォォォォン!!」と爆炎が上がる!


「もう麻痺が切れた!?」


 しかし、マルカーキスレッドドラゴンを掴み上げるその巨大な手は微動だにしない!


「う・お・お・お・お・おおおおおおおおおおっ!!!」


 ギチギチと音を立てる巨大なヘイトブレイカーを真横に構え、アスタが真っ逆さまに落ちていく!!

 驚愕に見開かれたマルカーキスレッドラゴンの瞳!!


「ダーク・ザン・ダークネスゥ!! スラァァァァァァッシュ!!!」


 雄叫びとともにアスタがヘイトブレイカーを振り抜いた!!!


 ヒュゥン! ズドシャアァァァァンン!!!!


「ルギシェエエエエエエエェェェェェェェェッ!!!」


 苦痛に満ちた悲鳴が上がり、赤紫の炎が弾ける!!

 爆風が吹き付けて石壁を駆け巡り、もうもうと白い煙が立ち込めた。


「やったか!?」


 ビクトルが顔を上げた時、白い煙の中からアスタが姿を現した。

 その両肩と頭上に三匹の毒蜘蛛を乗せ、「ハアハア」と荒い息を吐き出し、珠のような汗を滴らせている。


 ショートソードの姿に戻ったヘイトブレイカーをガツッと石床に突き、へたり込むようにして力なく膝を突いた。


「俺の役目は終わりました……あとは……おまかせです」


 プルデンシアがアスタに駆け寄ったその時、白い煙の向こうから唸り声が上がった。


「ルアア……ルギャオッ……!」


 その胸元に突き出ていた12本の節足はズタズタに切り裂かれ、ダラリと力なく垂れ下がっていた。

 赤紫の鱗はほとんどが剥げ落ちて、その真っ黒な体躯にマグマのような血が滴り落ちている。


 だがしかし、赤紫の鱗を半分残したその顔の、真っ赤に光る両の瞳には、激しい怒りと生への執念が見て取れた。


「……生きてやがる……ホントに、ドラゴンってヤツは……」


 幾度と無く対峙してきたその強敵。

 ビクトルはその巨大なモンスターに、心の底から畏怖の念を抱かずにはいられなかった。


「ル、アアア、ア……!」


 口から黒煙を吐き出しながらも、ドシャリ、ドシャリ、とその前足を踏み出している。


「ジャスティスブレイド、フルバレットブースト!!」

「剛弾カチ割り斬んんんっ、フルバレットブーストぉぉ!!!」

「隼滑空砂塵斬りフルバレットブースト!」


 白い光が幾筋も煌めいて、マルカーキスレッドドラゴンを打ちのめす。


「これが俺んらの最後だ!!! 剛斧閃んんっ、フルバレットブゥゥストォォォォっ!!」


 ズガァァァン!


「ゲヒイイッッ! クシャアァァ……!」


 真っ赤に燃える血を迸らせながら、マルカーキスレッドドラゴンが衝撃に耐えてその目をギロリと向けてくる。


「僕もこれでラストです!! ハイエストホーリーファング!! フルバレットブーストオオオッ!!」


 ザシュウウッ!!


 ハインツの一撃が、マルカーキスレッドドラゴンの右腕を吹き飛ばした。

 それでもなお、マルカーキスレッドドラゴンはその首をもたげて、口元に赤紫色の炎を溜め込み始めた!


 ボフンッ! ゴオオオッ!!


 大きな炎弾が弾け飛び、熱風を巻き上げる。


「ギシャアアアッ……!!!」


 さらに唸りを上げるマルカーキスレッドドラゴンの真正面に、一人の男が立ちはだかった。


「ダッカドの兄貴ぃっ!!!」

「西風チャージ、フルバレットブースト!」


 ダッカドの曲刀に、真っ白な光が膨れ上がる!

 目の前でチャージスキルを溜め込むダッカドに、マルカーキスレッドドラゴンが最後の気力を振り絞るように声を上げた!


「グ・ガ・ア・アアアアアッ!!!」


 真っ赤な瞳を爛々と輝かせ、首を低くして後ろ脚をぐっと踏ん張ると、周囲に赤紫の炎が立ち昇る!!!


「早く撃ってくれ、ダッカドの兄貴!!」


 焦ったようなデクスターの声にも、ダッカドは微動だにしない!

 下段に構えたその曲刀の刀身が、いまや巨大な白い刃となって膨れ上がっている!


「我らが祖を打ちのめし、荒野を炎と焦がした伝説の赤紫竜よ……我が刃を打ち付けて、新しき時代の風を導かん!!!」


「ギュオオウッ!!!」


 マルカーキスレッドドラゴンが飛ぶより一瞬早く、ダッカドが動いた!!


「速えぇっ!!」


 ズドォォォォォォン!!


 光の刃がマルカーキスレッドドラゴンの長い首を跳ね飛ばす!

 マルカーキスレッドドラゴンの大きな顔がクルクルと宙に舞って、ドチャリと音を立てて石床に落下した。


 巨躯の周囲で揺らいでいた炎は、ろうそくの灯火のようにフツリと消え、バサリと力なく両の翼が垂れ下がる。

 そしてグラリと黒い巨躯が揺れ、ズダァンと音を立てて、石床に倒れ伏した────。


「『お疲れさまでしたぁ〜。見事にドラゴン討伐ですね〜』」


 この場に似つかわしくない、気の抜けるようなあの明るい口調のアナウンス。

 それと同時、プルデンシアのマルカデミーガントレットから「ピンポロピロリン♪」と軽快な音が鳴り響いた。


 どこからか赤紫の炎が上がり、瞬く間にマルカーキスレッドドラゴンの巨体を包み込む。


「……サラっ!!」


 ハッとしてビクトルが立ち上がる。

 このまま炎に包まれれば、サラまでもが……!!


 業火に包まれたその巨躯に、慌てて駆け寄ろうとしたその時だった!


 ザンッ!!


「おおおっ!?」


 炎の中から人影が、真上に向かって飛び出してきた────!






最終決戦、集結!!……あれれ?

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