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飛んで火に入るドラゴン迷宮管理人  作者: みきもり拾二
◆最終章 ドラゴン迷宮管理人のリタイア
56/68

【56】開戦!


「来た! 俺たちも行こう!」


 振り返って親指を立てると、ハインツとサラとプルデンシアが頷いた。

 そしてビクトルが迷宮管理人ルートの隠し扉を開け放つと同時、サラとハインツが一気に飛び出していく。


「ゥゴアギシャアアアアアアアアッ!!!!!!!」


 いきなり『極限竜咆哮』のお出迎えだ。

 だがしかし、ハインツの作った耳栓のおかげで、かすかに耳の奥を震わされるだけで物ともしない。


 サラは壁沿いに左へ走り、ハインツが壁沿いに右へと走る。

 プルデンシアは隠し扉から出てすぐ左の床に、メダルを嵌め込んだ。

 すぐに低い音とともに『破風の三角錐』がせり出してくる。


「うおおおお!!」


 ザグッ!!


「ギシャアアッ!!」


 まだ『極限竜咆哮』を放っている最中の狂化ドラゴンに、鬼の形相をしたアスタが斬りかかっていた。

 そのうなじには、ロンフォードの毒蜘蛛が一匹張り付いている。


「すげえ……あれは本当に、アスタなのか?」


 『狂化毒』でパワーアップしたアスタは、まるで別人だ。

 部屋の中央から狂化ドラゴンが繰り出してくる竜巻や鉤爪を物ともせず、右に左に動き回っている。

 全く怯む様子もなく、その動きも機敏で熟練しているように見えた。


 ロンフォードに『狂化毒』を貰えば、自分もあんな風に戦えるのだろうか?

 サラを助けたあの時、確かに、物凄い力が漲ったが……。


 思わず、ゴクリと唾を飲み込むビクトル。

 その腰には、長剣がぶら下がっている。


「ふあーっはっはっはっ! いいぞアスタくん! 狂化ドラゴンよ! 本気を出さねば、キミはものの3分とかからず、ボロ雑巾と化すだろう!」


 開け放たれた正面扉の前で高笑いを上げるロンフォードだが、もちろん、誰の耳にも届いていない。


 同じく正面扉から侵入したダッカドとデクスターが、メダルを嵌め込んだ合図で腕を高々と上げ、親指を立てる。

 少し遅れて、サラとハインツからも合図が上がった。

 見ると、早くも五箇所の『破風の三角錐』が、壁から突き出してきていた。


 ビクトルは大きな耳を頭巾で隠したプルデンシアの肩をポンポンと叩くと、親指をビッと立てた。

 プルデンシアは、キッと真面目な顔つきになって大きな尻尾をフサリと揺らすと、両腕を交差するようにして振り上げた。


「我、ここにドラゴン討伐を期する者なり────!」


 言い放つと同時、交差した両腕を左右に払うように振り下ろす。

 その瞬間、床に埋め込んだ5枚のメダルが、一斉に赤く光り輝いた。


 五箇所に突き出た『破風の三角錐』の下に、薄赤く光る半透明の半球状シールドが現れる。

 そして迷宮管理人ルートの通路近くで、バリスタがゆっくりとその姿を現した。


「よし、ここまでは順調だな」


 これで竜爆炎も怖くないだろう。

 あとは狂化ドラゴンが大攻撃のモーションで、隙を見せるのを待つだけだ。


「せいっ!」

「はぁっ!」


 ザシュッ! ズグシュ!!


「ギャオウ!」


 見ると、アスタのヘイトルアーに釣られていた狂化ドラゴンの横腹に、左右からハインツとサラが斬りつけていた。

 痛みに身を捩る狂化ドラゴンの胸元に、デクスターが素早く駆け寄っている。


「おぅらぁ!!! 剛来砂嵐いいフルバレットブースト!!」


 マルカデミーガントレットが煌めくとともに、デクスターの身体がコマのように回転して狂化ドラゴンの分厚い鱗をぶち殴る!!


 ズガガガガガガッ!! バゴオォォォン!!


「ギシェエエッ!!」

「おお! やったか!?」


 衝撃に上体を仰け反らせる狂化ドラゴンだが、その分厚い鱗にはヒビが入った程度だ!


「チッ! 硬てぇヤロウだ!!」

「いつものドラゴンなら、あれで十分なはずだ……!」


 ビクトルの頬に一筋の汗が伝い落ちる。

 戦闘が長引いて、みんなの攻撃スキルが尽きた時は、どうすればいいのか……?

 ロンフォードはサラとアスタがいれば大丈夫と言っていたが……。

 ……その時は、ビクトルの出番もあるかもしれない。


「追撃!」


 ダッカドが後方から素早く詰め寄る。

 しかし衝撃から体勢を立て直した狂化ドラゴンは、バックステップで素早く宙に舞った。


「ウギャオウ!」


 翼を広げて舞い立つと同時、「ブオン」と風が戦慄いて、四方に竜巻を「ビュン」と繰り出した。

 詰め寄りかけたサラとハインツが素早く身を交わす。

 横に回り込もうとしていたアスタとデクスターも、少し距離を取らざるを得ない。


「くっ!」


 踏み込み過ぎたか、ダッカドの身体が竜巻に巻き込まれて宙へと弾き飛ばされた!


「ダッカドの兄貴!」

「アギャアアアアアアアッ!!」


 ここぞとばかりに狂化ドラゴンが炎弾を繰り出してくる!


 ボン! ボン! ボン! ボン! ボン!


「隼滑空砂塵斬り!!」


 宙に投げ出されたダッカドが素早くスキルを繰り出すと、その身体がヒュンとさらに高く飛んで、狂化ドラゴンとは逆方向へと鋭角に滑空した。

 (くう)(ほど)ける竜巻と、壁に弾ける炎弾の合間をくぐり抜け、ズザザザと石床を滑って見事に降り立つ。

 そして、油断なく曲刀を構えて狂化ドラゴンを睨み上げた。


「おお、ナイス判断だ!」


 スキルバレットが勿体無い、なんてこの際、言ってられないだろう。

 命あっての物種、必要な時にその力を行使する。

 それが戦闘で生き抜くための最善の策だ。


「ギュオオオオオオ!!!」


 一声吠えて、狂化ドラゴンがダッカド目掛けて滑空していく!

 ダッカドは落ち着いて、それを右へと交わし去る。

 石床を滑りながら狂化ドラゴンは強引に身体を反転させると、首を低くして後ろ脚を踏ん張った!


 その周囲に青い炎がユラユラと立ち昇る!!


「あの体勢から竜爆炎!?」


 ビクトルは慌てて『下がれ』のジェスチャーで、腕を後ろに掻くようにブンブンと振った。


「グオオオオオオオオオオオ!!!」


 唸りを上げて狂化ドラゴンがジャンプする!

 直滑降する狂化ドラゴンが石床に、その両拳を全力で叩きつけた!


 ズダァァァァン! ドオオオオオオオオオオオオ!!!


 衝撃音とともに青い炎が部屋一杯に弾ける!

 爆炎シールドを突き抜けて、ブワリと熱風が襲い来る。


「ギュオオオオオオオオオオオ!!!!」


 雄叫びとともに再び宙へ舞い上がる狂化ドラゴン!


 ズドオオオオオオ! バシュウウウウウ!!!!!


 爆炎が弾け、熱風が舞い上がり、身体を揺さぶるような衝撃が怒号とともに駆け抜けた!


「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

「サラ!!」


 いつの間に宙に飛んだか!?

 狂化ドラゴンの真上から、サラがキリモミしながら落下していく!





討伐補助装置を作動させたまではいいけれど、やはり強い狂化ドラゴン!

勝てるのか!?

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