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飛んで火に入るドラゴン迷宮管理人  作者: みきもり拾二
◆第一章 ドラゴン迷宮管理人の愉悦
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【05】討伐補助装置作動!

「二回突進してきて、最後にバックジャンプからの滑空が来るからな!」


 ビクトルが呼びかけるまでもなく、戦士娘は打ち合わせ通りに、右へ右へと交わしさる。

 突進を交わされたドラゴンだが、勢いそのままにグルンと方向転換すると、すぐさま同じように頭を突き出して突進していった。


 その姿に、ビクトルは思わずほくそ笑む。

 毎度ながら、ワンパターンだと。


 ドラゴンは、ダメージの蓄積度合いに応じて、攻撃パターンを変えてくる。

 はっきり、三段階と言っていいだろう。



 <第一段階> 突進やひっかき、尻尾振り回しなど、近接攻撃ばかり。


 ダメージのあまりない状態では、突進攻撃を多発してくる。

 ドラゴン特有の炎ブレスや竜巻は、繰り出してこない。

 ドラゴンからすれば、侵入者を弄んでいる感じなのだろう。


 とにかく最初は、「突進→突進→バックジャンプ滑空突進」ばかりだ。

 しかも突進系は、なぜかターゲットの左側に少しずれるクセがある。

 だから右に右に避けていくと避けやすい。


 そしてバックジャンプ滑空突進で止まった時に、少し隙ができる。

 そこがスキルを叩き込むチャンスだ。


 ここで攻撃を食らうと、「右手ひっかき→右手ひっかき→回転尻尾攻撃」を繰り出してくる。

 この時も、右側へ避けながらドラゴンから距離を取るようにすれば、ほぼ当たらない。

 距離を取ったところで、再び突進攻撃を繰り出してくるので、以下ループといった感じだ。


 その攻撃を延々受けながら、徐々にドラゴンの体力を奪っていくという方法も無いではない。

 しかし、ドラゴンの体力は尋常ではない。

 ハンパな攻撃では、なかなか効果的なダメージを与えられず、それこそ気の遠くなるような長期戦となる。

 そうなると、本科生たちのスタミナも疲弊し、判断力も鈍って事故が起きやすくなり、討伐はより困難なものになってしまう。

 できれば、短期決戦に持ち込みたい。


 その短期決戦に持ち込むための方法が────『竜心臓』への集中砲火だ。


 『竜心臓』とは、ドラゴンは胸の真ん中にある、真っ赤に燃える大きな宝玉のようなものだ。

 ドラゴンの強力な攻撃を支える力の源であり、弱点でもある。

 ちまちまとドラゴンを傷つけるよりも、竜心臓に大攻撃を叩き込む方が断然、討伐を早く終えられる、というわけだ。


 で、その肝心の竜心臓だが、普段は茶色く分厚い鱗に守られている。

 まずはその鱗を破壊しなければならない。


 ただし、竜心臓を露出させると、ドラゴンの攻撃が急激に苛烈さを増し、炎ブレスや竜巻を繰り出してくるようになる。

 諸刃の剣な面もあるが、その強烈な攻撃を防ぐための『討伐補助装置』が、この部屋には配備されている。

 『破風の三角錐』『爆炎シールド』『バリスタ』の3つだ。

 これは、迷宮で手に入れる五つのメダルを、所定の床の窪みにはめ込むことで作動させられるようになっている。

 竜心臓を露出させる前に、これらを使えるようにしておきたいところだ。



「最後のメダル、はめます!」


 そうこうしている内に、最終地点に辿り着いた魔法使い娘が、勢い良く、メダルを床の窪みにはめ込んだ。

 それと同時、頭上3mほどのところに、壁から『破風の三角錐』がせり出してくる。


「よし、『爆炎シールド』展開だ!」

「はい!」


 頷くと、魔法使い娘は木製の両手スタッフを振り上げた。


「我、ここにドラゴン討伐を期する者なり────!」


 素早く呟いて、スタッフの先でメダルをコーンと打つ。

 その瞬間、床に埋め込んだ5枚のメダルが、一斉に赤く光り輝いた!


 五箇所に突き出た『破風の三角錐』の下に、薄赤く光る半透明の半球状シールドが現れる。

 これがドラゴンの大ブレスすら防いでくれる『爆炎シールド』だ。


 『爆炎シールド』が展開されると同時、ぽっかりと口を開けていた入り口が、大扉で閉ざされる。

 ドラゴンを討伐するまで、この部屋から逃げられない。

 リタイア機能を使わない限り────。


 さらに、ビクトルと魔法使い娘のいる場所からすぐ近く、入り口から見て真正面の壁の一部が、上にスライドし始める。

 そして、壁の中からバリスタがせり出してきた。


「よーし、いいぞ! 早くバリスタにサンクチュアリを!」

「分かってるわよ! 偉そうに指示出しするの、やめなさいよね!」


 僧侶娘が憎まれ口を叩きながら、近くまで走り寄って来る。

 バリスタのすぐ目の前で立ち止まると、すぐにマルカデミーガントレットをかざした。


「サンクチュアリ、フルバレットブースト!!」


 僧侶娘のマルカデミーガントレットがキランキランと輝いて、その足元に白い魔法陣が浮き上がる。


「何人たりとも、触れることは叶わぬ聖域よ、展開!!」


 僧侶娘がバンと力強く床を叩くと、バリスタの周辺に、円筒形の白い防護シールドが立ち上った。


 『サンクチュアリ』は、僧侶系の範囲防護シールドスキルだ。

 中に入れるのは、同じパーティの本科生と日傭生だけ。

 中からの攻撃は可能だが、外からの攻撃は一定以上のダメージまですべて無効化される。


 そして『フルバレットブースト』は、スキルバレット全弾をまとめて使用する捨て身の必殺技だ。

 これにより、有効範囲や有効時間、攻撃力や防御力などの効果を、飛躍的に高めることができるのだ。


 サンクチュアリをフルバレットブーストで発動しておけば、ドラゴンの思わぬ攻撃でバリスタを破壊される心配もない、というわけだ。


「よーし、いいぞ!」


 ここまでは全て打ち合わせ通り。

 三人娘たちも油断なく動いているようだ。


 見ると、ドラゴンはバックジャンプからの滑空を繰り出そうとしているところだった。


「大魔法のチャンスだ!」

「はい!」


 『爆炎シールド』の下で両手スタッフを構えていた魔法使い娘が頷く。

 手にした『魔法強化薬』を素早く飲み込むと、魔法使い娘の身体がフワンと虹色の光に包まれる。

 そして両手スタッフを振り上げ、声高らかに魔法スキルを発動した。


「サンダーレイン、フルバレットブースト!!」


 魔法使い娘のマルカデミーガントレットと、掲げる両手スタッフの先端に五色の光が溢れ、異常なまでの大きな輝きをキランキランと何度も放つ!


 その向こうで、ドラゴンが戦士娘に向かって滑空していく。

 「ズザザザ」と音を立てて床を滑るドラゴンが、止まった時がチャンスだ!


「いっけええええええ!!」


 ビクトルが力強く拳を突き上げた。


「はっ!!!」


 応えるようにして、魔法使い娘が勢い良く両手スタッフを振り下ろす!

 瞬間、ドラゴンの背中めがけて幾筋もの極太の稲妻が、雨となって轟いた!


 ズガガガガッ! ドゴオオオオオオオオオ!!


「ギシャアアアアアアアアアアアアアアア!!」


 雷撃の衝撃に風が舞い、ドラゴンの呻き声が響き渡る。

 ドラゴンは二度三度、バウンドするように跳ね上がると、ズダーンと大きな音を立てて床に倒れ伏した。


「胸元の茶色い鱗を狙うんだ!!」

「はああああ! 水平斬り!!」

「スターライトアタック!!」

「チャージエナジーボルト!!」


 電撃が全身を這い周り、上手く身動ぎできないドラゴンに、三人が集中攻撃を叩き込んでいく。

 三発四発五発とスキルを叩き込んでいるうちに、ドラゴンが電撃を振り払うように身をよじらせた。


 バサリと翼をはためかせて宙に舞い上がり、二度、怒りの咆哮を上げる。


 その胸元には────真っ赤に燃え盛る『竜心臓』が露出していた!





ここまで作戦通りで順調!

ドラゴンも本気出してくる?

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