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飛んで火に入るドラゴン迷宮管理人  作者: みきもり拾二
◆第三章 ドラゴン迷宮管理人の破滅
49/68

【49】別行動

「2つの謎をくみあ……ぐむむっ」

「待ぁちたまえ、つるピカヒゲもじゃくぅ〜ん。この私が興味をもったからには、ヒント無しで挑戦させてくれたっていいだろう?」


 眉根を潜めて、あくどい顔つきをしながら、ロンフォードがビクトルの口を手で塞ぐ。


 前述の『謎1』の6匹のガーゴイルは、毎回、役割がランダムで入れ替わる。

 まあ、セリフの内容はいつも同じだから、ビクトルからすれば、嘘のセリフを言っているのが誰か、を見るだけでいいのだが。


 『謎2』は、ヒントと数字列の数を見れば、勘の良い人ならすぐに気がつくだろう。

 ちなみに、もうひとつヒントを挙げるとすると「1」は「I」を示している。

 あとはそれに必要なパーツの数を睨めっこしてもらいたい。


 2つの謎が解けたら、第七の部屋に置かれた『解答用石台』の溝に、数字の刻まれた縦横6cm四方の石版を並べていき、嘘つきの名前を宣言することで『リセット珠』の入手となる。

 この時、『並べた数字列』や『嘘つきの名前』が不正解だと、6匹のガーゴイルが襲いかかってくる。

 時間が余っていて、討伐ポイントを稼ぎたい場合には打ってつけだが、急ぎの時は間違いのないように注意したいところだ。


 なにせ、ガーゴイルは宙を素早く飛び回り、ロックジャベリンを投げつけてくる。

 第七の部屋は、広さが10mほど、天井の高さが20mほどの空間だ。

 宙を飛び回るガーゴイルからすれば、格好の的だろう。

 さらに、投げつけてくるロックジャベリンには拘束効果のある『影縫い』も付随されて発動している。

 避けたつもりが、動きを止められる、なんてこともあり得るのだ。

 それにハマると大惨事に成り兼ねない。


 唯一、ガーゴイルを床に下ろす手段として、『閃光目眩まし玉』がある。

 視界をやられるわけではなく、彼らは強烈な光に弱いようだ。

 『閃光目眩まし玉』の強烈な光で、萎縮したように床に降りて来る。

 そこを一気に倒し切るのがベストだろう。


 ちなみに、『リセット珠』を使用した時に現れるガーゴイルロードは、ガーゴイルよりも身体が大きく、体力がある。

 さらにロックジャベリンを持っての滑空突進もしてくるので、元のモンスターたちと併用で現れるとかなり厄介だ。

 ガーゴイルロードの練習台として、ガーゴイルと戦っておくのも、パーティにとってはいいことかもしれない。


「ロンさんが『謎の間』に行ってくれるのか?」

「ああ、そうともさ!」


 ビクトルがチラッとハインツに視線を送ると、ハインツはニッコリと微笑み返した。


「僕は構いませんよ。次の部屋を、ロンさんにお任せしても。その間に、僕らはスキルバレットのチャージ休憩に入りますから」

「ああ、そうしたまえ! 私にはアスタくんがいれば大丈夫だ!」

「あ、はい」


 アスタが照れ笑いを浮かべる。

 確かに、『狂化毒』を使えるロンフォードなら、アスタがいれば問題無さそうだ。

 ヘイトルアーでモンスターを釣らせておいて、他のスキルを使うこともできるだろう。


「(しっかし、ヘイトルアーだけで、コイツを重宝するもんかね?)」


 アスタの戦い方はへっぴり腰だ。

 『狂化毒』でバーサーカーになったところで、上手く戦えるのだろうか?

 ビクトルには未だに、ロンフォードがアスタを重宝している理由がわからない。


「(『狂化毒』をフルバレットブーストで使うとか、そういうことなのか?)」


 だとしても、捨て身技すぎる。


「あ、みなさ〜ん」


 ちょうどその時、プルデンシアが大扉の方から現れた。

 大きな耳をフワリと揺らし、ニコニコ顔でトコトコと駆け寄ってくる。


「もう、この部屋の攻略は終わったんですか?」

「おうよ! もちろんだ」


 デクスターがグッと力拳を作って、プルデンシアを迎え入れる。


「こっちは問題ねえよ、お嬢。ダッカドの兄貴が、宝箱の中身を取ってきたところさ」

「まあ、素晴らしい。お二人とも、良い働きのようですね」

「この程度、どうということはない」


 宝箱の中身を抱えたダッカドと、デクスターが揃ってニヤリと笑う。

 その表情にどこか、固い縛りから解放されたような印象すら受ける。


「さて、ヒゲもじゃさん。狂化ドラゴン討伐に向けて、何か準備することはありますか? チャージ休憩中にできることがあれば、今のうちにやっておきましょう」

「ああ、そうだな……」


 さすがに要領がいい、とビクトルは感心せざるを得なかった。

 ハインツはすでに、この迷宮の効率的な攻略方法を理解したようだ。


「次の部屋はいいんですか?」

「そちらは、ロンさんにおまかせです」

「ああ、任せたまえ! では、アスタくん、行こう!」


 ダッカドから大扉の鍵を受け取ると、ロンフォードは颯爽とマントを翻した。

 アスタがそのあとをすぐに追う。


 その後ろ姿を見送ると、ビクトルは他の4人に向き直った。


「チャージ休憩中に普段やってることは2つだ。ひとつは、腹ごしらえの準備に、オイラーフィッシュのソテーでも作ること。もうひとつは、バリスタ矢を手作りで増やしておくこと。前の部屋の木の棒と、第二の部屋の刀剣の端くれを使う。あとはミートワームの毒糸か、麻ロープを使うぐらいかな」

「他にすることは、何かありますか?」

「ふーむ、そうだなぁ……対ドラゴン用に火力や補助のアイテムを手作りするぐらいかな? 狂化ドラゴンに麻痺スライムコアを使ったんだが、効果が薄かった。複数をまとめればもう少し効果があるかもだが……」

「なるほど。少し、考えてみましょうか。その他にも、何か使えそうなものは無いか、迷宮を歩いて見て回る、というのはどうでしょう?」

「ああ、それもいいと思う」


 優秀なパーティは、ビクトルの思いもしないアイディアを思いつくものだ。

 ハインツも、その類だろう。

 何か役立つ物を作り出してくれることを期待しよう。


「我らも、ハインツ殿にお供しよう」

「おうよ!」

「あたしもハインツさんと一緒に行きますね。何かお手伝いできれば」

「じゃあ、俺は安息処に戻って、オイラーフィッシュでも調理してようか」

「お願いできますか? あ、サラちゃんはきっと、ベッドでスヤスヤ寝てると思います。『目が覚めたらお腹が減ってると思うから、何か用意してくれてるとありがたい』、ですって」


 そう言ってプルデンシアが「ふふふ」と微笑む。

 もしかして、さほど気にするほどサラの状態は悪く無いのかもしれない。


「サラの調子悪い理由って、やっぱり、昨日の狂化ドラゴンの攻撃を受けたせいか?」


 ビクトルが尋ねると、プルデンシアは微笑みを浮かべたまま、「あら」と首を傾げた。


「……? 違うのか?」

「それもあるとは思うんですけど、うーん、そうですね……ちょっと殿方には言いにくいんですけど……」


 プルデンシアの言葉に、ビクトルも首を傾げる。

 デクスターも一緒にはてなマークを浮かべる横で、ハインツとダッカドは納得したような表情を浮かべていた。


「男顔負けの戦闘能力ですが、サラさんも、レディということですね」

「だから戦闘は、男に任せるべきと我らは考える」


 二人の言葉に、ビクトルもハッとなる。

 ────女だけに起こり得る体調不良の日。

 なるほど……そういう理由もあり得るのか、と。


「了解。気合入れて、料理しておくよ。ああ、三人とも、スリープモードを忘れずに」

「ご心配なく、ヒゲもじゃさん」

「おめえに言われずとも、もうスリープモードにしてるっての」

「じゃあビクトルさん、これを」


 ニコニコ顔のプルデンシアが、『鋼鉄』のカードを差し出してくる。

 プルデンシアたちが安息処に戻るには、先ほど手に入れた宝箱の中にあるはずの『銀』のカードがあれば大丈夫だろう。

 もしくは、迷宮管理人のカード束を持ったロンフォードと合流すればいい。


「サンキュー。ほんじゃまあ、それぞれの務めを果たしますか」

「はい」


 にこやかなプルデンシアのほほ笑みとともに、5人連れ立って、第六の部屋をあとにする。

 静寂に包まれた部屋で、時折、ブクリと蒸気を吹き上げるマグマ溜まりだけが残された────。



ロンたちが攻略終えるまで、ちょっとのんびり、ですかね~?

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