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飛んで火に入るドラゴン迷宮管理人  作者: みきもり拾二
◆第二章 ドラゴン迷宮管理人の困惑
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【27】電撃ゴーレム

「よーし、ソイツを倒せば、ラストの雷撃ゴーレムだ! デカイ雷撃のあとに現れるからな! 端っこにいても、ちょっとビビッと来るだろうが、その窪みから出ないようにしてくれ。一人でもそこに残ってないと、また最初っからになるからな!」


 ビクトルの言葉に、サラが深く頷く。

 サラがいてくれれば大丈夫だろう。


 その戦士としての強さと誠実さが、頼もしく感じられる。


「電撃ゴーレムは他とは違い、胸のコアが分厚い装甲で隠されてる。だからまず、これを破壊しなきゃなんないんだ! デカイ雷撃が来る、雷撃ゴーレムが現れる、両腕を上に上げて吠える。この時がチャンスだ! みんなで『爆発スライムコア』を一斉に投げ込んでやれ!」


 日傭生たちが「おう!」と応えると同時、デクスターが両手斧を斜め後ろに構え直した。

 ブンブンと両腕を振るうアイアンゴーレムの攻撃を掻い潜り、マルカデミーガントレットを煌めかせる!


「ヘヘッ! 木端粉砕斬んん!」


 ズドン! パァァァン!


 乾いた音が響いてアイアンゴーレムの胸のコアが砕け散る。

 奥の壁の石版が青く輝き、天井の12個のランプすべてに明かりが灯った。


 すると、中央の天井付近に漂っていた黒い雷雲が、にわかにゴロゴロと音を立て始めた。


「来るぞ! 窪みの端に退避!」


 デクスターとサラの二人が、急いで窪みの端に退避する。

 そしてダッカドが、ビクトルの目の前に走り寄ってきた。


 仄かな灯りの中で、ダッカドの濃い灰色の目と視線が合う。

 それはいつもの無表情の中で、冷たい眼光を放っていた。

 だが……曲刀を持つその手が、微かに震えている。


「……ん?」


 ビクトルが訝しげに眉を潜めたその時、ダッカドの背後で激しい雷鳴が轟いた!


 ガラガラガラ! ドシャアアァァァァァン!!


 太い稲妻が床を撃ち、地を這う蛇の如く電撃が散る。


「くそっ、ビビッと来やがった!」


 両手斧を構えたデクスターが苦しげに、片膝をつく。


 間髪を入れず、「ズドォォォン!」と轟音を響かせて、高さ3mはあろうかという大きなゴーレムが姿を現した。

 顔・胸板・肩・肘・手首・腰・膝・足のパーツは他のゴーレムと共通だ。

 しかし、その肉体は青光りする電撃で構成され、胸のコアは分厚い胸板で覆い隠されている。


 手首の端からビリビリと電撃を迸らせ、無表情なその目が威圧的にキランと煌めいた。


「ウオオオオオオオオオン!!!」


 肘を曲げた両腕を振り上げて、大きく一声咆哮する。


「今だ!!!」


 誰よりも先んじて、ビクトルが手にした『爆発スライムコア』を投げつける!

 それを合図に、一斉に皆が『爆発スライムコア』を投げつけた。


 電撃ゴーレムに纏わり付く電撃が、投げつけられた『爆発スライムコア』を微かに穿つ。


「キイィ!」


 甲高い叫び声のあと、「ドオォォォォン!」と爆発音が上がった!

 連続して、「ズドン! ズドン!」と爆音が上がる。


「ウオオ! ウオオオオオオオン!!!」


 驚いたような声をあげ、電撃ゴーレムの巨体が揺らめく。

 早くも右肩と腰にダメージを負い、その体勢が大きく崩れている!


「膝を狙え!」


 ゴーレムを人型に繋ぎ止めるパーツさえ壊してしまえば、足止め可能だ。


「うりゃあ! 剛斧弾んん!!」


 デクスターのマルカデミーガントレットが白く輝き、両手斧を電撃ゴーレムに向けてブン投げる!


 クルクル回転しながら両手斧が「ドガン!」と電撃ゴーレムの膝を撃つと、電撃ゴーレムは前のめりに倒れ伏した。


「チッ! これじゃ胸の装甲を狙えない! 残りの『爆発スライムコア』を投げるんだ!」


 しかし、日傭生たちは顔を見合わせてうろたえるだけで、誰も『爆発スライムコア』を持ち合わせていないようだ。


「ハハハッ! 倒れた相手にビビってる場合かよ! 首をちょん切ってやるぜ!」


 両手斧を構え直したデクスターが、追撃体勢に入る。


「やめろ! 不用意に近づくな! 電撃がくるぞ!!」

「うらあああ! 剛弾カチ割り撃いい!!」


 ビクトルの制止も聞かず、デクスターがスキルを発動する。

 両手斧を大きく振りかぶって飛び上がると、光の軌跡を描いて電撃ゴーレムに向かって急降下した!


「すりゃあああああああ!!!」


 降下する勢いで両手斧を「ブン!」と振り下ろす!

 その時!


 ビビビビッ!!


 電撃ゴーレムの身体中に激しい電撃が迸る!


「うぎええええええ!!!」


 まさに飛んで火に入る夏の虫!

 デクスターの身体が電撃に包まれて、激しく痙攣する!


 電撃をバシバシと周囲に迸らせながら、電撃ゴーレムが「ドン!」と両の拳を付いて、上体を起こした。

 その目は怒りに満ちた光を放ち、爛々と輝いている。


「コオオオオオオオオオ!」


 グイッと顔を上げると、床でのたうち回るデクスターに顔を向けた。

 その目にヒュインヒュインと音を立てて、青い光が集まり始める。


「やばい!! レーザービームだ!!」


 今のデクスターが避けれるはずもない!!


「上空全方位放射!」


 誰かの声が響くと同時、いきなり、電撃ゴーレムの顔がギュインと斜め上を向く!

 そして、グルリと顔を横に一回転させながらレーザービームを放った!


 ヒュウイィィィン!! ズドドドドドドドォォォン!


 青色のレーザービームが柱の上部を打ち砕き、粉塵が撒き散らされる。


「なんだ、今の!?」


 視界の端に入ったプルデンシアの瞳が……?

 ターコイズブルーの輝きを放っていたように見えて、ビクトルは目をこする。

 さっきの声も、プルデンシアだったような……。


 そうしている間にも、片膝をついて身を起こした電撃ゴーレムが、再びレーザービームを放たんとして再充填している!


「せやっ!」


 呆気にとられているビクトルを尻目に、電撃ゴーレムに向かって、サラが跳んだ!


「サラちゃん!」


 レーザービームが放たれようとしたまさにその時、サラが電撃ゴーレムの顔をポンと蹴って、クルリと宙返りを打つ!


 ヒュゥン!


 電撃ゴーレムの顔が斜め上を向き、サラの背中ギリギリをレーザービームがかすめた!


「はァッ!」


 「タンッ!」と床に着地したサラが、間髪を入れずにバトルナイフを切り上げる!

 電撃ゴーレムのフェイスマスクを真っ二つに切り裂いて、返す刀で胸板を斬りつけた!


 ザシュッ! ザグッ!!


「フオオウッ……!」


 物凄い斬れ味だ! これが闇属性の力!


 電撃ゴーレムの上体がよろめいて、胸の装甲が剥がれ落ちる。

 緑に発光するコアが、剥き出しになった!


「ダッカド!!」

「せいやぁっ!!!」


 素早く飛び退くサラの後ろから、ダッカドが一瞬にして電撃ゴーレムに詰め寄った!


「熱破竜巻斬り!!!!」


 マルカデミーガントレットが白く輝き、ダッカドが真横に曲刀を薙ぐ!

 さらに流れるようにクルリと身を翻すと、真下から真上に斬り上げた!


 「シュン!」と風を切り裂いて、白い十文字の軌跡が電撃ゴーレムのコアを捉える!


 パァァァァンッ!!!


 乾いた音を立てて、電撃ゴーレムのコアが破裂した!


「クオオオウ……」


 電撃ゴーレムの両肩がガックリと落ち、電撃が掻き消える。

 そして関節部のパーツが、ボトボトと床に転がり落ちた。


「『はぁ〜い、お疲れさまでしたぁ〜。ゴーレムすべて、討伐し終わりましたよ〜♪』」


 緊迫した空気の中、あの気の抜けるようなやけに明るい口調のアナウンス。


「デクスターの治癒を!」

「はい、もう終わってます」


 振り返るダッカドに、プルデンシアが余裕綽々で微笑み返した。




レーザービームとか、そもそも反則でしょ。聞いてないし。

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