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第5話 予期せぬ来訪者

 どうやってこの車を手に入れたのか、詳しくは話すと長くなるとのことで、昔困っていた人を助けたら、それからずっと懇意にしていたのだが、感謝の気持ちということで最近プレゼントが何欲しいと言われて、冗談でこの車を言ったら本当にプレゼントされたのだということだった。どんな友人だよ!と突っ込みを入れたが、軽くあしらわれ時間がもったいないからと、鍵を渡された。


 慎と鏡は、顔を見合わせ引きつった笑いを交わしながら、ガルウィングのドアを開き鏡さんを先に誘導する。車高が低いため乗り降りがしにくいため、エスコートして手を貸すようにと、祖父からアドバイスをもらう。乗り降りの際に、自然と手を繋ぐことになるのだ。ここで、慎は気づいた。


 このためにこの車を持ってきたのだろうなと。そして、爺さんは感慨深く何度も頷いている。当然ながら、こんな目立つ車は、注目を浴びる。しかも、お目見え麗しい鏡さんを車にエスコートして、フィッシュテールスカートをふわりとたなびかせ、バケットシートに収まる姿をみていた近所の人たちは、ほうっと溜息をついていた。そりゃこんな強烈なダブルパンチみたら、溜息でるだろうなと考えつつドアを降ろし、運転席につこうとした。


 その時、祖父に声を掛ける初老かという男性がいた。

「よう、左衛(さえ)ちゃん。えらい車だしてきたなぁ。でも、使ってくれてるのなら、嬉しいわぁ。」

 満面の笑みを浮かべて祖父と話している。俺は、お世話になってます。と簡単な挨拶を交わしたのだが、爺さんが、はよ行きなさいと急かしてくる。しかし、話しの流れとしてこの車を爺さんにプレゼントしちゃったのはこの人のようだし、こんな車プレゼントしてしまう人物に興味はあった。

 だが、今日は鏡さんもいることだしと考え、後で爺さんを問い詰めてやると心に決め、そそくさと車に乗って出発することにする。


 慎が軽く会釈して二人が、気を付けて行っておいでと手を振って見送ってくれた。


 走り出した車内で、信号待ちで横を向いた際、鏡さんと視線があった。鏡さんの顔が少し紅くなっている、どうしたんだろうと思ったら、突然吹き出して笑い始めた。釣られて、俺も笑い出した。笑うってすごいエネルギーを使うなと考えながらも、充足した時間を得られていることに幸せを感じている。


「なんで、なんでこんな車あるんよ。しかも、普通に農家で軽トラとかあったやんか。どこからこんな隠し玉持ってくるんよ。意表突くにもほどがあるわ~」


 両手で腹を押さええながら鏡が口を開くいた。腹を抱えて笑うとはこのことだろうな思いながら、慎は


「俺も、こんな車持ってるなんて、知りませんでしたよ。驚天動地とはこのことかと思いましたよ。」

 呼吸が荒くなりながらも答えることができた。


「しかし、あんたらなんなん?似非カフェ入店したら、お爺さん執事になってるし、お茶持ってくるって言うてたら、お盆は飛んでくるし、飛んできたと思たらいきなり慎くん指二本で体回転しながら受け取るし、どこの雑技団やねんって。」


 雑技団って・・・たしかにそう見えなくもないかと、思った。

「いやぁ、お恥ずかしい限りです。」

「いや恥ずかしくないで?スペックが高すぎて、呆気(あっけ)に取られただけやから、気にせんといてな。」

 関西弁が出ているので、興奮しているのがよくわかる。


 まずは、海側にあるショッピングモールに足を運んでみる。相変わらず周囲の視線が気になるが、そんなことは横に置いといて、車を駐車させる。

 先に、車を降りて助手席側の鏡に手を貸し、彼女は車外に足をだし、車から降りる。二人が車から降りたのを確認した後、何人かがこの車写真撮影していいか聞きに来たが、笑顔でどうぞと快く答えておいた。

「アザース。」

「ありがとうございます。」

 などと、謝意はまちまちだが、皆一様にしてキラキラと目が輝いているので、見ていて嬉しく思う慎であった。

 なんだったら、運転席座ってみる?なんて言いそうになったが、そんな事してたら収集がつかなくなりそうなので、自重することにした。

 モールの中をひと通り回り、コーヒーショップで休憩をとりはじめる。周囲を見回すと、結構客が入っており賑わっている。その中から、見覚えのある奴が一人本を読みながらコーヒーを飲んでいた。その姿は、あくまで自然で気取らない空気を(かも)し出しており、慎の隣にかけている女性のグループはどうする?声かけるみる?なんて声が聞こえてきている。それを知ってか知らずか、女性の方向を向いてにっこりと微笑んだ。これには、女性グループはうそ~聞こえちゃったかな~とかいいながらも、声をかけてもいけると踏んだのだろう、椅子から立ち上がろうとした瞬間に相手が立ち上がり女性達の方向へとゆっくり歩き出してきた。


 女性たちは、どうしよ~なんて言いながらヒソヒソと相談している。


 しかし、残念だがそいつは貴女(あなた)たちの元にはこないんだ・・・慎は溜息をつく。


「よう奇遇だな。慎、何やってんだ?暇だったんなら俺と遊ぼうぜ。」

 フランクに話しかけてきたそいつは、優希だった。そう女性達に向かっていたわけではなく、俺に気づいて席を移動してきたのだ。


「お前一人でなにしてんの?撮影あるって言ってなかったっけ?」

「あぁ、撮影場所がこの近所だったんだけど、現場が結構ゴミいっぱいあるってんで、じゃあいっそボランティア活動もかねて掃除して綺麗してから撮影しようぜなんてカメラマンやカメラアシスタントその他関係者が大盛り上がりしたんだが、俺は被写体だから汚れたらだめってことで参加させてもらえなかったんだ。」


 そう言いながら、海の見える窓の先を指さすと、集団がゴミ拾いしたり、大きな流木をもって走り回ったりしている姿が小さいながらも見えた。


 なにやってんだ?


 慎は、相変わらずなスタッフの方たちだなと、笑っていたが鏡の紹介を忘れていたので紹介をする。

「そうそうこちらは、男鏡(おのかがみ)さんだ、今日はちょっと遊びにきてるんだよ。そして、こいつは楠木優希、昔から付き合いのある友人です。」

 はじめましてと頭を下げる優希と鏡だったが、


「あの~優希さんとおっしゃいましたよね?もしかして、あの雑誌に乗ってる優希さんですか?」

 といって、優希がよく載っている雑誌の名前をいってみる。

「あぁ~そうですよ。見られるのが大好きなナルシルトなんですよ。」

 カラカラと笑っているが、実際はそんなナルシストどころか無頓着なのになと思いながら、クスクスと笑う。


「写真と変わらないですね!よくいうじゃないですか、実際はそうでもないとか。」

「そうでもないとは、ひどい!それは写真が良く撮れてないってことかなぁ。」


「そうじゃないんですよ。実物の魅力を写真で余すところなく表現できているってことじゃないですか!」

 力説する鏡さんだが、関西弁が出てないところを見ると、興奮度はまだ沸点には達していないようだ。

「ものはいいようだなぁ。」

 優希は、相変わらずケラケラ笑っている。


「で、いつから撮影開始されるの?あの様子だと、掃除やってんだか、遊んでんだかわからないんだけど・・・。」

 ほんとだねぇと言いながら、我関せずの優希であった。本当のところは、


「勝手に掃除始めてるんだから、俺のせいじゃないし、カメラマンやスタッフ達がやろうといいだしたことだからその目標を達成したら満足するだろう?その高いモチベーションが、いい仕事に繋がるだろうから今の俺の仕事は、モチベーション下げずに待つことなんだよ。」


 慎と鏡は、大人だここに大人がいると感心していた。

「優希、お前大人になったなぁ・・・俺は嬉しいよ・・・いつも俺の背中に隠れてたお前がこんな・・・うっ」

 少しからかってみたが、

「お前は、俺の守護天使だからな!あはは」

 だめだ精神攻撃は効かない、それどころか守護天使とか恥ずかしい言葉で持ち上げてきやがる。


「まぁ、でもあの人たちはいつも楽しそうに仕事してるよな・・・まぁ今やってるの仕事じゃないような気もするが。」

 慎がぽつりとつぶやくと、

「なんかもう終わりそうだし、二人とも撮影見学にこない?まぁ、慎は前みたく手伝わされるかもしれんがな。」

 えっと驚く慎と鏡を見ながら、優希は電話をかけ始める。


「あっお疲れ様です。優希です。そちらのボランティア活動の進捗状況どうですか?よかったら、そろそろそっちに向かおうかと思うんですけど。」

 電話の向こうからは、もう満足できるほどの活動になりつつあるらしいようで、合流しましょうとのことだった。

「それで、お願いがあるんですけど、モールでたまたま友人とあったんですけど、見学に連れて行っていいですか?一人は、前に強制的に手伝わせた奴なんですけど。」


 相手は、あぁ~赤坂くんだっけ?彼ならなんら問題なしだよ、なんなら手伝ってもらおう。なんていう回答だったとのことだった。


「おい優希俺一人ならいいけど、鏡さんに聞いてもないのに勝手に話し進めるなよ・・・」

 呆れ気味に抗議してみたが、当事者の鏡は、

「是非、見学をばさせてください。こんな機会めったにないことなので、見たいです。なんなら、道具もちとして手伝いますよ。」

 目を輝かせて、食いついてきた。

 

かくして、雑誌の撮影現場に向かう三人だった。





連投してみましたが、相変わらず勢いだけで書いてます。

お見苦しいでしょうが、目をつぶってください。苦笑


また、読んでいただきありがとうございます。読んでくれているだけで、作者は嬉しく喜びの舞を舞ってしまってます(心の中で)

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