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プロローグ

 プロローグ


 うっすらと見える光、掴めそうに見えるほどの距離だ。手をゆっくりと、光が逃げないように、恐る恐る伸ばしてみる。


「つかまえた・・・」

 思わず声が漏れてしまった。誰かに聞かれてないか、あたりを見渡してみる。

 まぁ、いるわけないよね。こんな街燈がほとんどなく人気のない夜の神社にいるなんて、物好きな人だけだ。

 おっと、今捕まえた光の元を確認してみる。点滅している。そう、蛍だ。ここの蛍は姫蛍といって、土から生まれる。源氏蛍とは違う生まれ方、輝き方をするので僕はどことなく気に入っている。

 大きさも、小ぶりでかわいらしくもある。手の中で温もりを感じた。そんな事あるわけないのに・・・

 覗くために少し指の間を広げてみる、光源が逃げようとしだした。そして、あっさりと逃げられた。

「まぁ、満足したしかまわんよな。」

 自分に言い聞かせるように呟いた。


「ただどんくさいだけやん。」

 突然クスクス笑いながら、話しかけられた。さっきまで誰もいなかったはずなんだが、夢中になりすぎてたのかなと考えながら、わずかな街燈の光で見える影の人物を見つめた。

「いやいや、運動神経は普通よりいいほうだよ。ただ優しすぎるのが、欠点なのよ。」

 思わず馴れ馴れしく言い返してしまった。気分を害してないかな・・・

 そんなことは、杞憂に終わった。

「ふふふ・・・そんな思いっきり否定せんでも、ええやんか。余計疑ってまうわ。」

 とても優しい笑い声だった。なにかこう・・・そう落ち着く笑い声だ。普段ならもっとムキになっていたかもしれない。でも、すべてを許せるそんな物言いで、思わずこちらも笑ってしまった。

「まぁ、そうだよね。どんくさいだけかもしれない。でも、運動神経はほんといいほうだよ。これだけは断言する!しかし、こんな暗くてよく僕がいるのわかりましたね?」

 こんな暗くて人がいるのなんてまずわからない。それに、人の気配もほとんどない神社の境内に≪女性≫がいるのが不思議だった。

 その女性は、また短くふふっと優しい笑い声を奏でてから、言った。

「うちはこの神社の宮司の親戚でね。この神社での神事があるから、お手伝いのためにちょっと何日か泊りにきてたのですよ。窓を開けて家でいたら、風がないのに境内の草や木が音楽を奏でるよう嬉しそうな音だしてたから、外になにかいるのかな?と思って外にでて散歩してたらあなたがいたのですよ。」

 女性はそういって、逆に不思議そうに僕を頭の先から、足元を観察していた。

「あぁそうだったんですか。暗くて人気のない境内でどうして女性一人でいたのか、不思議だったもので・・・どうしました?暗いから服とか汚れててもわからないですよ?」

 こうじっくりと観られると落ち着かないので、観察行動について聞いてみる。

「あぁ、ごめんなさい。こんな暗いのになんで見つかったんやろか、不思議って言ってたやろ?見つけた理由がもうひとつあるねん!」

 少し興奮気味に、女性は話し出した。

 しかし、さっきから大阪弁が織り交ざるのが気になる・・・少し気持ちが昂ると大阪弁が出てるようだが。少し苦笑いがでてしまう。なんか憎めずかわいらしい|女性≪ひと≫だなと、でも見つけられた理由がもうひとつある?なんだ?僕は、懐中電灯も持たず夜目に頼ってきたから、灯りで見つかったとは考えにくいんだが・・・

 女性は、呼吸を整えてから話しはじめた・・・


 うちが、自然の雅楽に誘われて、社務所から出てみるとやはり樹木や草が嬉しそうに音を奏でている。

 神社の嬉しそうな空気に、自身の気持ちも落ち着き安心感に包まれる感覚だった。少し、楽しくなってきたところで、本殿傍の森に光が集まっているのがちらっと見えた。懐中電灯の光じゃない!かといって蛍の光にしても明るすぎる。幽霊じゃないよね思いながら、恐る恐る覗き込むと、どうやら人の背中にたくさんの蛍がびっしりと敷き詰めらそれが明滅していたのだ。


 内心、なんじゃコリャーと思いましたよ。でも、その人は背中がそんな状態になっていることも、つゆ知らずそっと小さな光を優しく包むように捕まえる様をみて、あぁなんて優しい人なんだろうと感じた。話しもしていないのに不思議だ。


 で、気づかれないようにゆっくり近づいて、静かに観察していると、少しすると手の中から光が逃げていったのだ。


 そして、彼は言った。

「まぁ、満足したしかまわんよな。」

 とぼそりと、しくじったなぁといった風に呟いたのが聞こえたので、思わず突っ込みを入れたら背中の蛍はぜ~んぶ飛んでいっちゃた。もっと見たかったのに、残念なことをしたもんやなと思いながら・・・


読んでいただきありがとうございます。いきあたりばったりです。すいません。

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