新人王宮警護官の癒しは飴でする。
守秘義務符はきっちり腕にはった。
服も一般的なグーレラーシャ傭兵国の女性の服でシャーベットブルーの長衣、今年流行りらしい。
ズボンは同色のフレアのもの。
髪はハーフアップにして結い上げたところに透明の花の簪をつけるのも流行りでその上からレース地の日除けローブを着る。
それに小さいポシェットをしょって身支度は終了です。
うにゅー一般人にしかみえないですー。
ピアスもきちんと普通の青い石だし…カイレウスとのハニータルト食べ気が重いです~。
ことの起こりは一週間前。
いつも通りオプディア先輩と廊下の巡視の時にカイレウスが向こうからやって来たことに始まる。
「おー、へっぽこ王宮警護官!元気そうだな!」
剛力のカイレウスがのんきに声をかけた。
隣のオプディア先輩が怪訝そうな目で私を見ましたよ。
やめてください。
勤務中は当然私語厳禁なので無視しました。
「なんだ、愛想がないな、リン、あのハニータルトを食べたのがそんなに悔しかったのか?」
おかしそうに笑いながらカイレウスが言いました。
うにゅー、そんなに食い意地はってないです。
オプディア先輩が冷たい目で私を見てます。
やめてくださーい。
「よし、うまいハニータルトおごってやるからきげんなおせ、今度、通信機の番号を教えるからな。」
そういって楽しそうに笑いながらカイレウスが去っていった。
「お前…いつの間にヒフィゼ家の若君と仲良くなった。」
オプディア先輩が低い小さい声でいった。
な、なんか怖いです。
「ハニータルトとられただけです。」
それだけですにゅー。
「…もてあそばれるなよ。」
真剣な眼差しでオプディア先輩が小声でいった。
も、もてあそばれる気力なんてないですにゃー。
かくしてなぜかカイレウスとハニータルトを食べる算段がついてしまったのですにゅー…気が重いです~。
「可愛いぞ、へっぽこ王宮警護官。」
カイレウスが色気のある微笑みでいった。
「へっぽこ王宮警護官じゃありません。」
私はむすっとしていった。
王宮の裏門は今日も物品の搬入業者だので賑わっている。
「迎えにいくといってるのに、ここで待ち合わせとはな。」
カイレウスが私に手を差し出しながら言いました。
当然無視しました。
「目立つから嫌です。」
独身寮なんてこられたら目立ちまくって冷やかされますよ、そうじゃなくったって詰所でばれて同僚のミーティアに根掘り葉掘り聞かれたのに…。
「おい、手をだせ。」
カイレウスがしつこく手を差し出しながら言った。
「結構です、歩けますから。」
通り抜けようとすると強引に手を握られた。
「デートなのだから手ぐらいつながせろ。」
カイレウスが笑った。
うみゅー強引です。
久しぶりにでた王都はやっぱり賑やかです。
あそこの雑貨屋さん入りたいな…あの簪可愛いです。
「ん?なんだ見たいのか?」
カイレウスが止まった。
「いいんですか?」
久しぶりだから見たいですけどそういうのって男性は苦手ですよね。
「いいぞ。」
カイレウスがそういって笑った。
「みゅー、可愛いです。」
私はお目当ての簪を手に取った。
黒猫の透かし彫りモチーフには青いラインストーンの目青色系の色んな大きさのビーズと鈴がたくさん下がってる簪は私のモロ好みですー。
買っちゃおうかな?お仕事頑張ってるご褒美に。
「それがいいのか?店主、包んでくれ。」
カイレウスがそういいながら財布を出した。
「え?いいです、私が払います。」
働いてるですからそのくらい払えますよ。
片手をつながれたまま財布をポシェットから出そうとワタワタしてるうちにカイレウスに払われた。
うみゅー、あとで代金を受け取ってもらいます。
「代金はらいますよ。」
私は店の外に出てすぐに財布を出した。
「これでいい。」
か、カイレウスが私の頬っぺたにき、キスしましたにゅー。
ろ、路上でキスしないでほしいですにゅー。
「真っ赤だな…いい傾向だ。」
カイレウスが色っぽく笑った。
「やめてください。」
私は少し離れた。
「可愛いな。」
カイレウスが私を抱き寄せた。
うみゅー、困ります。
顎持ち上げないでー。
「へぇー、姉さん…その人誰さ。」
後ろから声がかかった。
聞き覚えのある声が…。
抱き締められたまま顔だけそちらを向ける…いたよ…いました…わーん見られた。
「誰だ?」
確実に緊張した声でカイレウスが私を抱き込んだ。
「その抱き込んでるいきものの弟だけど。」
聞き覚えのある声の主…レフェルウス・ファウルシュティヒが海老茶色の王都警務官の格好でたっていた。
そう、弟は王都警務官になったんです。
やっぱりお母さんに憧れてかららしいけど。
王都警務官は町のお巡りさんです。
服装は王宮警護官と同じたて襟長袖で同じラーキャとミツバチの襟章と右肩章、連絡用ラーキャの花弁の銀のピアスですが、ベースが海老茶色で王宮警護官の小豆色と違います。
赤い髪の毛の弟はよく似合います。
典型的なグーレラーシャ人ですから…。
顔は少し違いますけどね。
黒髪の私は少し外国人…明正和次元人っぽいって言われてます、本当はニホン人なお母さんと色調が瓜二つなだけです。
私、お父さん似ですから。
かわいくないんですよ。
「生き物だと…面白い表現だな。」
カイレウスがニヤニヤした。
「レフェルウス~ひどいです。」
私は抱き込まれたままじたばたした。
「暴れるな…もう抱き上げた方がいいか?」
カイレウスが私を見つめて言った。
「そういう関係じゃありません。」
私は慌てた。
「痴話喧嘩かい?」
レフェルウスが半眼になった。
「うみゅー、痴話喧嘩じゃないです。」
そんな関係じゃないはずです。
「ファウルシュティヒ警務官!どうした。」
向こうから先輩警務官がやってくる。
「ジエルキス先輩、紹介しろっていわれてた、姉です。」
レフェルウスがニコニコ言った。
目、目が笑ってないよ。
「おい、男付きじゃないか…。」
ジエルキスさんが不機嫌そうに言った。
「ええ、オレも初めて姉の恋人にあいました、よっぽど王宮警護官は暇らしいですね。」
レフェルウスが言った。
王宮警護官と王都警務官は基本的に協力体制にあるけど…ライバル意識が根底にあるんです、王宮警護官は暇じゃないですにゃー。
「…弟殿、この通り、オレはへ…リンに求愛中だ、邪魔しないでいただこう。」
カイレウスがそういって私を肩に担ぎ上げた。
担ぎ上げないでください。
「そこは抱き上げるところではないのか?」
ジエルキスさんが突っ込みを入れた。
「とられたくないからな、失礼する。」
カイレウスはそうってあるきだしましたみゅー。
「姉さん、無事を祈るよ。」
弟がヒラヒラと手を振った。
隣のがっしりしたジエルキスさんは腕組みして見てる。
「助けた方がいいのではないか?」
ジエルキスさんがいうとレフェルウスはいいんですよとジエルキスさんをうながしてニコニコ向こうにいった。
「うみゅー、おろしてください。」
私は肩の上で言った。
「リン、オレはお前に求愛してるんだぞ。」
ワイルドな色気のある声でカイレウスが言った。
このまま流されていいのですかにゅー。
「よくないです。」
うん、ダメですにゅー。
求愛行動は対等にが原則って傭兵学校でも習いました。
私は足をカイレウスの胸にかけて反動をつけた。
「おい、リン。」
カイレウスの腕がゆるんだのを狙って飛び降りる。
うまく受け身を取る。
私だって王宮警護官です、そのくらいできます。
「まだ、知り合って間もないのにそこまで行けません、帰ります。」
私は起き上がって言った。
「おい、ハニータルトはどうするんだ、それにオレは本気だ、メルに取られる趣味はないぞ。」
カイレウスがいってるのが聞こえた…メルって誰ですか?
「ハニータルトはまた今度お願い致します。」
私はさっさと人ごみに紛れ込んだ。
「おい、待てリン。」
カイレウスの声が聞こえたけど逃げるです。
カイレウスは大貴族のご子息です。
きっと私みたいな庶民に本気になるわけないです…。
あ…なんか胸がちくってしました。
べ、べつに本気に何てしてないですにゅー。
飴でも買ってかえりますにゅー。
ふぅ…な、なんでため息が出るかわからないです。
し、仕事頑張るのが一番…あ、簪代払い忘れたのです…顔あわせづらいけどなんとか払うですみゅー。
うん、それでたちきるです。
雲の上の人ですから…。
今日はギーデル飴店で買うです…贅沢だけど…無性にあの果汁いり飴がたべたいです。
癒されたい気分ですにゅー。