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第四話 生徒会への……? 

「―――の奴らをブッ飛ばす件だが、ぶっ飛ばすことに異論はあるか?」

 杏の重々しい言葉が室内に響く。

 確か、俺は任務でこの辺りの地域の管理を任されていたはずなんだが。

 俺は何をやってるんだろう……

部室に入った直後、暗い部屋、重々しい沈黙、その中で、長い間一緒にいる相棒、杏がみんなにむかって真剣に語りかけているところだった。

「異議なーし」テキトーだが怒りのこもった声の真央。

「やるしかないね!」怒りをあらわにするざくろ。

「サブマスターの言うことだから従いましょう」しぶしぶながらもちょっと愉悦の入った声を発するスフィア。

「普段は生意気なあいつらを懲らしめれるならそれで十分だぜ」夕の興奮した声。

「よし! みんな、いや……広兼がまだだったな、どうだ?」

杏がそう俺に問いかけてきた。

「いや、どうだ? じゃねぇよ……あのな、お前ら」

俺が部屋のカーテンを開け日光を入れる。

「生徒会にケンカ売ってどうするんだよ!」

そう、杏は生徒会にけんかを売ろうとしているのだった。

 しかし、なんで、生徒会と揉めたかって? それは、昨日にさかのぼる。

―――わいわいと今後の活動を部室で相談していたら、突如、扉が開かられる。

「なにしてるです? ここは科学探究部じゃないんですか?」

 そこには、口紅のように紅い髪の天然なのか作られたのかパーマがかかっている髪に、長いまつげに、細く切れ長の瞳。同じく紅い唇をした。生徒会書記の腕章を付けた女性とが仁王立ちをして、広兼達を見下ろしていた。

 雷儀秋葉である。

「なんで、お前が居るんだ、あたしたちはいま活動で忙しい」

 部外者である雷儀に、杏がつっけんどんな態度をしめす。

「それはね、これです!」

 そこには、スフィアのあられもない姿が映っていた。ああ……あの時の写真か。

「これはこの間、たまたま、たまたまです、ここの窓からとれた写真です」

 手に写真を持って、大きな手振りで一生懸命説明する雷儀はどこか勝ち誇っている。

「まあ、たぶんー いまは君の方が下ネタ言ってると思うけどねー」

 真央がのんびりとした口調で言う。そこつっこむところじゃないよ……

 でも、効果があったらしく雷儀は顔を真っ赤にして。

「とにかく! 不良とちびっこ金髪とブラコンとあほげとエロゲマニアと大食い娘がいるこんな部活、次にこんなことしたら廃部です廃部!」

 そういうと、雷儀は写真を机に叩きつけて、スタスタと帰って行った。

 雷儀の言葉をうけてみんなの空気が、みしみしと音を立てて軋む。

「ま、まあ、とりあえず今日は帰ろう。な」

 広兼がそういうと、みんな無言で帰宅していくのであった―――

 それで現在に至る。

「言っとくけど、俺は反対だからな、生徒会にこのことを伝えるし、参加もしない」

俺は真っ向から反対する。

「しかし、この日本は民主主義、多数決には従ってほしいんだが、あくまでも反対、つまり、あたしたちのことを馬鹿にした奴等を見逃して、泣き寝入りすることを選ぶと」

杏が俺を挑発してきた。

「いや、いいんだ、広兼が相棒であるあたしを見捨てて、あまつさえ裏切って生徒会に組するなんて、そういう男だったと、あたしが思うだけだから」

 悲しそうな表情で杏が言ってきた。

「マスターはそんな人間だったんだね、ぐすん」スフィアも追い打ちをかける。

「ああもう! わかったよ、手伝えばいいんだろ!」

その瞬間、杏がにやりと笑った。

「言質は取れた。これでもう逃げられまい」

「仕方ない! やるからには完璧な作戦を作るぞ!」

「それでこそ、広兼だ」

杏がうんうんとうなずく。こうなることに予測はついていたんだけれどね……


 俺はふと尋ねた。

「お前らが懲らしめたいのって、雷儀だけだろ? 何も生徒会までしなくてもいいんじゃないか?」

「あいつには連帯責任というものをわからせないといけない」

 いや、悪口がそんな大層なこととは思えないぞ。

「まあー ひろっちの言うことは一理あるねー」

 真央がのんびりという。

「だろ? 正直生徒会相手にもう一度、何かするのは難しそうだ。それに部活取り消されるとそれこそ思う壺だろ」

「確かに一理ありますね、じゃあどうするんですか?」

 ざくろが期待した目を向けてくる。

「なら、原点に戻ろう、馬鹿にしてきたのは誰だ?」

「雷儀秋葉です」

 スフィアが答える。

「そう、ならそいつに仕返しすればいい、例えばこれとかね」

 俺が窓際の枠につけられていた、小さな盗聴器を握りつぶした。

「俺はこういう類のものに鼻が利くから昨日はなかった、つまりこの盗聴器は今日の朝くらいに取り付けられたのものだろう」

「すげぇ、広兼ってそんなのもわかるんだな」

 夕は感嘆の声を上げた。推測だが、生徒会の権限を使えばできそうなことであると俺は思っていた。

 「さすがにここまでされると俺も黙っちゃいない。しばらく再起不能な恥をかかせてやろう!」

 「もちろんだ」「了解です」「はいよ」「はーい」「おう」

 みんなの返事を聞くと、相手方に同情するような計画を話すのであった。


―――私、雷儀秋葉は、生徒会の仕事を素早く片付けると、科学探究部が見える、校庭と校舎の間にある茂みに隠れた。ここは運動部以外誰も通らず、隠し撮りをするには最適だからです。

 何でこんなことしているかというと、それは最近、鷹目広兼という不良が作った。部活を廃部に追い込むために、決定的な写真を撮るためなのだ。ふふふ、我ながら完璧な作戦に笑いが止まらないです。

 しかし、昨日はミスをしたのです。あの写真は一枚だけでコピーとかしていなかった。やっぱりデジカメの使い方覚えた方がいいかな? すぐに現像されるカメラだと一枚しか残らないです。でも、私、機械苦手だからな…… それに今日の朝取り付けた、盗聴器も調子が悪いのか何も聞こえないです……

 まあいいか、どうせまた先日のような写真はすぐとれるだろうし……

件の部室にカメラを向けた。

今日はまだ誰も来ていないみたいね。もしかしたらこの場所がばれたのかもしれない、だから逃げる準備もしておこう。

しかし、それは杞憂であったようだ。部員の全員が部室に集まり談笑をし始めたのである。

 そのとき、部員の残念イケメンのひとりがちらりとこちらを見た気がした、ちょっとびっくりし、カメラを外したが、近くで鳥の声が聞こえたので、それを聞いたのだろう。

良かった、まだ気づかれていなかったみたいです

 私は安堵し、カメラを向け直す。すると、驚いた。どういう経緯かは知らないが女性陣が

窓際で衣服を脱ごうとしている。これはシャッターチャンスだ、また、以前のような卑猥な格好になるに違いない。そう思い、カメラのボタンに手がかかる。しかし、なにかを話したと思ったら、急にカーテンを閉めた。

「え? なんでです! 何か掴めると思ったのに!」

 しかし、ここで諦めるわけにはいかなかった。もう一度カメラをカーテンに向ける。

 すると、急にカーテンが開き、服を着た金髪のちびっこがしっかりとこっちをみて、中指を立てている。しまった! 罠です! 

そう思った時には後ろに人の気配がした―――


 夕が窓を一度見たときはひやりとしたが、俺たちは勝利を確信していた。作戦はこうだ、まず相手に油断させるために一度教室を出て、雷儀が生徒会室から出るのを見計らって、しばらくして、全員で部室に入る。そして、杏が机の下で熱源発見装置サーモサーチャーを使い近くの怪しい場所を特定する。そして、そのあと、雷儀を逃がさないために、女性陣が窓際で外を眺めながら服を脱ぐふりをする。そのときに何かに気付いたようにカーテンを閉める。そこで、杏から、前回スフィアに渡したボールを真央が受け取り、スフィアがデジカメを持つ。そして、ざくろと一緒に三人で雷儀の後ろにテレポートする。まあ、急に表れたからと言って。気が動転しているだろうし、気づかれないだろう。と、まあこういう作戦だ。

「はははー あほ毛って言った罰だー」

そういうと、こちらを振り返った雷儀に向かって、真央がボールを足元に向かって投げる。そうすると、そこには。

 天然パーマの赤髪に合うように黒いハートマークのカチューシャをしており、胸の真ん中あたりの左右それぞれトランプのスペードとクラブ、ふくよかな胸の谷間にダイヤのマーク、そして最も大事な三つの部分には申し訳なさ程度にハートのマークの布で隠されているのであった。

 あられもない姿になった雷儀に向かって容赦もなくシャッターを切りまくるスフィア。

「どうですか、この屈辱は? くせになりません? ほらほら、なんか言ってくださいよ」

 スフィアはとても楽しそうである。

「な、ななな、なんです、これ! 何で私がこんな格好に……!」

「まあ、罰なんじゃないですか? 大食い女とかひどいことを言った人には……ってさすがにやりすぎな気もしますが」

 ざくろがちょっと申し訳なさそうな顔をした。そこで、杏が窓を開けてわざとらしく叫んだ。

「キャー 茂みに変態が居る!」

「ひぃぃぃぃぃ、やめてぇぇぇぇ!」

 雷儀は半泣き状態である。

 杏の叫びを聞いたのか、一人の教師が本館の廊下から、こちらに向かって駆けつけてきた。

「どうした、何かあったのか」

「そこの茂みにもがっ――」

「いや、そこの茂みからウサギが飛び出して校舎に向かって行ったから、驚いて叫んだんですよこいつが」

 さすがにやりすぎだと思い俺は杏の口を塞いだ。

「そうか、ウサギなんて珍しいな、気をつけろよ」

 教師は引き換えし、本館に戻って行った。ここらを潮時だと思い。

「スフィア、真央、ざくろ、もう気が済んだだろ」

 俺は三人に声をかける。

「どうなんですか? 正直に言ってください、素直になった方が楽ですよ」

 スフィアはまだ煽っているようだ。

「おい、ざくろ、暴走してる。スフィアを止めてこい」

「はいはい!」

 ざくろは元気よく返事をし、スフィアを引きずって帰ってきた。

「雷儀! 今回はこの程度で許してやる! これに懲りたら盗撮とか盗聴とかはもうするなよ」

 俺は厳しく言った。

「くぅぅぅ、こんちくしょうです!……覚えてやがれですぅ! と、ところで……こ、この姿どうしたらいいんです?」

 雷儀の悔しそうな質問に杏が意地悪く言った。

「ふふふ、着替えるしかないぞ。その姿で校内を歩き回るんだな!」

「ふえぇ! そんな~」

 雷儀は遂に泣き出してしまった。

「大丈夫、30分で元に戻るからそこの茂みにでも隠れとけ」

「そうなのぉ? 良かったぁ」

 とても、安堵した表情をした後、恥ずかしそうに茂みに隠れた。しかし俺はまだ四月の終わり、肌寒いだろうと思い。上着を茂みに投げた。

「寒いだろう、それでも着とけ」

 一応、俺は優しく声をかけた。

「べ、べつに寒くないです! ……ありがとうです」

 ぼそぼそと最後の方は聞こえなかったがまあいい。

 こうして、生徒会ではないが雷儀への復讐は完了したのであった。

 撮った写真だが、なにやらスフィアが大事そうにデジカメを持っていたので何も言えなかった。


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