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第三話 王様ゲーム

 生徒会から設立を勝ち取った、広兼達、科学探究部は、授業がある本館の隣の東館3階の一室を部室として与えられた。本館とは違い、少し寂れているが、数年前、耐震工事をしたので割とこぎれいな感じになっている。

 次の日、俺たちはそれぞれ、思い思いの物を部室に持ってきた。

 広兼はもちろん、小型冷蔵庫を持ってきた。大変だったが広兼の大好きな焼きプリンを保存するには必要な物なので仕方がない。

 そして、荷物整理がひと段落した後、俺たちは部屋にある長机に座り、俺たちRCONの事情を知らない、夕と真央に秘密厳守という条件でざくろを含む素性を話した。二人の反応は。

「まあ、3人はどこか変だったし、何かあるかとは思ってたけど、俺はそんなのどうでもいいし、これからも友達なのは変わらないぜ」

 夕はきらりと眩しい笑顔でそう言った。お前に変とはいわれたくないがな、と一応つっこんでおいた。

「そっかー……」

 真央のだるそうな目が一瞬見開いて、困惑の表情が浮かぶ。

 そして、二本の前のアホ毛をいじると

「別に気にしないよー」

すぐにのんきな声で笑って真央は答える。

 すこし、気になったが、まあ、超常現象の有無に戸惑ったのだろう。

 そんなこんなで、俺達は素性を明かしたが何も変わらなかったのである。

 そのあとである。きっかけはざくろのこんな言葉。

「せっかく部ができたし、打ち上げみたいなのしよう!」

「お、いいな、せっかくだし、盛大にやろうぜ」と、杏

「サブマスター が言うなら、しょうがないですが、私も参加しなければいけないですね」

 スフィアがのり気で返事をする。

「私もお菓子食べたいー」

「こういう、美少女ゲー 的展開! 待ってました」

 夕と真央も乗ってきた。そうなると俺も乗らないといけないわけで。

「そうだな、じゃあやろうか、とりあえず、コンビニでいろいろ買ってくるか」

 そういうと、みんなでコンビニに行くことになった。俺も結構面白そうだとは思っていた。

 そして、大量のお菓子とジュースを机に置き、みんなそれぞれ好きな飲み物を紙コップに注いだところで、部長の俺がなりゆきで音頭をとることになった。

「えー 今回は生徒会から設立の言質を取るにあたって、いろいろとありましたが、まず――」

「長い! 一言で」杏の一喝で

「科学探究部設立おめでとう!」

 みんながわいわいと紙コップを合わせる。そして、お菓子を真央とざくろが競うように食べるのを見ながらゆっくりとペプシを飲んでいた。

「なんか、これだけじゃ物足りないから、なんかゲームしたいな」

 杏がふと、つぶやいた。

「こんなときは、ボードゲームが主流とどこかで見たことがあります」

 と、スフィアが。

「先生……すごろくがしたいです」

 夕がどこかで聞いたことがある言葉を言う。

 俺もこの時は幼稚園以来やったことなかった。すごろくをやるのは楽しいかなと思った。

「すごろくか、ちょっと待てよ……あったあった」

ポケットから50cm四方の紙と黒いさいころを出した。

「これをやってみよう、最近発明したんだが、マスに止まったことがリアルに体感できるスゴロク」

 杏がまた物騒な物をポケットから取り出す。株が大暴落と化したらどうするんだよ……

「いやいやいや、なんでそんなもの作ってんだよ」

「は? 面白そうだからに決まってんだろ」

 杏は平然と答えた。雲行きが怪しくなってきた。

「まじで、それすげぇやりたい!」

 何も知らずに楽しそうに返事をする夕。

「また今度にしよう、な?」広兼は必死にストップをかけようとして

「すいません、サブマスター、マスターもそう言っていることですし、また今度にしましょう」

 スフィアも危険な香りを察知したのか、止めにかかる。

「ぐぬぬ、そうか、なら、代案があるんだろうな、広兼?」

 不機嫌そうな感じで杏は俺に訪ねてきた。

「あ、ああ……えーと……」

 そのとき、真央が何かを提案する。

「おおさはへーむがひい」

「お菓子を飲み込んでからしゃべろ」

 よく聞き取れないが嫌な予感がする……。

「王様ゲームがいい!」

 王様ゲーム? おいおいおい、杏にかかるとそのゲームとてもおそろしいことになるぞ。

「そ、それにしましょう」

 そうとは、知らずにスフィアはすごろくを回避するためにそれに賛同した。

「俺はそっちでもいいぞ」

 夕はそう答える。ざくろはまだお菓子を食べていた。

「賛成多数で決まりだな。王様ゲームにしよう、ただの王様ゲームじゃつまらないから幅を広げよう、そうだな、犯罪的なこと以外なら、超常的なこともあたしの手にかかればなんでもできるからそういう命令もありにしよう」

 杏が邪悪笑う。

「ちょっと待った! 部長権限だ、一つルールを加える。それをしないと王様ゲームの実行を認めない、一人一回だけ拒否をして構わないというのを加える。そうしないととても恥ずかしい格好をさせるなどのことをさせられたら敵わない」

 ここでやっと、ことの重大さに気づいたスフィアが真っ青になり、俺に耳打ちしてきた。

「すいません、マスター、気づきませんでした」

「いや、スフィアは悪くない」

 俺たちの心配をよそに、お菓子をたくさん食べて満足したざくろ、わくわくしている真央、何も知らない夕、を加えて王様ゲームは始まってしまうのだった。


 みんな割り箸に名前を書いて、コップの中に入れ一斉に引いた。

最初の王様は……俺だった。

 正直、何されるかびくびくしている分だけ、命令を何も考えてなかった。

「じゃあ、1番の人、ブリッジ」

 ブリッジになら誰がしても大丈夫だろう……という考えは、広兼の浅はかな考えだった。

「了解です」

 どうやら、1番はスフィアだったようで、手を付けブリッジした。ここで俺はミスをしたことに気付いた。女の子が多いこのメンバーでブリッジをするということは……つまり、スカートの中身が見えるということだ。スフィアは恥ずかしさで顔が赤く染まっていた。まずいな、スフィアも怒らせてしまった。安牌がもう、俺が王様になるしかないじゃないか……

 次に王様を引いたのは……スフィアだった。

「3番の人、反重力装置で天井に立つ」

 さっきのブリッジで吹っ切れたようなスフィアが、滅茶苦茶なことを言ってきた。

「はっ? そんなことできないよ、スフィアちゃん」

 夕は冗談かと思い、スフィアに笑ってかえす。

「何を言ってるんだ夕、あたしの手にかかればそんなこと簡単だ」

「はっ?」

「ほい、この靴を履け」

 杏から渡された。その靴を履いた夕の足は天井に吸い込まれるように着地した。

「すげぇ……でも、これ頭に血が上る」

「男だろ、我慢しろ」

 杏はそう言い放った。男とか女とかそういう問題なのだろうか?

 次の王様は……真央だった

「4番の人、杏ちゃん特製のエロい水着を着る!!」

 滅茶苦茶なことを言ってきた!

 そうか……さっき、ゲームが始まる前に杏と話してたのはこれだったのか……

 そして、そっと、プルプルと震えながら手を挙げたのは。哀れなことにスフィアだった。

「しょうがないしょうがないしょうがないしょうがない……」

 念仏のように、しょうがない、とつぶやいていた。

「広兼か夕が当たるのを期待したんだけどな、残念」

「いや、俺と夕以外にあたること考えろよ!」

 俺は王様ゲームの恐ろしさの片鱗を味わう。

「ほれ、このボールのスイッチを押すと煙出るから、それで煙が晴れたらそうなってる、30分で戻るから」

 杏からボールを渡されたスフィアは意を決したようにボタンを押した。すると、ポンと軽い音とともにあたりが煙に包まれる。

 そこには、漆塗りのような黒髪とほとんど素肌のコラボレーション。大きすぎずも小さすぎずもなく主張した、胸の中心部の大事な部分に丸い赤いハートマークのシールが貼ってある。下半身も股のラインが見えそうだがギリギリ見えないラインでハートマークのシールで隠されてある。他は裸の水着……というか、ほぼ全裸の、もうそれは痴女にしか見えなかった。

 ボディラインがはっきりして、スタイリュッシュなエロさを醸し出していた。

「……なんでこんなの作ってんだ?」

 俺はスフィアの身体を直視できず、杏の方見ながらを呆れて呟く。

「遊び心だ、それ以上でも、それ以下でもない!」

「やりすぎだろ!」

「まあ、本人に似合うような水着に変わるようになっている」

 杏が自信満々に言う。どこに誇る要素があるのだろう? 

当の本人はというと。

「は、恥ずかしい……でも、これはこれでいいかもぉ……」

 と、スフィアは蕩ける様な表情でドン引きするようなセリフを吐いた。

「だ、大丈夫か?」

「な、なんだか……体がすごく熱い……く、癖になりそう」

 変態だああああああ、と俺は心の中で叫ぶのであった。


 そのあとは、真央が2ざくろだったに恥ずかしい過去を語らせ、次は俺が親で、スフィアのために元に戻れと命令すると、指名された番号はざくろだったらしく、何の意味もなかった、そして、遂にやってきてしまった。来てはならない王様が、

 杏が王様になってしまった。

「ふふふ、何を命令しようかな。ふふふ」

 とても、人間のものとは思えないような邪悪笑みを浮かべこう言い放った。

「1番、性別を転換しろ!」

「はあ!?」

 1番は俺だった。

「問答無用!」

 そういうと、ポケットから取り出したスプレーを広兼にぶっかける。唐突すぎて訳が分からなかった。広兼の身体は、胸板が大きく膨らみ、股間のアレが無くなり、腰がくびれる。

「うう、胸が苦しい、それに……本来あるべきものがない!」

 俺は思わず叫んでいた。その声はクールな女性の声だった。

「制服はこれを着ろ」

 ばさっと、なんとなく合いそうな服を俺になげ渡されたので、いそいそと柱の陰で着替える。

「うむ、試したいことも試せたし、次で最後にしよう!」

 そういうと、最後のくじが始まった。

 最後の親は……スフィアだった。

 完全に振り切れているスフィアはこう言った。

「2番と4番はポッキーゲーム!」

「「俺かよ!?」」

 俺と夕の声がはもる。え? こいつとすんの?

「まあ、やってやらなくもない」

 女の俺にたいして、夕はまんざらでもないらしく、笑顔で答えた。そんな笑顔にドキッ、としたのは、女の体になってるからと信じたい。

そして、まだ逆さの夕と、普通に立ってる俺がプッキーを咥える姿はシュールだ。

ポリ、ポリ……

夕の顔が近づいていく。

目を瞑っていて、こう見るととてもかっこいい……あれ、ちょっといいかもしれない……

ポリ、ポリ……

後、数センチ。

広兼が女だからだろうか、少し顔がほてってきているし、頭もぼーっとする。

そして、だんだん顔が近づいてきた、そして――

杏が手刀でポッキーを折る。

「ふん、ポッキーが折れたらそこで試合終了だ」

 そう言うと、杏はフン、と顔を背ける。

 広兼はそれで我に返り、今思っていたことに恐れおののいた。

「俺は……いったい……」

「マスター、そういうのもありだと思いますよ」

と言う、スフィアに対して。「ねぇよ」と軽く、返事をするのだった。

「ところで杏? なに怒ってるんだ?」俺がそう訊ねると。

「ひろっちはにぶいね」と真央に笑われた。

 そうして、世にも恐ろしい王様ゲームは幕を閉じたのであった。スフィアは30分程度で元に戻った、なんか物寂しそうだったのは気のせいだと思いたい。俺のは時間がかかるらしく、その姿のまま帰ることにした。

「なあ、俺、忘れられてない? どうやって降りればいいの、これ」

 夕の言葉がみんなの帰ろうとする背中に響くのであった。


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