第十八話 VS魔法使い
俺たちはどしゃぶりのなか、真央を捜索する。真央は魔法使い襲撃を知らない。もたもたしていると手遅れになる。
手分けして探すことにした。俺は学校から南に向かって走り出した。
そのとき、小さな公園のベンチで雨なのにうなだれてる人物を発見した。
真央だ! そう思い駆け寄った。
俺はすぐみんなに連絡をとり、みんなもこの公園に来るように連絡をする。
「真央! 時間がない! 聞いてくれ!」
俺はうなだれて真央に必死に呼びかける。
「……私とひろっちはもう敵なんだよ、敵に何を言われても、もう遅い……」
制服や、くすんでいるが綺麗な茶髪は、雨でぐちゃぐちゃだった。
「ふざけるなよ! 組織同士は敵かもしれないけど、俺達は敵じゃないだろ! 友達だろ? 真央はそう思ってなかったのか?」俺は必死に問いかける。
「友達だよ、でも、私がどれだけ悩んでたか知ってるの? こんな欲しくもない強い力を持って生まれて、勝手に組織に組み込まれ。必死に足掻いても、何も変わらない、私のそんな気持ちがわかるって言うの!?」真央の悲痛の叫びに
「そんなもん、本人以外分かるわけないだろ!」俺は吠えた。
俺の言葉に真央はビクンとする。
「だけど、本人の気持ちは本人しか分からないかもしれない、でも、そのつらい気持ちを俺たちに話して分かち合うことはできる。できるんだ! 俺たちもその気持ちに少しでも力になれることもできる。そういうのが仲間、いや友達ってもんじゃないのか?」
俺と真央は大声で叫びあう。
「広兼はまだ……私のこと、友達だって認めてくれるの?」
涙を浮かべている目がすこし期待してこっちをみている。
「ああ、もちろん」
「こんな、妖怪の私でも?」
不安そうな声だ。
「そんなの関係ない、真央は真央だ」俺は優しく微笑み。
「そっか、良かった。うん、良かったよ」
そして、真央は泣き崩れた。俺はその真央を抱きしめる。
後ろから、杏とスフィアとざくろが駆け寄ってくる、そして、遅れて、夕もやってきて駆け寄ってくる。
「まあ、そのなんだ、あたしらも急にピリピリした空気を作って悪かったよ」と、杏がぽりぽりと頭を書きながら謝る。
「サブマスター、私はサブマスターの雰囲気に合わせただけです」
「あ、スフィアずるいぞ、あたしだけ悪者にするなんて」
「急いでティーカップを片付けた俺が一番の功労者だろ」
そんなことを言っている、みんなに思わず笑みをこぼした、真央だった。
しかし、そのとき、空中に10の人影が見えた、次の瞬間、一斉に色とりどりの弾を放ってきた。俺はとっさにみんなを突き飛ばす。公園が穴だらけになり、一つの弾が俺に直撃する。
「ぐはっ……奇襲とは、くそっ、油断してた」
肩に大きな火傷をした。俺はその場に倒れる。
「ひろ……かね……?」
杏が広兼に近寄ろうとした、しかし。
魔法使いたちは俺のとなりに降りてきて、言い放った。
「止まれ! そして、おとなしくそこの妖怪を渡せ、さもなくば、こいつみたいになるぞ」
そして、魔法使いたちは広兼を蹴飛ばす。
その瞬間、杏、スフィア、真央、ざくろ、目の色が変わった。
杏はポケットから大きなパワードスーツを取り出すと、一瞬で中に入るように着る。その瞬間消える。光学迷彩だ。
「な、消えただと! ぐはぁぁぁ」
魔法使いの一人が、急に表れたパワードスーツを着た杏に殴られ、昏倒する。
しかし、魔法使いたちも負けていない、仲間がいたところに向かって魔弾を放つ。
しかし、スフィアがそばにあった電柱を引っこ抜き、杏の前に盾になるように投げ、それらをすべて防ぐ。
「お前らは仲間をなんだと思っているんですか?」
スフィアが冷徹な声で質問する。
「任務達成のためなら犠牲を伴わない。それが俺達『藍の教会』だ」
「そうですか、おかげで、容赦しなくてすみそうです」
スフィアが感情のない声で答える。
「何を言ってるんだ?」
「制限解除」
スフィアがそうつぶやくと、近くにあった電柱をまた引っこ抜き、前に突きたてる。ポケットからワイヤーを前に投げ同時に手を覆うように左右に出す、すると電柱が音を立てて一瞬で丸いコンクリートの塊にワイヤーが付いた、まるで大きなモーニングスターみたいな武器に変わる。
そう、これがスフィアの能力、目の前の物体をどんな形でどんな大きさでも一瞬で球体にすることができる。故にスフィアなのだ。
そして、それを目にも留まらぬ速さで、話していた魔法使いに向けて投げる。魔法使いはかろうじて避けるが、それでは終わらない、そのまま横なぎにして逃げた方向に塊を振り回し、二人を巻き込んで、壁にぶつける。残り7人。
「いったん逃げるぞ」
「逃がしませんよ」
「え?」
「知ってますか、人間って血液に少しでも異物が入ると昏倒するんですよ」
ざくろがちょっと残酷に笑ったかと思ったら。手に持った。両手に持った砂が消える。その瞬間、二人はばたりと倒れる。
「くそっ、敵は水雷の女王だけじゃなかったのか、なんNSOのESPの連中が攻撃してくるんだ、空中に逃げるぞ」
「待て、早まるな」
4人が空に逃げると。
「あれー 雨降ってるときに、私を相手に空に逃げるなんて、ほんとにこの私、水雷の女王を倒しに来たんですか?」
真央はいつのまにか髪が赤く染まり、アホ毛がなくなり、代わりに横に歪な角が生えていた。
すると、あまりの速さにほとんど目が付いていかなかったが、真央から伸びた氷が雷のように4人を貫いていた。
「くそっ、かくなる上は、一人でも敵を倒して死ぬまでだ」
最後の魔法使いが倒れている、俺に向かって、手をかざした。真央が氷の雷で敵の肩を貫き昏倒させるが、すでに大きな魔弾は発射されたあとで。スフィアの武器は魔法使いと、俺との距離が近すぎて、間に合わなかった。
魔弾がゆっくり近づいてくる。ああ、これは死ぬ前に起こる現象だな。俺はここで終わりか……。
でも。
最後はみんなで仲良くできたからいいかな。
しかし、魔弾は、魔方陣にはじかれ、大きな音ともにはじけ飛んだ。
「まったく、あなた達は最後が甘いです」
死を覚悟した俺の頭上から声が聞こえた。
それは、いつの間にか空中にいた。魔法使いからの声だった。
雷儀秋葉だった。赤い、魔法使い特有の帽子と学生服の上から赤いマントを着ている。
真央は雷儀を睨めつけるが、雷儀は慌てて。
「待って、喧嘩をしにきたわけじゃないです。むしろ助けに来たのです」
雷儀はそういうと、説明し始めた。
「私はこの地域を任されてる『薔薇の教会』の者です。魔力の反応を見てやってくると、『藍の教会』の末端の奴らが誰かと闘っていると思ったら。あなたたちだっただけです」
「でも、なんで広兼を助けたんだ」
杏がそういうと。
「そ、それは私の管轄の地域で人が死ぬと寝覚めが悪いからです。べ、べつに鷹目君が気になるとかそんなんじゃないです!」
「それはもしや、ツンデレというやつですか?」
スフィアがつっこむと。
「と り あ え ず。みなさん、誰も殺してはいないみたいですし、昏倒している連中の処遇は私たち魔法使いの組合に任せてください、だから、みなさんは帰ってください、それと、この件はRCON側には内密にお願いです。あとこれが電話番号です。魔法のことで何かあったら掛けてください」
「ああ、わかった。とりあえず、ありがとう」
俺がよろよろと立ちあがり、お礼を述べる、満足そうに雷儀は去って行った。
「広兼、大丈夫か?」
「ああ、急所は外れたがものすごい痛い、早く病院に連れてってくれると助かる」
「ああ、わかった」
杏がうなずいて、俺の肩を支える。
「所であそこで倒れてるやつはいいのか?」
俺は倒れている人物を指差した。戦闘にびっくりして失神したらしい。
「まあ、いつか起きるだろ」
楽天的な意見を言う杏。
「不甲斐無いですね」
辛口のコメントのスフィア。
「私が失神してなくてなんで夕が失神するのかな」
残念そうな視線を向けるざくろ。
「まあー夕らしくていいよー」
いつもどおりの真央。
「まあ、夕も頑張ったんだし、起こしてあげようよ」
俺がみんなに言うと。
真央が、近づき頬をペシペシする。すると、夕が目を覚まし。
「うお、敵か? 広兼には指一本触れさせんぞ!」
夕が立ち上がり、叫ぶと。あたりは静まり返った。
「あのな、夕、敵はみんな倒しちゃったぞ」
「……そうか、じゃあ俺は?」
「そこで、失神してたー」
「そうか……」
「……」
「うん、広兼が助かったならいいさ!」
あくまでも前向きな、夕だった。
その後、俺はRCONの息のかかって病院に向かい、治療を受けた。
次の日入院している俺にみんなで見舞いに来て、みんなでYUNOで白熱していると、RCONの本部から連絡が来た。
「広兼、怪我をしたそうだが何があった?」
「いや、どうやら魔法使いは『藍の教会』の手の者だったらしく、妖怪、彼ら曰く、氷雷の女王を倒そうとしたらしいんですが、返り討ちにあって、俺と杏とスフィアで倒したときにちょっとしてやられました」
向こうが息を飲むのがわかった。
「氷雷の女王を倒しただと! あんな強い輩を倒すとはよくやった!」
「いや、向こうも調子が悪そうでしたので」
「そうか、これからも真鞍町を頼むぞ」
「了解です」
そうして、通話が切れた。そして、俺はすぐさま雷儀に電話をした。
「もしもし、雷儀です」
「ああ、俺だ鷹目だ」
「た、鷹目君!」
なぜか驚いた声を上げた。
「仕事の話だがいいか?」
仕事と出ると声が雷儀の声が冷静になる。
「はい、何です?」
「魔法使いの集団にRCONが氷来の女王を倒したと噂を流してくれ」
「なぜですか?」
「真央に戦う意思はない、それに氷来の女王がここにいることが知られると、俺もお前もこの土地の管理が難しくなるだろ? ダメか?」
雷儀は少し考える。そして。
「いいです。乗りましょう。そのかわりといっちゃなんですが」
俺にぼそぼそっと呟くように要求を言った。
「ああ、いいぞ。もちろんだ、じゃあよろしく頼む」
そう言って、電話を切った。
「だ、そうだ、これで真央は自由だ、組織との連絡を取らないとやられたことになるだろう」
「ありがとう、ひろっち。あの、みんな一回確認したいんだけどいいかな」
真央がおずおずとしゃべる。
「氷雷の女王とか、たいそうな名前が付いてるこんな私だけど、これからも友達でいてくれる?」
「ああ!」「無論だ!」「もちろんです」「当たり前だよ」
俺、杏、スフィア、夕。それぞれがみんな当然の返事を返した。
真央の顔が向日葵のような笑顔が咲いた。
今回は口に出したが、こういうのは確認しなくてもわかるものだろう。
だって、友達ってそういうもんだろ。




