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第一六話、消えた焼きプリン

ふん、ふーん」

「やけにご機嫌だな、広兼」

「お、わかるか、杏、今日はな、今月で間違いなく最高傑作であろう焼きプリンを部室の冷蔵庫に入れて保存してあるのだ!」

「そ、そうか、良かったな」

 なぜか杏はちょっと引き釣り気味に答えた。

 授業が終わり、前回手伝って、俺のことを見直した先生がまたしても俺に荷物運びの手伝いを依頼されたので、急いで持っていき、早足で部室に行く。そこには既に真央以外が揃っていてそれぞれのことをしている。

俺は、待ちに待った冷蔵庫を開く。

 ない。

 ない、ない、ない、なんでないんだ。俺は朝、確かにここに入れたはずなんだが。

「おい、誰か知らないか?」

「いや、知らないよ」と杏。

「何を探してんの?」と夕。

「知らないよ!」とざくろ。

「焼きプリンなんて見たことない」とスフィア。

 みんな知らないか。

……ん? 俺は焼きプリンなんか一言も言ってないぞ。

「スフィア、俺は焼きプリンなんて一言も言ってないのになんで焼きプリンってわかったんだ?」

 俺はスフィアに鬼の形相で迫る。

「待ってください、マスターだって、冷蔵庫に一個ぽつんってあったからそれかなって思って」

「さっき見てないって、言わなかったか?」

「いや、その……ごめんなさい、食べました! それもみんなで食べました!」

 俺に迫られて、スフィアが観念したように叫ぶ。

「おい馬鹿、何ばらしてんだ!」

 杏の慌てた声。

「ごめん、広兼、おいしそうだったから、つい、ね」

 ざくろが謝る。

「俺だけは食べてないぞ」

 夕が最後の抵抗を試みる。そこで扉が開いて。

「やっほー 今朝みんなで食べたプリンおいしかったねー」

 真央ののんびりとした声。

 夕の顔が真っ青になり俺の顔はどんどん険しくなる。

「お前ら……そこに正座!」

 俺の怒りが爆発したのだった。


 一時間の説教と今回の焼きプリンの出来を語ったあと、結局、今度みんなで松野屋の焼きプリンをみんなからおごってもらうことで俺は矛を収めるのであった。


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