表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

3

 午後9時13分 


 彼は掴まることなく、屋上へ来た。

 彼はもう服を着替えていて、黒を基調としていて、シルクハットにタキシード。そして、マントを羽織っていた。

 今では、スピーカーから、ネックレスを盗まれた、直ちに探せという命令が飛び交っている。しかし、それは、美術館内でのこと。外ではどうなったのかと騒ぎ始めていた。

 彼は屋上に繋がっているドアを開けた。そこには誰もいないはずなのだが、彼は分かっていたように声を掛けた。

「やっぱり、あんたらか。俺の邪魔をしてたのは」

 その場に居たのは、シルキーとユーリだった。そして、彼はドアを閉めた。

「気付いてると思った。で、どうするつもり?」

 シルキーが言った。

「そりゃー、逃げるが勝ちでしょ」

「その前に盗んだもの、返す気はない?」

「これっぽっちもないと言いたいところだが、これは返しておくよ」

 彼の手元から、シルキーの元へ行ったものとは、彼が盗み出した『赤い涙の結晶』だった。

「オレに偽物を盗ませようとしてたみたいだけど、無駄だよ。それに、本物はこの手の中だからね」

「それは、すごいわね。でも、簡単に逃げられるかしら」

 ユーリは言った。

「そりゃね。君はあの気球のことを言ってるんだろう?あれは、ダミー。君達がオレを騙したように、オレも騙したということだ。真実はこの手の中に……」

 彼はそう言うと屋上から飛び下りた。

「なっっ!!」

 シルキーとユーリはそろって叫んだ。二人はすぐにその場へ行き、下を覗き込んだ。

 そこには、パラグライダーが飛んでいた。どこから出したのか、たぶんそれが彼なのだろう。

 下には、なぜか警備員も警察官もいなかったため、二人以外誰にも見られずに彼は美術館から逃げた。

「やられたわね」

「逃げられたか……」

 二人はそう言いながらも、悔しそうには見えず、むしろ楽しそうに見えた。

「ユーリ、探知器はどうなってる?」

「気付かれてたみたいね。所定の場所のままよ」

 ユーリが怪盗に逃げられるかと訊いたのは怪盗が気球で逃げると思ったからではなく、探知機があったからだ。

本物のネックレスに小型の探知器を付けていて、盗まれても気づかれなければ追えれるようにしていたのだが、それをも見抜き、外すとはえらい奴と敵になったものだと二人は思った。

「それにしても、私たち、完全にあいつにやられたって感じね」

「まーね、あいつを少し甘く見ていたようね、でも、次は負けないから」

「もちろんよ」

 二人は、手を『グー』にして、お互いの手をコツンと合わせた。


 


 月の下にあの人影の者が、まだ、そこに居た。

 一年前の出来事を思い出して懐かしんでいるようだ。

『あの時は楽しかったよ、探偵さんたち』

 スッと草原に風が吹き、かぶっていたフードが取れた。

 その人物こそが怪盗3623、通称、怪盗ミルティスだったのだ。彼はまた、不敵な笑みを浮かべ、彼はその場から姿を消した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ