先生 2
「今日から数学を担当します。響谷雅紀です」
先生はカツカツときれの良い音をさせながら黒板に『響谷雅紀』
と書いた。
「楽しくやっていけたら一番だと思ってるのでよろしく!」
そういえば響谷先生もあの生物の伊藤先生と同じく
白衣を着てる。入学式のときはスーツだったのに。
数学の先生なのになんだか違和感がある。
これで生物系の先生はみんな普通は白衣を着る、
という非常識は覆されたわけで。
突然クラス一番のお調子者の男子、高木君が声を上げた。
「ん?どうした?」
「せんせー、何で白衣きてるんですか?」
それは私も知りたいなー。
「んー特に理由はないけど・・・俺昔は理科の先生だったからね」
「なるほどー」
満足そうに高木君は席に着いた。
私も心のうちでなるほど、と呟いた。
それなら納得できる。
「今日は授業はしません。そこでちょっとだけ俺の自己紹介を聞いてください」
みんなが拍手したのでつられて私も拍手した。
「歳は23で、甘いものが好きです。趣味は・・・音楽鑑賞?かな」
甘党男子って可愛いなー。
「そんな感じです。テストに出るから覚えておくんだぞ~」
響谷先生の軽いジョークに教室がどっと笑顔で溢れた。
なんだか魔法みたいだ。
この時・・・
私はまさかこの人に恋愛感情を抱いてしまうなんて思ってもいませんでした。