プロローグ
中傷は遠慮願います。
春。
始まりの季節、そして出会いの季節。
花々に地は溢れ、桜が見ごろを迎える。
心までも桜色に染まる暖かな季節だと私は思う。
窓の外で美しく咲き乱れている桜を見てそう感じていた。
私の部屋から真下に見える一本の桜の木。もうずっとそこにたっていて
桜の木のわりに幹が太い。
「あなたはすごいね。私の生まれるうんと前から毎年ここで花を咲かせてるんだもの」
毎年春になるたびにはその木に同じ言葉をかけている。
そしてとうとうこの春私は――――
「ちょっと沙夜ー?電車遅れるわよー?」
「え!?・・・わっ!もうこんな時間? はーい!今行くー!」
しわ、ホコリの一切ない真新しい制服に身を包み鏡の前に立って
リボンの最終チェックを済ませる。
「よっし!」
階段を駆け下りると玄関でお母さんがあきれた顔で待っていた。
「早くしなさいよ、もう。入学式早々遅刻なんていやでしょ?」
「はぁーい」
そう、今日は高校の入学式。
ずっとあこがれてきた高校に私は推薦で入ることができた。
「ほら、早く靴はいて」
「・・・ちょっと待って」
そう言って私は玄関のすぐ前の和室にある仏壇に手を合わせた。
「咲・・・行ってくるからね」
と、楽しそうに笑っている赤ちゃんの写真に向かってそう言った。
咲は私の妹で本当だったら今年で6年生になっていた。
しかし咲は生まれてわずか一週間でこの世を去った。
心臓の病気を持っていたのだという。
当時4歳だった私は『死』というものを分かっていなかった。
咲がいなくなったその夜。
ただ、お母さんにお父さん、みんなが黒い服を着て
泣いていたのしか記憶にない。
「それじゃあ・・・行こっ」
春の香りが充満した外に私は飛び出した。
田舎者の駄作製作者ですが・・・。
読んでくださる方がいらっしゃったら光栄です!
よろしくお願いいたします。