夏休み初日
――夏休み。
あたしは初日からダラダラと宿題もせずに、寝転がってテレビを見ていた。
♪〜
いきなり携帯が鳴った。結希からの電話だった。
「もしもしぃ」
「藍梨ー今日ヒマ?」
「ヒマだけど…何?」
「あたしもヒマ過ぎて死にそーだから今から遊ぼー!」
「今からぁ?ま、いっか。いいよ」
「よし!決まり!今から1時間後駅で待ち合わせねっ」
学校よりも気合い入れてお化粧をして、お気にの服を着て家を出た。
「あーいーりー!」
「結希ー」
あたしが到着すると、結希がもう駅にいた。
「ねぇねぇ!あたし藍梨がとーっても喜ぶもの発見しちゃったよ」
「あたしが喜ぶものー?」
「うん!あれ見て」
結希がホームの方を指差した。
あたしは指差すほうを見た。
「!!!」
そこには洋輔さんがいた。
「ね!いいもの見つけたでしょっ?」
「うん!超感動!!」
洋輔さんの姿を見たらすっごく嬉しくなって、泣きそうだった。
「ちょっと、うるうるしちゃった?」
今にも泣きだしそうなあたしの顔を見て、結希が優しくそう言った。
「ヤバいよぅ。ホントに泣いちゃうかも」
何日も会ってないような気がした。夏休みは会えないと思ってたから、洋輔さんを見た瞬間、発作的に目に涙が溢れてきてしまった。
「大丈夫?!藍梨はあの人のこと本当に好きなんだね」
結希は優しく微笑んで、あたしの肩にポンと手を置いた。
「うん。大好き」
涙をぬぐいながらそう言った。
「藍梨、あっち行こっ」
どこに行くかも特に決めていなかったから、あたし達は洋輔さんがいるホームに行くことにした。
「洋輔さん♪」
「あ!この前の〜、え〜っと…藍梨ちゃんだっけ」
「そうです!良かった、覚えててくれて。あの時話した悠さんの彼女ってこの子なんですよ」
「初めまして!アイツの彼女の結希です」
「そうなん?!悠がお世話になってますー」
洋輔さんが、悠さんの保護者みたいな口調で言った。そのセリフにあたしと結希は笑ってしまった。
「アハハ!洋輔さん面白過ぎですよ〜!」
とあたしが言うと、
「そう?そんなにウケた?」
ってとぼけて言った。
「洋輔さんはこれからどこに行くんですか?」
「俺はこれから悠のとこ行くんだよー」
「アイツの家行くんですか?!」
「うん♪二人とも一緒に行く?」
「えっと…」
あたしが戸惑っていたら結希が、
「はい!行きます行きます!」
と助けてくれた。
こうしてあたし達は当初の買い物に行くという目的も忘れて、三人で悠さんの家に遊びに行くことになった。