中学の頃の記憶――空クン
終業式――
校長先生の長くて有り難いお話が終わり、2学期最後のホームルーム。
担任の先生から通知表を受け取る。あたしはかろうじて赤点を免れた。
「水野ー。どうだったー?」
後ろの席の日向空【ひゅうが そら】君だ。
「なんとか大丈夫だったよ〜。空君は?」
「俺も赤点は無かったな」
「てか、空君はいつも成績いいでしょ!」
「そんな事ないって」
謙遜してるけど、この人は本当に頭がいい。クラスで中の下のあたしなんかじゃ到底相手にならない。
あたしと空君は、中学が一緒だった。背が高くて頭も良くてバスケ部の部長もやっていた空君はモテモテで、女の子に告られるのは日常茶飯事だった。(勿論それは高校に入った今も変わらない。)
中3の頃の体育祭の日、あたしはケガをしてしまい、保健委員だった空君に保健室まで付き添ってもらったことがある。
「大丈夫か?」
「うん、まぁ。」
男子に話し掛けられることがほとんど無かったから、うまく話せなかった。
「水野ってさー、彼氏とかいるの?」
「えっ。いないよ、全然」
「そっか。良かった♪」
「?」
その時はそれで終わったんだけど、後から結希に話したら、
「それ藍梨の事好きって言ってるようなモンじゃん」
と言われた。
それから空君とはたまに喋る程度だったし、告白もされなかったから、あたしは結希の言葉を気にしていなかった。
自分のことを好きだなんて言ってくれる人がいるなら出会ってみたいよ…。
「藍梨っ。さっき日向君に話し掛けられてたね!」
ホームルーム後、結希がスキップしながらやってきた。
「別に普通の話してただけじゃん」
「やっぱさー、あの子絶対藍梨が好きなんだって!」
「そんな事はないと思います」
だって、あの空君だよ?!あんなかっこいい、みんなの憧れの空君がまさかこんな凡人に恋するわけ無いでしょ〜!!
第一、あたしが好きなのは洋輔さんだもん♪♪