彼の名前
彼は携帯をいじりながらバスが来るのを待っていた。
あたしはさり気なく彼の斜め後ろに立って横顔を見つめていた。
彼と同じ時間に同じ空間にいることが出来るのが、何だかとても嬉しくて、笑顔がこぼれそうなのを必死でこらえた。
大学生かなぁ?専門学生かなぁ?身長は170cmくらい?
そんな勝手な彼への疑問が頭の中でどんどん作られていく。
知りたいなぁ〜この人の事。。。その時、
「洋輔【ようすけ】じゃん!」
と、ギターみたいなのを背負った男の人が“彼”に近付いてきた。
「悠【ゆう】?!久しぶり〜!」
彼が応える。
この人、洋輔って名前なんだぁ☆二人は友達なのかな。話し声が聞こえてくる。悠と呼ばれた人が
「お前彼女は?」
と聞いた。えっ!か、か、彼女?!
「ん?いないよ。」
いないんだ〜良かったぁ。
「お前昔からそうだよな〜。告られても絶対NO。折角モテるのにもったいないよ」
モテるのかぁ〜…
「だって別に好きな女の子とかいなかったし」
「んな事言っちゃって〜。なぁ!今から家来ない?すぐ近くだし」
「いいよ。」
そう言うと、彼と悠さんは駅を出て行ってしまった。
あたしは帰りのバスに乗ってる時も、家に帰った後も、彼の名前と彼に彼女がいない事を知ることができた喜びで、顔がゆるみっぱなしだった。(はたから見たらキモイと思う。。。)
だけど…心配な事がひとつ。彼―洋輔さんはモテる(らしい)のに彼女を作らないみたい…。あたしが彼女になるのは相当難しいってことぉ〜?!てか、ムリ???
あぁ…なんか現実を突き付けられた感じ。
でもでも!今日は洋輔さんの声を聞けただけでかなり幸せだった☆☆☆
あたし、恋してるんだ。