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初めましてからside雪夜

 公平が持ってきた写真を見た途端、雪夜の体を雷が走ったようだった。写真を持つ手が震え質問をしたいのに口が開かない。


「雪夜さん?」


 公平は咲子とその従妹のツーショット写真を見て驚愕に固まる雪夜に声をかけた。


「公平……いや、咲子さん、彼女は?」


「それは従妹の香苗ちゃん。まだ独身ですよ。あ、でもさっきのメールだと結婚するのかなぁ?」

 咲子の言葉に体から水分が全て抜けたように喉がカラカラになり体が重くなったような気がして雪夜は咲子を見た。咲子はそんな雪夜の様子に気が付かずに続ける。


「今日、なえちゃんのお母さんがセッティングしたお見合いなんです」


「おみ……あい……」


「はい。そうですが……なえちゃんに何が?」


「場所は?」


「桜木ホテルだそうです」


 その会場名を聞くないなや雪夜は無我夢中に圭介の家から出た。


***



 薄紫の振り袖が風になびいている。アップにまとめられた髪には振り袖の模様と同じ藤の花が咲いている。その隣には一人の男。雪夜の心は嫉妬で嵐のように荒れ狂っていた。

 男が先に雪夜に気が付き、それから香苗がゆっくり振り向く。まるでスローモーションに感じるほどにその瞬間は雪夜の心に刻み込まれた。


「香苗」


「雪夜?」


 雪夜は香苗の傍に駆け寄ると香苗を掻き抱いた。


「見つけた……俺の花嫁」


「どう……して?」


「必ず見つけると夢で言っただろう」


 雪夜が右手を香苗の頬に添えれば香苗はその右手に自分の手を添える。完全に二人きりの世界に入ってしまったことに気付いた香苗の見合い相手の男は入るすべはなさそうだと見合いを断るためにその場から離れた。だが二人はそのことにすら気が付かない。

 夢の中ではすでに夫婦の二人。しかし現実では初対面だ。雪夜は香苗を愛でながら自己紹介をした。


「初めまして藤間雪夜です」


「初めまして志村香苗です」


「初めましてだけど君は俺の妻だ」


「初めましてなのにあなたをよく知っているの」


「俺もだ。君が俺の背中に傷痕を残すことを知っている」


「私もあなたがキスマークを付けるのが好きだと知っているわ」


 初対面同士なのにパーソナルスペースは恋人同士と物語る。雪夜と香苗の顔が近寄り、そっと重なった。


ありがとうございました。本編は一応終了となります。



ちなみに桜木ホテルは月光作品のあの人持ち物です。


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