誰の音?
―中古ゲームショップ アルバイト 久川さん(仮名)の話-
中古ゲームショップで働いている青年、久川さんが体験した話。
数年前まで主流だった、写真も動画撮影もできる某携帯ゲーム機。
買取ったゲーム機を店頭に並べる前、久川さんはデータの消去をしていた。
動画を消去するつもりが手が滑って、動画を再生させてしまった。
誕生日だろうか。画面の中央にローソクが5本立ったケーキと男の子。それを囲むようにお母さん、お父さん、おじいちゃん、おばあちゃん。撮影者は小学生くらいのお兄ちゃんだろうか。ときおりお兄ちゃんが家族に指示を出す声が入っている。
お兄ちゃんの「はい、スタート」の声でケーキのアップから動画は始まり、室内の灯りが消される。家族でハッピーバースデーの歌を歌い、ケーキのプレートに書かれた名前が呼ばれ、5歳の〇〇くんが一息でローソクの火を吹き消す。
拍手で祝われ、そして部屋に明かりが戻る。家族の満面の笑顔が携帯ゲーム機の画面に映し出され、そこで動画は終わる。
「・・・ふつう、カメラに近い撮影者の声や音がいちばん大きく入るはずですよね?」 と久村さんは言った。
歌っている間中ずっと、何よりも大きい音で「パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ」と拍手の音が入っていたそうだ。




