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中古にまつわる怖い話と奇妙な話  作者: 夏の月 すいか


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13/16

登園時間

 ―総合リサイクルショップ店長 友保(ともやす)さん(仮名)の話―


 友保さんの店で、チャイルドシート付きの自転車が売れた。

 その自転車は1ヶ月と経たずに買取で店に戻ってきた。

 同じ自転車で3度、そんなことが繰り返された。

 3度の購入者はそれぞれ違う客だった。

 チャイルドシートが1ヶ月程度で必要なくなるものなのだろうか。

 

 4度目の購入者は店の常連客のK林さんだった。

 しかしK林さんも一カ月と経たないうちに、自転車を手放したいと店にやって来た。

 友保さんは何故(なぜ)買ったばかりの自転車を売りに来たのかK林さんに尋ねてみた。

 K林さんは言い辛そうに答えた。

 「…子どもがチャイルドシートに座るのを嫌がるんです。買ってすぐに子どもがチャイルドシートから落っこちちゃって。それから乗りたがらなくなっちゃって…」

 「そうでしたか…。お子さんにお怪我(けが)はありませんでしたか?もし自転車の不具合での転倒でしたら遠慮なく(おっしゃ)って下さい」

 「いえ、不具合はありません。ですので返品ではなく買取で持って来させてもらいました…」

 自転車が何度も戻ってくるのは単なる偶然なのだろうか。


 その疑問はある日の朝、突然解消された。

 友保さんはとある事情で防犯カメラの映像をチェックしていた。

 そこにリアルタイムで映されている店内の自転車のペダルが回っていることに気が付いた。

 誰も乗っていない自転車のペダルと後輪が回っていた。

 すぐさま事務所を飛び出し、店内に向かった。

 友保さんが自転車売場に着くと、自転車のタイヤは静止していた。

 しかし誰かがいたような気配というか、余韻のようなものが漂っている気がした。

 友保さんが自転車を動かそうとハンドルとサドルに手を触れると、今まで人が乗っていたかのような体温があった。

 時計を見ると、近所の幼稚園の登園時間だった。

 K林さんのお子さんはおそらくチャイルドシートに乗っている子供に押されたのだろうと思った。ここはボクの席だ…と。きっと今までのお客さんにも同じことが起こったのだ。

 親子はこれからも自転車に乗って毎日幼稚園に向かおうとするだろう。

 友保さんは自転車を廃棄処分することにした。


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