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中古にまつわる怖い話と奇妙な話  作者: 夏の月 すいか


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1/7

扉の向こう

小さなリユースショップの店長業を営む私。自身が体験した話や同業者から聞いた、中古にまつわるちょっとだけ奇妙で不思議な話。

真夜中の一人作業。怖い想像は膨らんでしまいます。

ー玩具リユースショップ 店長 木々津(きぎつ)さん(仮名)の話ー


 店長業務の一つに店舗の棚卸しの集計作業というものがあり、これは実際に数えた店舗の在庫と帳簿上の在庫の数が一致するかを確認する作業だ。

 大変時間のかかる作業であるため、営業時間後に木々津さん一人遅くまで残業することが度々あったそうだ。

 ただ木々津さんは今はもう、夜中に仕事をすることは一切しなくなった。

 疲労のためでも、働き方改革でも、残業手当削減のような経費の問題ではないという。

 「私、怖がりなもんで・・」

 そう言う木々津さんに何があったか尋ねた。

「ホラー映画とか小説とかは好きだったんですよ。だからですかね。想像力は豊かだと思います。ほら、うちの店って中古のおもちゃ屋でしょう。夜中だとなんだか不気味な想像しちゃうじゃないですか。でもそこは仕事ですから。怖いとか言ってられません」。仕事を終わらせなきゃという気持ちの方が怖さより上回りますよ。店長ですからね」

 しかしある晩に起きた出来事により怖さが上回ってしまったというのだ。

 毎月行う棚卸し。いつもなら遅くとも日を跨ぐことはないのだが、その日は繁忙月であったため、深夜0時を過ぎてしまった。

 ようやく終わろうとした頃。突然、木々津さんが作業している事務室のドアがノックされた。

 コンコンコン、コンコンコン。

 店の正面口もバックヤードに通じる裏口も施錠されているはずだ。事務室の前まで来れる者はいるはずがない。それに、裏口の扉が開く音はしていない。では一体誰が・・・。

 コンコンコン、コンコンコン。コンコンコン、コンコンコン。

 木々津さんは事務室のドアノブに鍵がかかっていないことに気付いた。深夜に一人である。店自体を施錠すれば事務室に鍵をかける必要はないと思うのは当然である。

 だが今はそれを後悔している。

 コンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコン

 ドアをノックする音は続いている。不審者か幽霊かは分からないがどちらにしても恐ろしい。ドアの鍵を閉めたいと思っても恐怖で動けない。

 ノックの音が止んだ。

 ・・・ガチャガチャ・・・ガチャガチャ・・・

 ドアノブが回り始めた。

 ・・・ガチャガチャ・・・ガチャガチャ・・・

 鍵はかかっていないのにドアが開くことはなく、ドアノブだけ回っている。

 木々津さんはホラー小説で「幽霊は人間に招かれないと部屋(空間)に入ってこれない」という話を思い出した。 「これがそういうことなのか・・・・」

 恐ろしさの中、そうであってほしいという一心で硬直していたという。

 やがてドアノブが回るのが止まった。

 体感では10分にも15分にも感じられたというが実際は2、3分の出来事だったようだ。

 音が止んでしばらくして、ようやく木々津さんは緊張から解放された。

 その日はもう仕事ができる状態ではなく、そのまま帰ることにした。事務室のドアを開けるのは勇気がいったが、そこには何もなかった。安堵していいのか尚更怖いのか、気持ちの整理もつかぬまま帰宅した。裏口の鉄扉はやはり施錠されていた。

 その日以来、木々津さんは店舗の閉店後に居残って仕事をするのはやめた。どうしても仕事があるときは早朝に出社することにしたそうだ。

 

 この話には後日談のようなものがある。

 深夜の出来事からおよそひと月経った頃。店の営業時間中のことである。

 木々津さんが事務室で仕事をしていたら、売場からバックヤードに通じるドアがガチャリと開く音が聞こえた。売場には二人のパートの主婦がいるはずだった。バックヤードは廃棄されたおもちゃ置き場になっているため、主婦のどちらかが廃棄のおもちゃを片付けに来たのだと木々津さんは思った。

 事務室の向かいにあるバックヤードからガサガサとしたビニール袋の音や、ダンボール箱を積む音が聞こえてくる。運ぶときの息遣いも聞こえる。

 「・・・ああ・・・」

 すぐに木々津さんは考えを改めた。

 「・・・ああ・・・違った・・・」

 売場からバックヤードに入るには鍵が必要で。それは今事務室の壁にかかっている。

  

 事務室のドアの外には誰がいたのだろうか。

 木々津さんは「昼間でもだめなのか」と落胆したそうだが、今のところはその一度きりなのが救いだと言う。

 ちなみにこの店舗はオープンしてから15年が経っていて、店長は木々津さんが6人目だそうだが、木々津さんが店長に就く前に何かあったのだろうか。もし聞いてしまったら仕事を続けられる自信がなくなりそうだと思い、誰かに確認するつもりはないとのことだ。


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