広告代理店OB
毎度の事だがOB来訪、寒さ厳しい2月に来たのは広告代理店で働くOB
「いやー、なんだかなぁ、去年まで、このサークル棟で遊んでいたのが
嘘みたいだな、別世界だよな。なんか」
『そんなに違います? 建物なんか、どこも同じでしょ?』
「何が違うかってさー、広告代理店って、どこの同じかもしれないけど
いや、違うか・・・俺の働いているトコだけかもだけど
俺と事務員の人以外の社員全員が同じ美大出身なんだよ」
『じゃあ、ひょっとして学校方言が、そのまま日常会話っすか?』
「それもあるけど、まあ最初は業務用語ってか広告業界用語の
意味が全然わからなくて、”クライアント”とか言われても
”どういう意味ですか?” って一言、一言一句が意味不明で大変だった
同期入社の人間とかも俺以外は、その美大出身で
青田刈りで学生時代からバイトで仕事してたから
もう広告業界用語がペラペラになってたから
何が理解できてないかが理解できないくらいに
何も理解できてない素人だったのが、やっと少しは理解できたってとこだな
まあ、製作の方は無理って事で、営業だから
売り上げになる金になる事を、会社がヤレって言った事をヤルだけだけどな」
『広告製作部署ってのが、あるなら、そっちで仕事したかったのでは?』
「いや、マジ無理、研修中に同期とかと競争して
自分の表現力の無さってかね、才能の無さを思い知らされて
製作は無理だから、営業をやらせてくださいって自分から言った」
『でも、なんか美大出とかいうと、自由業の人が多くて
会社員になる人とか少ないから
自分が仕事をしたいと思う人としか仕事しないってイメージありますよねー』
「そんな一緒に仕事をする人間を選ぶなんて贅沢な真似が出来る天才は
俺とかの視界には入ってないよ
とにかく、決定権とか影響力とかを持っている人とかに
相手にされるには、どうしたらいいか?
どうしたら仕事として成立している世界から弾き飛ばされないか?
そういう事に必死でイッパイ イッパーイな人ばっか
直属の上司も20代後半くらいで美大出て3・4年くらいの若い人だしなぁ
”首都から去って広告業界が無いに等しい地方都市に帰れ”
と言われないように必死、というか首都圏出身でも生き残りに必死
テレビとかに出ている広告業界の有名人みたいな
あーいった美大出で、テレビに映っている人は空想上の生き物」
『そうっすかー、まあ、そうですよねー広告業界の人が
みんなが、みんな、テレビに映っている有名人みたいな人なワケじゃないっすよね』
「テレビとかに出て目立つ事やるだろ
そうすると不特定多数の人間に向かって何かを言って
その不特定多数な大勢の人間が言ってきた事を
ある意味、ずーっと一日中、相手にしないとならなくなるワケだ
テレビに映る有名人とか、ずーっとアレを消化する訓練するんだろうけど
最初はパニクるし混乱するらしいよ
こないだ、そういう訓練を積んだウチの会社に昔いたらしい人が来て
なんでも ”選挙屋” をやっている ”群衆心理操作の達人” とかいう人らしくて
まあ、うるさかったね。俺のウルささに慣れろって感じで騒いで
なんか2月の選挙で、自分が後援する小選挙区の議員先生を当選させたい
自分が後援する政党を比例区で勝たせたいってな事をね語るんだ
” 昔は依頼された商品を宣伝するために表現するのが仕事だったけど
今は依頼された政治家を政策を政党を多くの人に
理解してもらうために表現するのが仕事です
皆様は日々の仕事に追われ
選挙に行く程度には関心があるけどで政治には無関心かもしれませんが
どうでしょう、広告業界全体の未来のためにも我々を支援しませんか? ”
みたいな? 事を言うだけ言って帰ってった。
何を、やってるんだろうな? 他の同じような ”選挙屋” が来てない
部外者立ち入り禁止に近いトコを巡回してるってのはなー
仕事に集中したい制作職人なベテランさんとか迷惑そうにして
昼休みとはいえ、あんなのを入れるなって言ってた
でもなー、あんな感じで群衆心理操作の達人になれて
宣伝効果を挙げられたら、宣伝業界内じゃ評価されるんだろうな
よく有名人が選挙に出て政治家になるけど
不特定多数の群衆を相手にするのに慣れているからなんだろうなぁ」
『いやー、そうっすかー、自分みたいな
同居の家族4人くらいの少人数くらいでしか
人間との交流が無い人間からすると空想上の生き物ですよ
どうやってんでしょーね、不特定多数の人間が集まった集合意識ってか
それらの集団が形成する世論を操作するって?
確かに、それが出来れば広告業界じゃ成功者ですよねー』
「だろ、だからな、実際のトコ、その達人が一人でやっていた仕事
ためしに、御前等やってみろって、やらされた
俺等くらいの若手が6人くらいで分担して、少しは出来るって感じなんだよな
やってみて、わかったんだよな
こんな量を把握する職務把握能力があって
こんな状況判断を一人でやる職務遂行能力があったんだ、凄いなって
いや、何をやるにしても高評価を得られる達人になるには大変なんだよな うん」
というような広告業界の世間話を語ってOBは帰っていった。




