自主製作映像「クレイジー・フェノミナン」 第一回 試写会
今迄、ひっきりなしに次から次へと来ていたOBの皆様が
忘年会とか、納会ゴルフとか、同業者団体内での年末行事
などなどで、パッタリと来なくなった。とっても平和だ。
なので、在校生だけになっていたワケなのだけれども
すぐに醜い内輪もめが始まってしまいそうになり
監督をしていた部長が、すぐにOBへと連絡をとって
現役学生サークルメンバーが行儀よくなるように仕組んだ。
12月に入ってからサークル棟にやってきたのは
テクニカル・ライターという名目の仕事をしているOBだ
11月までは、来年4月に新発売になる製品の
ユーザーマニュアルを書く仕事をしていたらしい
その仕事をしていた時のグチとか関係者の悪口が
マシンガンのように口から発射される
「なんてかなー、一昨年にアメリカへ行っていた偉い人が
”これ、日本に持ち込んで日本向けにローカライズすりゃ売れる”
とか言った一言で、日本語版の製品を作りましょー
という事になった製品なワケで
アメリカ英語版のマニュアルを日本語版にするだけでOK
て話だったから
なーんだ、そりゃ楽だなー かんたん かんたーkk
って調子で楽観的に行ったら
最初のブループリント・ライティング作業で
アメリカ英語版には
”試しに、こんな感じで使ってみてくれよ
んで、わかんねー事があったら、この電話番号に連絡してね
払える金額次第じゃ、色々と対応するから”
というような事しか書いてないユーザーマニュアルだったから
ずーっと動作確認と、裏どり調査と記録
ブループリントだけで、ほぼ半年
んで、それからの、マニュアル・ライティング段階になって
金払いの良いファースト・ユーザーが付いたから
そのユーザーさんの商習慣とかに、まずは あわせろとか
業界内礼儀作法にも対応しろとかで、アレコレと書き直し
あー、やだやだ、最初は、たいした作業じゃないからって言って
毎月の金額を値切っておいて
払う金が決まった途端、払った金、以上にコキ使いたいってな
ちっくしょおおおお、あんな文句ばっか多くて金払いの悪い会社の仕事
もう、二度と受けるもんかぁああああ!!!!
やりたくない仕事を やりたくないし
関わりたくない人間と、一緒に仕事したくないから
フリーライターになったのに、コレじゃ意味がねぇえええっ!!!!」
『またー、と言いつつ、金になるから仕方ないかーで
来年2月にシステム投資案件が固まった後から
なんとか投資資金の多いプロジェクトに入りたいーで
混ざりに行くワケでしょー。
今年みたいにハズレな会社に当たっちゃう年もありますよ
仕方ないですよねー
で、ですね、来年、学生映画祭に出す予定の自主製作映画の
前半部分だけが完成したんでー
内輪だけの試写会をやるんですけど
先輩、来れますー』
「ん、まー、来年2月15日までは暇だから、いーけど
いーのか? 俺のうるささに慣れろーって感じで
言いたくなった事を、やたらに言うけど」
『いーんじゃないすかー、今の時期、あんまり他の先輩が
顔を出さない時期ですから
仲の良く無い先輩とかも来てないみたいですしー
内輪じゃ、もう編集作業中に何度もプレイバックを観て
見慣れ過ぎて見えなくなっているトコがあるんでー
客観的な意見ってモンが出なくなってしまっているんでー』
「そっか」
・・・
そして、試写会終了後
「たった一言で言って、わかりずらい。
表現力が乏しくて、伝わらないって以前に
何が言いたいんだコレ? 何を表現したいんだ? いったい?
て感じしかしなくて、なんか心に引っかかるエッジ感覚ってもんが無いんじゃないの?
セリフも、なーんか、心に刺さるようなセリフが無くて
ただ雑然と、悪意や怒りが群れの中で膨らんでいくって感じしかしないし
最近のネット小説のザマア物や復讐物って感覚を拡大した
深遠な狂気を描こうとしたのかもしれないけど
なーんか、それも浅くて、薄っぺらいダークファンタジーの出来損ないって感じだよねー
もう一回、編集し直す時間があるんだったら編集し直した方が、いいんじゃないのかなぁ」
というようなセリフから始まり、小一時間ほど
あそこのシーンは、あーでもない。こーでもない。
金が無い技術とかもノウハウも無いなか苦闘して作ったトコを
カッスカスに罵詈雑言で貶される。
監督をやった部長とか、色々と言いたげな顔だが先輩なので黙って聞いている
そして、そのOB様が批評を言うだけ言って帰っていった後、部長が語る
『えーと、御意見や指摘を聞いている内に
前半、戦争中部分の再編集に関するアイデアと
後半の、戦後に人間関係が逆転した物語の
アイデアが湧いて出て来たので
頑張ろうなー!』
「えーと、あのー、あのプロデューサーずらしたOB様
まだ、来るんですかー」
『いやっ、なんか忘年会は無いけど
編集責任者様とか、ライターとか、カメラマンとか
出版関係者な同業者内輪の人づきあいが入って
もう、来年まで来れないって言ってた
来たとしても、一年後に俺が部長じゃなくなった頃だな』
「良かったっす。だって、あのオッサンが言ってたのって
アレって自分が仕事してて言われたのを
まんま言ってただけっすよねー
あのオッサンがライターで書いてたパソコン雑誌とか
読んでみましたけど
どう考えても言ってた事って自分が言われてた事っすよねー
表現力が無いとかの言葉とかも」
『まー、いいから、いいから、そういう人間なんだから
廻りにいる人間も、慣れて何も言わなくなって
うまくいった? 俺様のオカゲだ
失敗したぁ? 御前のせいだ
の言い張り方が上手で生き残ってる性格だかっらっさー
仕方ないんだよねー、そういう生き物なんだと想ってくれな
でも、客観的な意見を言わせると上手なんだよね
一番、平均的な日本人の感覚で批評を言わせるとねー
天才的なんだからっさー、そういう意味で価値があるんだよねー』
「「「はーい。わかりましたー」」」




