【プロローグ】転生、愛妹と2度目の人生を歩む
【転生BL】です。NLではないのでお気をつけて!
神様、心から愛する人の人生を、
どうかやり直させてください。
ーーーーーーーーー
ユリウス・ランカスターは肩で息をしながらランカスター家の屋敷に着いた。
「レイ、ありがとな」
雨の中でも最速で屋敷へと運んでくれた自身の馬・レイに感謝する。
屋敷の扉を開けると、使用人たちのの青ざめた顔、泣き叫ぶ姿が目に入った。
「メアリは、メアリはどこだ・・・!」
「ユリウス様、お二階のメアリ様の部屋に、旦那様と奥様もーーーー」
執事長がそう言い終わらないうちにユリウスは階段を駆け上がった。
自身の妹であるメアリ・ランカスターの部屋を勢いよく開けると、そこにはベッドに横たわるメアリと、彼女の傍らで泣き崩れる両親の姿が目に入った。
間に合わなかったーーーーーーー。
手紙を握りしめた手に力がこもる。
「ユリウス・・・!帰ったか・・・」
いつも明るく頼もしい父の姿はそこになく、彼は目の下に濃い隈をつくり、酷くやつれていた。
ーーーーーお兄様、わたくしのことは気にせずに、好きなことをなさって生きて。わたくしは、大丈夫ですからーーーーー
横たわるメアリに近づくにつれ、涙で視界が歪む。
自身の夢を応援し、背中を押してくれた彼女に甘え、ここまで何にも縛られず好きなことをして生きてきた。多くを学び、帰った時に我が領地がさらに潤うよう、尽くすつもりだったーーーーー大好きな家族と共に。
「学園で、異世界から来たという女性に目をつけられて・・・突然学園から強制退学が通知されて、それ以来な部屋に閉じこもりがちになったの。・・・私たちもずっと心配していたら、今朝、薬の過剰摂取で・・・・もっと早くに気が付いていたら・・・!」
母は大粒の涙をこぼしながらおいおい泣いていた。
誇り高く、決して人前では泣かない凛々しいいつのも面影はそこにはない。
「ーーーーーーーーーーお母様、お父様のせいではありません」
ユリウスは悔しそうに唇を噛んだ。
目を伏せ、冷たくなったメアリにそっと触れる。
賢いお前が、心優しいお前がどうしてーーーーーーーーーーー殺される必要があった?
【拝啓 敬愛なるお兄様。
お兄様は隣国で、大好きな医学や経営学を謳歌しているのでしょうか。
突然の報告で申し訳ないのですが、大好きなお兄様、わたくし、第二王子・アルベルト様との婚約破棄が正式に決定いたしました。
学園も退学することとなりましたが、正直、身を引けてほっとしております。
今は少し体調を崩し療養しておりますが、ご心配には及びません。
話は変わりますが、お兄様と小さい頃に読んだ「ブライアント家の華麗なる人生」第三章、ジーク・ブライアントのセリフが今でも忘れられません。
あの頃の思い出は、わたくしにとって、宝物でございます。
一目会えたら嬉しいです。妹の我儘を、どうか許してくださいね。
季節の変わり目ゆえ、お風邪など召されませぬようご自愛ください。
メアリより】
「ブライアント家の華麗なる人生」なんて本はこの世に存在しない。
幼い頃に自分とメアリの二人で創作したオリジナル小説である。
第三章のエミリー・ブライアントのセリフはその章で唯一彼女が発言したものであり、メアリが考えた、物語が大きく方向転換する言葉だった。
ユリウスはメアリの手を握りしめる。
愛するお前の傍を離れた自分が憎くて憎くて仕方がない。
メアリの傍に置いてある薬瓶を手に取ると、足早にその場を後にする。
「ユリウス・・・!」
母の呼び止める声が聞こえたが、構わず自室に行くと瓶から薬を机の上に出した。
1錠割ってみると黄色い粉末が出てくる。他の錠剤も砕いてみたが、同じ粉末がこぼれた。
匂い、そして下で少し舐めてみる。
「ヒイスの実・・・心臓の働きを極端に遅くする効果がある毒薬だ・・・一般人が手に入れられるものじゃない・・!少量なら薬として使用するが、こんな過剰に・・・!」
しかもヒイスの実は非常に高価な代物だ。それを数十錠も薬瓶に仕込めるなんて、ある程度の財力やツテがなければ無理な話だ。
しかもメアリは手紙に細工をしなければならない状況だった。それはつまり、手紙の内容を他者が見られる可能性があったということ。
そもそもメアリは誰からこの薬瓶を受け取ったのか、それが学園の退学と関係があるのか、倒れたメアリを見ていた医師は誰なのかーーーーーー疑問が他にも山ほど出てくる。
「・・・・・・・・」
ユリウスが妹の死の原因究明に躍起になっている最中、一人の人間が背後から彼の迫った。
気配を察知し、振り返ろうとした瞬間、胸に鋭い痛みを感じる。
しまったーーーーーーー!!。
胸に手を当てると真っ赤な血が大量に噴き出した。
心臓を一突きの致命傷だ、助かるはずがない。
ユリウスはその場に崩れ落ちた。
「(俺が死ぬのは構わない・・・散々迷惑をかけて生きてきた・・・。でも・・・・メアリは・・・・・あの子はずっと・・・・・・ずっと自分を押し殺して・・・・)」
なんて理不尽な人生なんだろう。神様、どうか、どうかーーーーーー妹だけでも、人生をやり直させてください。
切に願いながら、自分は息絶えた。
誰かが自分を呼ぶ声がする。
「お兄様、わたくしのことは気にせずに、好きなことをなさって生きて。わたくしは、大丈夫ですから」
「!!!!!!!!!」
ユリウスはメアリの声で我に返る。
目の前には可愛さが爆発し、凛々しく気高い妹・メアリの姿があった。
それにメアリが心なしか、いや・・・かなり、若い。というか、幼い。まるで子供の頃の彼女のようだ。
しかも、今彼女が言った言葉は、自分が医療を学びに隣国へ行きたい話をメアリにした時に、彼女が真摯に答えてくれた言葉である。
「め、メアリ・・・・今、何歳だっけ」
「お兄様、4歳です。お兄様の年齢マイナス2と覚えてください」
キョトンとした顔で首を傾げるメアリを見て自然と涙が零れる。
「・・・・そっか、じゃあお言葉に甘えて、好きなことして生きようかな・・・うん・・・」
「ええ、お兄様は賢いですもの、何をしてもきっとうまく・・・」
「これからは俺が大好きで仕方ないメアリの傍で生きることにするよ」
「え」
「学園にも一緒に行こう、婚約者とのお茶会にも同席させてくれよ。とにかくメアリとたーーーくさん一緒にいるから」
「え、ええ・・・それがお兄様の好きなことなのでしたら・・・・?」
動揺するメアリを思わず抱きしめてしまう。
転生、自分は過去に逆行した。これから愛する妹との二度目の人生が始まる。
神様、ありがとう。
今度こそ、愛する妹は俺が守る・・・・・妹に害なす者は、決して許さない。
この日を境にユリウスは周囲もドン引くほどのシスコンっぷりを発揮し、メアリのそばを片時も離れず害なすものに容赦のないその姿から、家族含め皆から陰で「メアリの番犬」と騒がれることとなるのは、近い未来の話ーーーーー。
{『ブライアント家の華麗なる人生』第三章、エミリー・ブライアントの唯一のセリフ}
<<私は、命を狙われております。
でも、それをあなたや家族に言うことができなかった・・・傷つくのは、私だけでいい。
私以外の大切な者が傷つくことが、耐えられないのです。
しかし、そう思っていても、愛する者たちと、
この先、生きることをどうしても諦めきれない・・・。
だからどうか、助けてくださいーーーーーーーーーー私の、最愛の人よ>>