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元英雄、転生皇女、謎の聖女の三人は帝国で悪の組織をやるそうです。  作者: 霞堂リブ
第三章「悪の組織、サマーバケーション」
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エピローグ「ノレアとレヴァイアサン」



 ―――ザザーーーン。

 夜風が覚めぬ早朝の海辺、一人、ノレアは早めに起きて散歩をしていた。


「気持ちいい……」


 砂場を素足で歩きながら故郷の風を浴びて、いつもはまとめている茶色の髪を靡かせる。

 そこには、メイドである自分も、ヤクルゴンの社長である自分も居ない。

 一人のノレア=ピスティとしての自分が、そこに居ることを波の音と潮風の中で感じる。


「……?」


 ――――ピィイイイ……!


 そんな風に浸っていると、遠くのビーチの端、岩場のある場所から鳴き声が聞こえてくる。

 その音色は、何処かノレアを呼んでいるような気がした。


「なんだろう?」


 導かれるように、歩いていく。

 手に持っていた靴を岩場で履いて、少し不安定な足場を少しずつ進んで行くと、そこには一匹の竜と見慣れた人が居た。


「レヴァイアサン……!?」

「来たか」


 待っていたとばかりにこちらに振り返ったのはロアだった。

 傍にはカニを山ほど入れた籠があり、手で持ってレヴァイアサンにカニを与えていた。


「レヴァイアサンは討伐されたはずでは……?」

「討伐したってレオスが大げさに触れまわっただけで、実際は暴走していたのを止めただけだ。結局アイツは何もしなかったしな」

「暴走……」


 そこで、ノレアはあることに気付く。


「ちょっと待ってください。なんでそのことを……」

「……」


 彼は何も言わない。わざわざ語ろうともしない。

 それが、答えだった。


「レヴァイアサンは、君に謝りたいそうだ。―――いや、本当ならこの領地の人間全てに謝りたいらしい」

「レヴァイアサンが……?」

「”おうちを滅茶苦茶にして、ごめんなさい”……と、言っている」

「言葉が分かるのですか?」

「なんとなく、な」


 それを聞いて、ロアの隣で海から顔を出しているレヴァイアサンを見る。

 レヴァイアサンはまるで謝罪をしているかのように、頭を下げていた。

 それがかわいらしくて、ノレアは少し笑ってしまう。


「……そこまで、しおらしくされると、流石に許してしまいますね」


 ノレアはレヴァイアサンに近づいていき、下げていた頭をなでる。魚とは違う、分厚い鱗を感じる肌ざわりがした。

 きゅーーん……と、レヴァイアサンが気持ちよさそうに鳴き声を上げた。


「暴走していたとは、なんでしょうか?」


 何があったかは正確にはわからない。と前置きをして、ロアは語る。


「レヴァイアサンは元々は人と共存をしていた竜だ。温厚で、優しい性格をしていてな……船旅の安全を守ったりして、人からこうやってカニやら魚を分けて貰ったりな」

「それは、なんとなく漁師のおじいさん達から聞いてます」


 飲みの席で、なんとなく漁師の人達が語っているのを聞いたことがある。

 海岸沿いの漁村が津波に飲まれた時、漁師たちも心底ありえないと口にしていたのは記憶に残っていた。


「俺は、レヴァイアサンの暴走には裏があると思っている」

「裏……ですか」

「あぁ、帝国の陰謀でもなく、ましてや王国の策略でもなく、もっと大きな世界のうねりの中に、もしかしたら俺達は居るのかも知れないと、俺は考えている」


 ロアは、拳を握って語る。

 なにか、やっと、手がかりを掴んだとでも言わんばかりに。


「今回、リゾートを作り、銀行を立ち上げて、貴族を超える権力を手に入れた果て……やっと、俺は真実に近づけると思うんだ」

「……アトリー様はそのことを?」


 ロアは頷いた。


「話したさ。……”好きにしなさい”って一言だけ」

「……そうですか」


 その言葉で、会話が途切れて、二人の間にさざ波の音だけが流れていく。

 覚悟を決めたと、ノレアは唇を強く結んでから、口を開いた。


「なら、私も力の限り協力しますよ。……どこまで出来るかは分かりませんけど」

「頼むな」


「――――おーーーい」


 ノレアと話し込んでいると、遠くの方から声が聞こえてきた。

 その声に反応してか、レヴァイアサンが海の中へと逃げるように沈んでいった。


「アトリー様?」

「はぁ、はぁ、はぁ……やっと見つけた」


 ロア達の目に前にやってきたアトリーは血相を変えており、ロアは「どうした?」と聞く。

 するとアトリーは息を整えながら、ロアの方へと「大変よ!」と声を上げた。


「大変、大変なのよ!!!」

「なにがあったんだよ。そんなに血相変えて」


 ロアが尋ねると、アトリーは右手に持っていた紙を、ロアの目の前に突き出した。

 それは新聞紙で、帳面が近すぎてロアは見えず、取り合えずそれを取り上げた。


「――――はぁ………?」


 それを見て、ロアは呆けたように声を上げた。





「…………レオス=パルパが、帝国評議会役員への暴行容疑で投獄された……だと?」





 

第4章はカクヨムにて続きを読むことができます。

出来ればそちらもよろしくお願いいたします。

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