相撲
名乗りを上げた。
「田中旅夢!」
彼女も気高く名乗り返す。
「エマニュエル・ドゥ・ラ・キンセイ!」
そして、お互いに裸の腰を、スッと落とし気味にする――
もはや分かったろう?
ああバトルとは?! 広大なフィールドを存分に生かして執り行われるバトルとは――?
両者が一糸まとわぬ姿になって正々堂々打ち噛ましあう、スモウレスリングだった!
なんだ相撲か、と言うなかれ。
相撲は、天下泰平・子孫繁栄・五穀豊穣・大漁等を願い、土中の邪気を払い、地を踏み鎮める――神事なんだから。
これほどこのゲームに相応しい試合はない、と言うものだ。
僕は駆け出すと富山の山肌を数歩で駆け上がり、エマの巨体にタックルする。
足裏に南房総市吉沢地区の建築物がベケボコ潰れる感触が伝わり、バキボキと森の木々をへし折る音が耳に響く。
ドガッと山が崩れた。そして。
エマの柔らかい肉の感触と匂い、暖かさを体一杯に感じ取り――ふわっと身体が浮く感じになって、二人して大地にドドンと倒れ込む。エマは引っ掻こうとし、蹴ろうとし、僕は関節を極めようとし、絡み合い、掴み合い、ゴロンゴロンと転がり合う。
南房総市合戸地区のほとんどが押しつぶされたのだった――
もちろん、VR世界でのことだよ!
実体は“巨人の目の位置”に追従する球体だけ。それ以外は二人にしか見えていないこと。
全て、オリハが知覚させる、バーチャル・リアリティだった。
☆ ☆ ☆
だから許してね!(笑)




