お母ちゃんの話
「お父ちゃん、怒ったよ、って言っても形だけで怒ったって何も意味がないんだよ。ちゃんと、貴司のためになる怒り方をしないとさ。どんなテストでも0点を取ったら恥ずかしい事だし、0点を取った事で貴司が『自分はダメな奴だ』と思って萎縮したり、勉強に対してやる気を失くしたりしたらさ、元も子もないでしょう?」
「うん」
「お父ちゃんがね、貴司に怒ると言うのはね、貴司の背中を押してあげること、力になって支えてあげることを意味するんだよ」
「うん」
「何も服を脱いでね、ふんどし一丁になって貴司に怒鳴る事が怒る事じゃないの」
「うん」
「貴司のためになる怒り方はね、貴司の目線になって一緒に物事を考えたり取り組む事を意味するんだよ」
「うん」
「お父ちゃん、テストの答えだけが全てではないけどもね、今の貴司は学校生活が全てを占めているでしょう?」
「うん」
「だったら貴司には、より良い学校生活を送らせてあげたいじゃいのよ」
「うん」
「お父ちゃん、テストで恥ずかしい思いをして勉強を無視したり蔑ろにするような事は許さないよ、学ぶことの大切さに気付きなさいという怒り方をしなさい」
「う、うん」
「お父ちゃん、分かったかい?」とお母ちゃんは言って御盆に乗せた熱々のカリーライスを、お父ちゃん、お兄ちゃん、僕の前に出して置いた。カリーライスの上にはチキンとらっきょが乗っていた。
「うん。お母ちゃん、分かった。もっと頑張って怒れる様になる」とお父ちゃんは言ってカリーライスを見つめた。
つづく
お母ちゃんって、やっぱりカッコいいなぁ✨




