22話 風属性と愛の使徒フラウ
遅れました…
すんません…
ほんとうに…
「さて、こんなもんかしら。」
天野さんはそう言いながら、最後の一匹と思われる魔物に止めを刺した。
もう天野さん1人で世界を救えるのでは?
そんな気がするほどの蹂躙であった。
「あ、それは出来ないわよ。出来てたらとっくにそうしてるし、あなたを異世界に連れてこないわよ。」
天野さんは僕の心を見透かしたようにそう言った。
「何か理由が?」
「そう。世界の管理人みたいな立場の私たちたちが、世界の出来事に直接的に介入するのは御法度なのよ。ただし、指導という名目みたいな感じなら大丈夫で、こうして松下くんと過ごせているのよ。今回の場合はフラウのやらかしのせいでスタンピートが発生した訳だし、後始末的な感じで許可が降りたのよ。」
なるほどね。
...ん? これって聞かれても大丈夫じゃないよね?
そう思ってシシィさんの方に振り向くと、案の定、シシィさんは首を傾げていた。
僕と目線があったシシィさんは口を開いた。
「...あなたのことはハルトからアマノさんって聞いてる。けれども、さっきからハルトのことを『松下くん』と呼んでいたり、『世界の管理人』だったり意味が分からない言葉がある。何者?」
...なんて説明しようか。天野さんと相談しようか。
そう思って天野さんの方を振り向くと、天野さんは察してくれたようで
「松下くん、説明は任せなさい。」
そういってサムズアップしてくれた。
「まず私の名前は天野渚っていうんだけど、神様の使者をしているの。天使としての名はレイア=ハルモニア=シルワ。世界の管理人みたいなことをしているわ。まぁややこしいから気にしないでもかまわないわよ。そして彼の名はハルトであっていて、苗字が松下なの。」
えっ、そこまで話す!? 天野さんのことだから大丈夫なんだろうけど...
それを聞いて僕とシシィさんの目が点になった。
しばらくしてシシィさんが口を開く。
「...つまりアマノさん、レイア様は天使様で、ハルトは召喚された異世界の勇者の仲間???」
シシィさんの頭上には?マークが浮かんでいそうだった。
そこに天野さんが補足する。
「少し違うわ。私と松下くん... あ~、ハルトのほうがわかりやすいわね。」
シシィさんはこくりと頷く。
「私とハルトは召喚されてきたんじゃないの。私がハルトを連れてきたの。彼らとは別件なのよ。」
「...ある程度理解した。ただこれをシシィに話して良かったの?」
「異世界召喚された人の存在を知っているなら、いいわよ。」
「...これはシシィの秘密にしておく。その方が良さそう。」
「それは任せるわ。それでなんだけど... あなた、私たちとこのスタンビートの犯人をお仕置きしにいかない?」
な!? 今日の天野さんの発言には驚かされてばかりだ。どこか吹っ切れた?
「天野さん、いいんですか? 」
「いいのよ。せっかくの機会だし。」
何がせっかくの機会なんだ???
「...シシィがいってもいいの?」
「さっきからそう言ってるじゃない。さて、それじゃあ行きましょう。たっぷり可愛がってあげるわ、フラウ。」
そういう天野さんの後ろ姿は修羅みたいだ... よほど頭にきたんだろうな...
それから、天野さんについて森の奥地へと進んでいく。
道中にスタンビートの残党が襲ってくることが何度かあったが、怨嗟響めく天野さんの敵ではなく、瞬殺されていった。
そうして深淵部へと進んでいると突如、美しくもどこか間の抜けた声が上方からした。
「あ、レイアいた~。やっと見つけれたよ~。会いに降りてきたよ~、レイア~。フラウと会えて嬉しいでしょ~♪」
「まっっっっっったく! フラウ、貴女ったらぁぁぁぁ!!!」
天野さんが、仇敵でも見つけたかのように叫ぶ。
その声の主は、僕たちの探し人でスタンビートの元凶、風の天使・愛の使徒フラウであった。
しばらくさらに不定期更新になります...




