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20話 魔の森で

お久しぶりです。檸檬茶です。

今日は初投稿からちょうど1周年となる日です。


僕は魔の森で起きたスタンピートの対処に早急にあたるため、『こうした方が速い』と天野さんにおぶられて魔の森の中を突っ切っている。


「いつでも戦えるように準備しといてね。もうすぐ見えるはずだから。あと森の中だし火の魔法とかは使わないでよね。」


「わかった。」


「よし。それじゃあ… 見えた! 準備は良いわね?」


そういって天野さんは僕の足裏に手を持っていく。


「天野さん!? 何をする気なんですか!?」


「何をって? こうするのっ、よ!」


そういって天野さんは僕を魔物の群れに向かって投げた。


「えぇぇぇぇ!!!!」


絶叫しながら、頭から魔物に向かって飛ぶ僕。


天野さんが、投げる時に風魔法を僕の回りに纏わせてくれたお陰か、速度が出ているのに息は苦しくない。


それどころか途中、木に何度かぶつかりかけても風魔法のお陰で、そのまま木を貫通して突き進んで行く。


後ろにふと振り返れば、天野さんは遠目からわかるほどキリッと敬礼をしていた。


やがて僕が魔物に近づくと天野さんの風魔法が僕の速度を調節して減速していく。


そして、天野さんが話していたであろう集団を見つける。


緑のローブを着ている人物が最後部で魔物を剣で斬り倒し、先頭では複数人で魔物を倒し、進路を切り開いている。


だが集団の中央には、怪我をした人物を荷台に載せた馬車が走っていた。


この状態では、先頭か最後部がやられたら終いだ。


複数人いる先頭はまだ持ちそうだが、たった一人で魔物を抑えている最後尾は見るからにキツそうだ。


あっ、魔物に囲まれそう…


「かなり魔物がいるし、怪我人も多い... それじゃあ先制攻撃ということでっ」


接地のついでに辺り一帯の魔物を火属性魔法と水属性魔法の合わせ技で作り出した巨大な氷柱で押し潰し、あっけにとられている最後尾を守っていた緑のローブの人物に近づく。


近くに行くと、驚くことにその人物はララノアさんと同じエルフ耳をしていた。


ララノアさんより背も低く小柄な彼女の服はすでにボロボロだった。


「加勢に来ました。もうすぐもう一人助が来ますからそれまで辛抱してください!」


僕は思わず声をかけた。

  

「! あなたは…? そんなことより、ここから逃げて、早く。」


「それよりも自分の心配をお願いします。」


緑のローブの彼女の心配をよそに僕は魔物の討伐を開始した。


---------------------------------------------------------------------------


「まずい。魔物の数が、多すぎる…」


魔の森での訓練中に、スタンピートに巻き込まれるとはシシィはついていない。


訓練中の少年少女をなんとかして逃がすのが、監督をしていたシシィの役目。


魔物1体1体はシシィの相手でなはい。ただ数が多すぎる。


徐々に傷も増え、体力的にもキツくなってきている。


それに先頭を任せているシシィのアシスタントである冒険者達も人数がある程度いるとはいえ、この数だと不安なところがある。


早く洞窟かどこか逃げ込める場所に行き、救援を待つべきなのだけども、なかなか見つからない。


完全な地図を持ってくるべきだった。シシィのミスだ。


「しまった。囲まれる…」


考え事をして気が緩んでた…


囲まれないように中央にいる馬車付近まで下がる…?


や、シシィがここを抑えないと馬車に魔物が殺到するリスクがかなり増す…


「ここがシシィの、シシィディール・エフルシアの死に場所であっても不足はない…」


シシィが覚悟を決めたその時、突然、巨大な氷柱と共に一人の少年が降ってきた。


シシィの目の前で何が起こってるの?


それもちょうど訓練を任された少年少女と同じくらいのように見える。


そんな彼が目の前に押し寄せている魔物を押し返して-シシィでも出来なかったことをしている。


彼の動きはベテラン冒険者というにはほど遠いが、氷の魔法を連発して、その火力で魔物を次々に倒している。


氷の魔法は水属性魔法で使えるが、かなり高度なもののはずだ。


そもそも、常人ではこんなに高度な魔法を連発すれば、すぐに魔力切れを起こして戦闘不能に陥るはず… それに魔法で彼程の実力者であれば、シシィが名を知らないはずがない…


いったい彼は何者なの?


それに…


なぜシシィの胸はこんなにも高鳴っているの?


---------------------------------------------------------------------------


ひたすら氷の魔法を魔物に向かって撃つ。


僕の使っている魔法は剣を使っての攻撃とは違って、広範囲に高威力の攻撃が可能であり、このようなスタンピートとかと相性が良い。


それを考えると、緑のローブの彼女は剣士であるのにも関わらず、あそこまで持ちこたえていたかなりの実力者なのだろう。


そして、魔物の数が少し減ってきた頃合いを見計らって、土属性の魔法と氷の魔法を使って一時的な壁を作る。


これで、立て直してもらえるはず。


そう思って後ろを振り返ると、彼女と目線がすぐにあった。


「…助けてくれてありがとう。私はシシィ。あなたは?」


「僕は、ま… ハルト。冒険者をしてます。そんなことより、シシィさんは大丈夫ですか?」


天野さんの言葉を思い出して、あえてフルネームで名乗ることは止めた。


「ハルト… 聞かない名前。覚えた。シシィはこれくらいなら大丈夫。さすがにこれ以上は厳しかったかもだけど。」


そういって手に持っている剣を強く握りしめるシシィさん。


「それなら良かったです。あと、僕の後からもう1人助けがくるので、付近にいる魔物を挟み撃ちにして殲滅するつもりです。シシィさんは全員を集めて下さい。殲滅が終わったら、僕たちで森の外までの進路の両側に壁を作るので、その間を全速力で抜けてください。」


「2人で挟み撃ちにするといって大丈夫? シシィでも苦戦したのに? それにそんなことが可能なの?」


「可能です。天野さんは僕よりも強いので。」


「あなたがそういうなら、シシィは信じる。」


シシィさんはそういって、火の魔法を打ち上げた。


その魔法は空高くに到達すると、大きな音をたてて、打ち上げ花火のように黄色の光を放った。


「今の魔法は?」


「緊急連絡用の信号火球って魔法。黄色の意味は集合。難しい氷の魔法を使うのに、この魔法は知らないの?」


「実はギルドに最近登録したばかりでして… そういうのには疎いんですよね…」


「そう。ならシシィの出番。これが片付いたら少し一緒に来て。」


シシィさんはそう言ったが、一体なんだろうか?


少しシシィさんの目がキラリとしたような気がしたけど…


いや、今はそんなことより合流出来るまでの時間を稼がないと。


「わかりました。それと、合流出来るまで、壁を壊そうとする魔物の討伐に協力してもらっても大丈夫ですか?」


「もちろん。ハルトが助けてくれたお陰で回復できた。協力させてもらう。」


その言葉の後、僕とシシィさんは魔物の群れに向かって攻撃を開始した。



しばらく月1投稿になるかと思います。

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